プラットフォーム統一化に動く欧米と遅れる日本標準化へ進むRFID(2/2 ページ)

» 2004年09月08日 00時59分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]
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 つまり、背景になっているのは、そもそもの業界構造の違いにあるからです。Wal-Martは、1社だけで米国の全小売業の10%というシェアがあり、まだ成長を続けています。そうなると、あるサプライヤーがWal-Martという顧客を失ってしまうと、数億ドル規模の損失が発生する可能性が出てくるのです。

 その意味では、日本の小売業は業界として非常に分散化していますので、イオングループやイトーヨーカー堂でも、3%程度のシェアしかありません。サプライヤーから見たWal-Martのバイイングパワーは、ケタ違いに大きいのです。

 また、英Tescoはもっと大きく、二十数パーセントというシェアを持っています。そうした大きな力を持つ小売業者が中心にやろうとする場合と比較して、日本のように分散化し、個別の仕組みやシステムも存在している中で、RFIDを浸透させることはやはり難しい面があります。

EPCで統一化する欧米のRFID

 もう少しエンド・ツー・エンドで考えてみます。今Wal-Martがトップ100のサプライヤーにICタグの貼付を要求しています。一部日本の企業も入っているかもしれませんが、基本的にはP&Gなどメジャーの米国企業が対象になります。

 彼らは、Wal-Martに対応しようとします。サプライヤーサイドとしては、RFID対応インフラを実際に持つわけです。すると、今度は、「なぜWal-Martだけがやっているのか」ということになり、「Sainsbury'sでもやりましょう」と発展する可能性はあります。

 Wal-Martだけではペイしないかもしれませんが、こうした広がりを持てば、一度無理をして投資して作ったインフラが、スケールメリットを持ち始めるかもしれません。このように、メリットを皆が共有し、競争力を付けていこうとしているのが今の米国の小売業界なのです。

 一方、日本はまだそのトリガーが引けない状況です。国際競争力の面で、「RFIDによるメリット」だけで比較すると、相対的に遅れてしまう可能性があります。こうした国際間での格差は、GMSなどに関しては、広がっていくかもしれません。

 米国で広がり、欧州で広がり、EPC Globalの標準で統一される一方で、日本は対応できないという状況になる懸念があるのです。

メーカーは対応、小売は取り残される可能性

 もう1つ、今度はメーカー側から発想してみます。米国向けに製品を出荷している工場が、カナダなのか、メキシコ、あるいはアジアなのかという点は、メーカーごとに異なるでしょう。その中で、同一の工場から、米国、欧州、アジア向けにそれぞれ出荷しているケースもあります。すると、生産ラインから出荷のシステムの中で、米国向けはRFIDに対応しているが、日本向けはしていないといったことが起きてきます。

 そこで、後から日本もRFID対応するといった場合に、決まったタグの仕様が違ったりすると、メーカーとしては非常に困ることになります。せっかく、高額な投資をしたのだから、米国、欧州と同じ規格になることを希望するのは当然なわけです。むしろ、そういった点が、後々課題になるかもしれない。

 つまり、メーカーはグローバルに製品を提供する一方、逆に小売業者がグローバル展開していないのが日本の特徴であり、RFID対応の問題でもむしろ小売業者側がネックになる可能性があるわけです。

ラミネートタグ。柔軟性に優れ多目的に使用できる。



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