潤沢な帯域を背景に多様化するSIPベースのIP電話

NetWorld+Interop 2004 Tokyoの会場では、単なるSIP対応IP電話にとどまらず、無線LAN対応やテレビ電話機能を搭載した新たな端末が紹介された。

» 2004年07月02日 06時32分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 NetWorld+Interop 2004 Tokyoの展示会では、有線、無線を問わず潤沢に利用できるようになった帯域を背景に、SIPを利用したVoIPやIPセントレックスサービスの展示が目立った。また、(通話の盗聴はアナログ電話でも可能なことではあるが)SIPベースの音声通話のセキュリティに特化し、盗聴などから保護するための試みも見られた。

 たとえばNTTコミュニケーションズでは、資産/脆弱性管理やリスクの定量的な評価を行う「セキュリティ管理プラットフォーム」をはじめとするセキュリティ関連の展示に加え、企業向けVoIPソリューション「.Phone IP Centrex」を紹介した。IPセントレックスと固定式の多機能IP電話機を用いた内線システムは、既に珍しいものではなくなりつつある。今回の展示では、既存のサービスをさらに拡張する2種類の参考出展が紹介された。

 1つは、PCや端末からWebベースのアドレス帳にアクセスし、通話したい相手をクリックするだけで呼び出しを行える「C2C(Click to Call)」である。複数の相手に対し一斉同報を行い、会議通話を行うことも可能だ。秋ごろをめどにサービスを提供する計画といい、その際にはグループウェアとの連携など、さらにいくつかの機能が追加される可能性がある。

 もう1つは、日立電線が開発したワイヤレスIPフォン「WIP-5000」を用いたVoice over Wireless端末のデモである。固定式のIP電話機と同様、IPセントレックスサービスと組み合わせて安価に内線網を構築できる。SIPサーバ経由で外線への発信/着信も可能だ。SIPを利用することで、通話相手の状態を画面上で確認できるプレゼンス機能や、インスタントメッセージ機能などが利用できる。

NTT ComのIP電話 NTT Comが紹介したワイヤレスIPフォン

 NTT Comでは、無線IP電話を用いたサービスの提供時期、内容ともに「検討中」としている。

 なお、SIP対応の無線IP電話端末という切り口では、NECや沖電気工業も試作機を紹介していた。NECでは、「実際にいくつか引き合いもある」といい、夏から秋にかけての時期に製品リリースを予定している。

NECのIP電話機 NECが参考展示した無線IP電話機。「現在検証フェーズ」という

 ただ、これらの無線IP電話端末が導入フェーズに入るには、価格のほかにもいくつか詰めておくべき要件がありそうだ。1つは、バッテリーの持ち時間である。また今回紹介された端末は、概して市販の携帯電話に比べ液晶画面が小さく、SIPならではの機能を生かしたユニファイドメッセージの活用やスケジューラ、グループウェアとの連携を使いこなすには、若干心もとない(内線電話の代替、という意味ならばこのままでも問題ないかもしれないが)。

 さらに、無線LAN経由で音声通話を行う以上、干渉を排除し、パフォーマンスのみならずセキュリティを考慮した無線LAN設計が不可欠となることは言うまでもない。

FTTHを前提にしたIPテレビ電話

 無線IP電話がオフィス向けソリューションならば、コンシューマー向けには、FTTHを前提に、画像も同時に送受信できるIPテレビ電話端末が提供されようとしている。

 NTT東日本は、現在開発の最中というIPテレビ電話端末の試作機を紹介した。SIPおよびH.323両方の通話に対応しており、利用する帯域は2Mbps前後。したがって、「ADSLよりもBフレッツでの利用を念頭に置いている」(同社)。

IPテレビ電話端末 タッチパネル方式で操作するNTT東日本のIPテレビ電話端末

 この端末はIPv6に対応しており、FLET'S.Netとの組み合わせで提供することも考えているという。このテレビ電話端末を利用してのサービスは、1〜2カ月内に開始される見込みだ。将来的にはテレビ会議機能もサポートする方針という。

 またナカヨ通信機では、最大毎秒30フレームのMPEG2/4で動画をやり取りするIPテレビ電話機のデモンストレーションを行った。こちらの伝送レートは384Kbpsから最大15Mbpsといい、やはりFTTHサービスが前提だ。「今回の展示を通じて、どういった使い方が考えられるかを調査中」(同社)という。

SIPセキュリティへの配慮も

 ナカヨ通信機はさらに、独自の暗号方式によって盗聴を防止する「DATAGATE IP Phone(ST)」のデモンストレーションも行っていた。基本はSIP対応のIP電話だが、本体に搭載された「盗聴防止ボタン」を押すと盗聴防止モードに切り替わる。暗号/復号によって生じる遅延は「それほど大きくはない」と同社は説明している。

 ただし、この機能を利用するには、相手側にも同様の盗聴防止IP電話が必要だ。したがって、より汎用的な対策を求めるならば、SIPサーバ側や中継機器側に何らかのセキュリティ機能を実装するというアプローチもあると同社は述べている。

 こういったアプローチで製品を紹介したのがアズジェントだ。同社は7月1日に、既存のファイアウォールと連携しながらVoIP通信のセキュリティを強化する「Applico SIP ファイアウォール」を発表し、ブース内でも紹介を行っている。

 Applico SIP ファイアウォールは、アズジェントの米国子会社、Applico Securityが開発したアプライアンス型の製品だ。企業DMZに配置することで、SIPのプロトコルの中身を見ながら高度なNAT越えを実現するほか、RTPストリームの制御も可能という。さらに、TLSに基づくSIPシグナリングの暗号化、存在を外部から隠すRoute HidingやMIMEタイプに基づくアクセス制御といったセキュリティ機能を提供する。

 なおアズジェントは、やはりSIP向けのセキュリティ強化/NAT越え問題の解決を目的に、日立インフォメーションテクノとジーと協業することも発表している。

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