作図作業を効率化するVisioの利用法第二回(2/2 ページ)

» 2004年09月03日 19時00分 公開
[井上健語, 池田利夫(ジャムハウス),ITmedia]
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ネットワーク管理者垂涎 ネットワーク図の自動作成ツール

 アドインや関連ツール、Visioベースの専用アプリケーションが多いのもVisioの特徴だ。ここでは、その中からネットワーク図を自動作成する「LAN MapShot」というツールを紹介しよう。これは、Fluke Networksによって開発された、ネットワーク上のデバイスを自動的に検出しVisioの図面として自動的に書き出してくれるツールである。

 インストール後、LAN MapShotを起動すると、検出するデバイスの種類や描画方法を設定するダイアログが開く。設定後に検出がスタートし、最後にボタンをクリックすればVisioが起動してネットワーク図が描画される。単純にすべてのデバイスを描画するだけでなく、サーバだけ、プリンタだけというように、種類を指定して描くことも可能だ。ネットワーク内のデバイスにpingを飛ばし、返ってきた情報をもとにVisioの図面を描くのが基本的な仕組みのようだ。ファイアウォールを越える検出はできないが、企業内のネットワーク図が自動的に描画される様(さま)を見たら、ネットワーク図の作成に四苦八苦しているネットワーク管理者はすぐに欲しくなるだろう。「LAN MapShot」は製品として出荷されているものではないが、上位製品として「OptiViewシリーズ」が用意されている。この「OptiViewシリーズ」は、ノード越えしたネットワーク自動探索・自動作図が可能となる。なお、こちらの「LAN MapShot」も、9月29日のセミナーにおいて無償配布されるCDに収録が予定されている。

画面5■LAN MapShot起動後のダイアログ。必要な設定を行って、[Start Discovery]ボタンをクリックすると検出が始まる。
画面6、7■LAN MapShotによって自動的に描画されたネットワーク図の例。このツールを使えば、ネットワーク図の作成は完全に自動化できる。

Webサイトマップの自動作成機能

 今度は、Webコンテンツ管理者・制作者にとってのVisioのメリットに触れよう。Webコンテンツの管理者・制作者にとって、Webサイトを構成するファイル管理は負担が大きい。企業のWebサイトとなるとファイル数は膨大だし、ほぼ毎日のように情報を更新しなければならない。Webページ制作の専用ソフトを使っているユーザーも多いだろうが、ファイル管理という点では、まだまだ機能的に不満を感じることが多いのではないだろうか。

 そういう方には、Visioの「Webサイトマップの自動作成機能」をぜひおすすめしたい。この機能を使うと、URLを指定するだけでWebサイトのサイトマップが自動生成される。テンプレートの一覧から「Webサイトのマップ」を選択すると、URLを指定するダイアログが現れる。あとは、WebサイトのURLを入力して[OK]ボタンをクリックするだけで、Visioがサイトを調べ、そのファイル構造を図面に書き出してくれる。これを見れば、各ファイルの関係、リンク構造、あるいはリンク切れなどが一目瞭然だ。

 サイトの探索方法を細かく設定することもできる。例えば、チェックするリンク先の階層、ファイルタイプを制限できる。これは、サイト全体ではなくサイトの一部だけをチェックしたり、特定のファイルだけ調べたいとき有効だ。生成するサイトマップのデザインとして、ツリー形式やフローチャート、円形、放射状などを指定することも可能だ。

 もちろん、生成されたサイトマップにはカスタムプロパティを持たせることができる。プロパティを書き出せば、エラーが発生したリンクだけ一覧表示するレポートを作成できる。前回、ネットワーク図で解説したように、出力形式とてしては「Excel」「HTML」「Visio図形」「XML」の4つが選択可能だ。同じサイトの2つのマップを比較し、その違いを一覧表示するレポート生成機能も用意されている。定期的に実行すれば、サイトの構成変化を確認するのに役立つだろう。

 なお、Web関連のテンプレートとしては、「Webサイトのマップ」のほかに「Webサイト概念図」も用意されている。これは、サイトの目的、コンテンツ、構造などを検討し、図面化するときに役立つテンプレートだ。フォーム、コネクタ、引き出しや吹き出しなどのステンシルが揃っているので、Webサイトを新規構築したり、既存のWebサイトを再編成する際に役立つだろう。

画面8■テンプレートの一覧から「Webサイトのマップ」を選択し、URLを指定する。
画面9■サイトマップが自動的に作成される。

アプリケーション開発者と仕様書とVisio

 アプリケーション開発者にとって、仕様書の作成は頭の痛い作業だ。その重要性は認識しているものの、満足できる仕様書を作成するには時間もコストも限られているのが、多くの現場の実態ではないだろうか。仕様書の作成に追われるアプリケーション開発者の声をまとめると、次のようになるだろう。

  • 見栄えのする仕様書を作成するのは大変だし時間がかかる。
  • 仕様の更新に合わせて仕様書も更新しなければならない。
  • 仕様書に情報を載せると見にくくなる。

 まず、第一回で触れたように、Visioによる作図は基本的にドラッグ&ドロップなので、誰でもクオリティの高い図面を短時間で作成できる。ソフトウェア関連では次のようなテンプレートが用意されているので、仕様書を作成するのにパーツが足りないということは、まずないはずだ。

「ソフトウェア」に用意されているテンプレート 内容
COMおよびOLE システム図、COM図、OLE図、公開インタフェース、COMインタフェース、およびオブジェクト指向プログラミングのOLEインタフェースを作成する
Jackson Jackson方法論を使用して、プログラム設計のためのデータ構造図を作成する。
ROOM ROOM表記法を使用して、タイムライン、動的内部構造、反応、並行性、および分散を考慮したリアルタイムシステムのモデルを作成する。
UMLモデル図 UML表記法を使用して、UMLモデルと静的構造図、ユースケース図、コラボレーション図、シーケンス図、コンポーネント図、配置図、アクティビティ図、ステートチャート図を作成する。
Windows XPユーザーインタフェース Windows XPのスクリーンキャプチャと図に使用するユーザーインタフェース要素、コントロール、ボタン、クリップアートが含まれている。
データフローモデル図 Gane-Sarson表記法を使用してデータフロー図(DFD)を作成する。
プログラム構造 構造図、フローチャート、メモリ図を作成する。
企業アプリケーション PC、メインフレーム、アーキテクチャレイヤーを表す図形を使用して、エンタープライズ アーキテクチャ図を作成する。

 仕様が変更になっても、図面を簡単に追加・削除できるので柔軟に修正できる。また、カスタムプロパティによって図面に情報を持たせることができるので、情報を載せても図面が見づらくなる心配はない。仕様変更に伴うプロパティ情報の変更も簡単だし、仕様情報をExcel形式やXML形式ではき出したり、Web化して共有することも可能だ。

 時間もコストも限られているなら、あとは道具を工夫するしかない。Visioという道具を使えば、仕様書の作成は確実に楽になる。仕様書のクオリティも上がる。それは、開発者本人にとっても、組織全体にとっても、ハッピーなことではないだろうか。

画面10■UMLモデル図の例。

データベース構造を図面化する「リバースエンジニアリング機能」

 仕様書によっては、Visioで自動的に作成することもできる。それを実現するのが「リバースエンジニアリング機能」だ。これは、現実のデータベースから全テーブル、ビューの構成およびそれらのリレーションの情報を自動的に検出し、図面に配置する機能だ。

 リバースエンジニアリング機能を使うには、[ファイル−新規作成−データベース−データベースモデル図]を選択する。そして、[データベース−リバースエンジニアリング]を選択してウィザードを起動する。あとは、そのウィザードに沿って対象となるデータベース、オブジェクト型、図形の追加方法などを設定するだけでよい。データベースが更新された場合は、データベースモデル図をリフレッシュする機能も用意されているので、データベースとデータベースモデル図とのデータの差異を解消するのも簡単だ。

 従来、システム開発者がデータベースを利用するシステムをクライアントに納品する場合、データベース設計図等のシステム仕様書の作成に多大の時間を必要とした。しかし、Visioのリバースエンジニアリング機能を使えば、開発者はこの苦労から解放される。あるいは、データベースの仕様書が不十分だったり、データベースの設計者が退職してしまった場合でも慌てる必要はない。

 なお、Visual Studio .NETとVisioと組み合わせることにより、Visual C++、Visual Basic、Visual C#のソースコードから、UMLのクラス図を自動で生成するリバースエンジニアリング機能も利用できる。システム開発者は、システム仕様書を作成するコストを軽減できるため、開発効率を大幅に向上させることができる。

画面11■[データベース−リバースエンジニアリング]を選択してウィザードを起動したら、データベースを指定する。
画面12■リバースエンジニアリングで自動作成されたデータベースモデル図。
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