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異常ともいえるインターネット熱は冷めた。バブル期に企業が行った過剰な設備投資は、IT業界にとって重い足カセとなっている。しかし、ネットワークコンピューティングに向けた革命が終わったわけではない。サンは、ネットワーク社会の到来を信じ、今も走り続ける。

1982年の創立当初から「The Network Is The Computer」というビジョンを掲げてきたサン・マイクロシステムズは、インターネットバブル消失後も怯むことなく、一貫してネットワークコンピューティングを追求する。同社創設時に20代の若者だったスコット・マクニーリー氏は、ネットソサイエティの到来を信じ、今も会長兼社長兼CEOとして同社を率いている。ネットワークコンピューティングを推進するには「オープン」と「セキュリティ」への取り組みが不可欠だ。サンの20年はその歴史でもあった。菅原敏明社長に話を聞いた。

ZDNet 世界的な経済低迷が続いていますが、2002年のIT業界やサーバ市場を振り返ってください。

菅原 サーバの主なユーザーである企業の設備投資が減退したため、厳しい年でした。しかし、景気の原動力はITなくして語れません。また、個々の企業が構造改革を行っていくにも、ITやネットワークの使い方が問われています。ネットワークを使えない構造改革や新しい事業展開など考えられません。

 国内のADSLユーザーは、500万人とも600万人ともいわれています。2003年にはこれが間違いなく1000万人に達するでしょう。世界で最も速く、安価で、しかも質の高いネットワークが日本列島に張り巡らされるということです。NTTドコモのiモードと同様、臨界点に到達します。コンテントとユーザーが相乗効果によって急増し、それに注目した新しいサービスも登場してくることが期待できます。

ZDNet しかし、業界にとっても、サンにとっても、ITバブルは思い足かせになっていませんか?

菅原 確かにITバブルは崩壊しましたが、それ以降もネットワークコンピューティングはどんどん社会に浸透してきています。サンの経営も、60億ドルのキャッシュを保有し、負債もないという、極めて健全なものです。研究開発には年間20億ドルを投じています。

 ネットソサイエティやネットエコノミーは始まったばかりです。過去の歴史を見ても、「○○革命」というときには、必ずその初期段階にインフラへの投資が過熱し、バブルがはじけています。しかし、そこで革命が終わったわけではありません。

 CEOのスコット・マクニーリーは、まだ47歳と若く、ネットソサイエティやネットエコノミーの到来を信じています。テクノロジーのリーダーシップを取り続けるため、サンは業界ではほかに類を見ないレベルの研究開発投資をネットワークコンピューティング分野で継続しています。

ZDNet サンが先鞭をつけた「ネットワークコンピューティング」の時代において、重要になるであろう戦略や技術は何でしょうか。

菅原 ネットワークコンピューティングでは、多種多様なベンダーの機器、それはサーバだけでなく、ストレージやネットワークの機器も接続されてきます。そうした複雑なシステムを管理する技術が必要になってくるでしょう。TCOの大半は、そうした複雑なシステムの管理に費やされているとさえいわれています。サンでは「N1」というシンプルな構想を発表しており、2003年に具体的な製品を出荷していきます。

 また、ネットワークソサイエティのためには、プライバシー侵害に対する懸念を払拭しつつ、利便性を高めていく必要があります。われわれは、世界の主要な企業や組織と連携し、「Project Liberty Alliance」を立ち上げました。顧客の個人情報、つまりプライバシーを企業がしっかりと守りながら、パートナーのサイトにも、例えば、認証の部分だけを共有させることができます。どこか1社がすべて代行してしまうといったことは、今後のネットワークソサイエティを考えれば許されません。

 ソニー、NTTグループ、NECといった日本企業も加盟しており、そのユーザー規模は20億に達しています。また、Project Libertyの仕様はすべて公開され、だれでも使うことができます。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]


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