システム管理ツールは、Webベースで利用できるWebminに代わって、GNOME 2ベースのgnome-system-toolsを採用した(図4)。また、テキストベースの管理ツール群も収録している。
Webminについては、バグの多さや使い勝手の悪さを理由に削除することになった。またパッケージ管理システムとしてはこれまで同様にRPMとAPTが採用されているが、GUIのツールとして正式にSynaptic*を採用した。インストールやアップグレードはもちろん、パッケージを検索・フィルタする機能が備わっているため、ソフトウェアを見つけることが容易になった。
印刷システムとしては、これまで採用してきたLPRng*に代えてCUPS*を標準として採用した。残念ながら一部のプリンタはCUPSではサポートされないため、利用できなくなったものもあるが、LPRngも利用できるように残している。CUPSを採用したことにより、多くの新しいドライバが利用でき、標準のWebインターフェイスに加えて、GNOME 2ベースの簡単な設定ツールも利用できるようになったことは大きなメリットといえる。
Webブラウザをはじめとした各種アプリケーションも大幅にバージョンアップされた。主要アプリケーションは表1のようになっている。
表1 収録済みの主要アプリケーション
アプリケーション | バージョン |
---|---|
X.Org X11 | 6.7.0 |
GNOME 2 デスクトップ | 2.4.2 |
Webブラウザ Mozilla | 1.7.1 |
メールクライアント Sylpheed | 0.9.12 |
画像加工ツール GIMP | 2.0.3 |
PDFビューア Xpdf | 3.00 |
PSビューア GGV | 2.4.1 |
画像ビューア gimageview | 0.2.25 |
CDリッピングツール Grip | 3.2.0 |
CD/DVDライティング Xcdroast | 0.98alpha15 |
スクリプト言語 Ruby | 1.8.1 |
スクリプト言語 Perl | 5.8.2 |
Emacs エディタ | 21.3 |
Vim エディタ | 6.3.6 |
Ghostscript | 7.07 |
tetex/pTeX | 2.0.2/3.1.3 |
ホットプラグマネージャは、これまで同様にmurasaki*を採用し、USBやIEEE1934などのプラグアンドプレイに対応している。さらに本バージョンからは、murasaki-usb-mountとsupermount-NGによるUSBマスストレージデバイスの自動マウントが可能になった。また、GNOME 2でnautilusファイルマネージャを利用している場合には、接続したストレージデバイスのアイコンがデスクトップに自動的に表示され、すぐに利用できる。
本バージョンから、インストールCDに収録されるサーバーアプリケーションが最小限のものに変更されている(表2)。これはCD-ROMの容量の問題もあるが、必要なもののみを選択してインストールするほうがサーバーを構築するうえで望ましいという考えもあった。今回インストールCDから外されたサーバーアプリケーションは、PostgreSQLやSambaといったインターネットの外に対して直接サービスを提供しないものが中心となっている。対外的に直接サービスを提供するApache、Proftpd、Postfix、BINDは、これまでどおり標準で提供している。おそらく単純で小規模なインターネットサーバーであれば、インストールCDだけで基本部分を構築できるだろう。
表2 収録済みのサーバーアプリケーション
サーバー | バージョン |
---|---|
HTTPサーバー Apache | 1.3.31 |
メールサーバー Postfix | 2.0.20 |
FTPサーバー Proftpd | 1.2.9 |
ネームサーバー Bind | 9.2.3 |
開発環境のパッケージはインストールCDから削除した。これは、多くの利用シーンにおいて標準で開発環境が入っている必要はないという理由と、APTを使えばビルド依存*しているパッケージでも簡単に取得・インストール可能なためだ。開発環境だけでもインストールCDのおよそ1/4を占めていたため、この分で別のソフトウェアを収録するほうが望ましいと判断した。インストールCDから除外されたパッケージは「*-devel」サブパッケージと呼ばれるもので、主にヘッダーファイルやスタティックリンクライブラリなどが含まれている。GCCやmakeといった基本的な開発ツールは、build-essentialという仮想パッケージに含まれている。
カーネルは、これまでと同様に安定性を重視し、2.4系カーネルを採用した。2.6カーネルの採用に至らなかった大きな理由は、カーネルの安定性というよりは、提供される機能の安定性を重視したことである。2.6カーネルはまだまだ各種機能が安定して供給されない状況であり、仕様も安定しているとはいえない問題がある。過去を振り返ってみても、少なくとも開発の中心が2.7カーネルへ移行しある程度進むまでは、安定バージョンといえども安定した供給は期待できない。機能や性能面では、当然ながら2.6カーネルのほうが優れている部分もあるが、Vine Linuxの利用ターゲットにおいては大きなメリットが見いだせなかった。また、一定のメリットを得られるものはすでにバックポートされて2.4カーネルでも利用可能である。
これまでと同様、Vine Linuxに標準で含まれないパッケージはVinePlusで提供される(表3)。ただし追加アプリケーションは、後述のようにメンテナンスのレベルに応じて、いくつかのカテゴリに分類して提供されるようになった。
VinePlus 3.0で新たに提供されるようになったアプリケーションとして、大きなものではOpenOffice.orgが挙げられるだろう。Vine Linux用のOpenOffice.orgでは、Ximian*による拡張を含め標準のOpenOffice.orgとは違うバイナリを提供しており、フォントの扱いなどは標準のものよりもシンプルになっている。また、KDE 3一式もこれまで同様担当メンテナによって非常に良くメンテナンスされており、標準のGNOME 2と同じように安定して利用できるだろう。このほか、本バージョンからはデスクトップ環境としてXFceも提供されている(図5)。XFceはGTK+2をベースとした軽量なデスクトップ環境で、シンプルだが軽快で使いやすい環境を構築できることで人気が出てきている。これらVinePlusのパッケージ群についても当然apt-getやSynapticを利用して簡単にインストールできる。
表3 VinePlusの主要アプリケーション
アプリケーション | バージョン |
---|---|
KDE | 3.2.3 |
XFce | 4.0.6 |
WindowMaker | 0.80.2 |
OpenOffice.org | 1.1.2 |
Evolution | 1.4.6 |
XEmacs | 21.4.15 |
PostgreSQL | 7.4.3 |
Samba | 2.2.9.ja.1.0 |
PHP | 4.3.8 |
ALSA | 1.0.5a |
Uim | 0.4.1 |
Anthy | 5500 |
ITmedia注:後編はこちらです。
最新号:UNIX USER 10月号の内容
第1特集
第2特集
[特別企画] |
Copyright(c)2010 SOFTBANK Creative Inc. All rights reserved.