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» 2004年09月30日 14時19分 UPDATE

IT業界のイチロー求む、LinuxWorld C&D/Tokyoで経済産業省・久米氏

昨日から新宿NSビルで開催されている「LinuxWorld C&D/Tokyo 2004」。30日午前に開催された特別記念講演では、経済産業省の久米 孝氏の講演が行われた。

[西尾泰三,ITmedia]

 昨日から新宿NSビルで開催されている国内最大規模のLinuxカンファレンス「「LinuxWorld C&D/Tokyo 2004」」。30日午前に開催された特別記念講演では、「オープンソースソフトウエアの取り組みと市場への期待」と題され、経済産業省、商務情報政策局情報処理振興課・課長補佐の久米 孝氏の講演が行われた。同氏は昨年の「LinuxWorld Expo/Tokyo 2003」でも基調講演を行っている

 同氏は、「OSSは成熟してきたが、課題も現れてきた」とし、今年から来年にかけての経済産業省のオープンソースソフトウェア(OSS)関係施策の概要と、市場への期待などを語った。

久米 孝氏 経済産業省、商務情報政策局情報処理振興課・課長補佐の久米 孝氏

OSS推進の意義

 冒頭、久米氏はOSS推進の意義をユーザー、ベンダー、人材育成の観点から説明する。ユーザーにとっては、選択肢の拡大となるが、そこでは、「自由に選べる」だけではなく、円滑に移行できることが重要で、相互運用性の確保が大切だという。

 ベンダーにとっては、特に基盤的なソフトウェアについて、独占、寡占的なソフトウェアの供給者が市場にいる場合に、そのくびきを解き放ち、コモディティ化するために利用できるとする。また、「幸か不幸か、デファクトを取っておらず、対外依存となっている」(久米氏)というように、ソフトウェアの対外依存構造からの脱却をはかり、SIerとしての自主性を確保する契機になるのではないかという。

 人材育成からは、ブラックボックスの組み立てだけでは、真のエンジニアの育成とはいえず、次代を支える人材を育成する手段としてOSSが意味を持つとしている。

 そして、こうした意義を踏まえつつ、経済産業省では、大きく次の4つの着眼点で様々なことを行っているとする。

  • 足りない機能の補完(IPAなど)
  • 実践の場の提供(学校教育現場など)
  • 国際展開(アジアOSSシンポジウムなど)
  • 法的問題分析

 このうち、実践の場の提供として学校教育現場を挙げているのは、「学校というのは、ほとんどの人が一度は行くもの。学校で普及すれば家庭にも波及すると考えている。また、予算などの関係で教育現場はデジタルデバイドな部分もある」(久米氏)とし、OSSを活用したデスクトップ環境が教育現場での実用に耐えることを包括的な観点から実証し、そこで得られた知見を各教育機関での試行実験および実運用に役立てたい考えだ。

「今回公募を行ったところ、思った以上に集まった。来年度も、教育情報化基盤整備事業としてより大規模に継続していきたい」(久米氏)

 なお、平成17年度の経済産業省のOSS関係予算の要求額は、今年度の約2倍となる18億円超としている。内訳は、OSS活用基盤整備事業に10億円、教育情報化基盤整備に6億円の内数、アジアオープンソースソフトウェア基盤整備事業に5億円、早期高度IT人材育成支援事業に2.5億円となる(合計額が一致しないのは、今後削られることが予想されるから)。

国際展開の意義と誤解

 アジアOSSシンポジウムなどに代表される国際展開については、その成果が目に見えて現れている。同シンポジウムは2003年の3月を契機とし、これまでに4回開催されたが、次のような効果が出始めている。

アジアOSSシンポジウム 政府のOSS政策動向
2003/3 第1回@タイ 2003/5 タイ:ICT省の支援の下、低価格PCが発売。10万台以上を出荷
2003/11 第2回@シンガポール 2003冬 マレーシア:公共機関におけるOSS基本計画策定、低価格LinuxPC発売
2004/3 第3回@ベトナム 2004/3 ベトナム:OSS活用五カ年計画承認。OSS開発研究に2000万ドル支出予定
2004/9 第4回@台湾

「シンポジウムを行った国ではOSSに関する知見が急速に高まり、何らかのアクションとして現れてくることが多い。今月初めには台北で行われたが、何かしら起こってくると思う」(久米氏)

 もうひとつ国際展開で見逃せないのは、「日中韓OSS連携」である。様々なメディアで報道され、ともすれば「共同でLinuxディストリビューションの開発を行う」かのような見方をされがちだが、図を見れば分かるように実際はそうではない。「閉じたものを共同開発するのではなく、各国で開発したものをオープンにしていこうという話」(久米氏)

日中韓OSS連携の意味 日中韓OSS連携の意味(クリックで全体像が確認できます)

 上図の北東アジアOSS推進フォーラムの日本側の受け皿としては「日本OSS推進フォーラム」が存在している。同フォーラムには代表幹事の日立製作所取締役・桑原洋氏を始め、幹事団には日本IBMの大歳卓麻社長、NECの金杉明信社長などといったそうそうたるメンバーが集まっている。前日のセッションで登場したNEC Linux推進センターのセンター長、堀 健一氏もサポートインフラワーキンググループに名前がある。

日本OSS推進フォーラムのメンバー
(クリックで拡大します)
日本OSS推進フォーラムの組織構成
(クリックで拡大します)

 また、久米氏は中国企業とベンダー、そして政府の連関図を示し「日本もそうかもしれないが、中国では人と人の結びつきでビジネスが進んでいくことが多い。このため、人物レベルにまで落とし込んだ連関図を作成するなどしている」とし、国際展開においては、中国の動向が重要だと話す。

 その中国の関心事としては、Linuxの標準化だという。中国には国内の各地域やベンダーと結びついた格好のLinuxディストリビューションが複数存在する。しかし、これはOSSを促進するには妨げとなるため、標準化を推し進めたいのだという。

「中国の面白いところは、それが国の仕事であるというところ。」(久米氏)

 しかし、国の仕事といっても、実務が追いついていない部分が存在し、文書の書き方など荒い部分もあることから、そうした部分で協力していきたいとしている。

望まれるIT業界のイチロー

 同氏は人材育成の在り方についても触れている。前述のように、ブラックボックスの組み立てだけでは、真のエンジニアは育たない。しかし、教育の現場では、特定のソフトウェアの使用法を覚えることがIT教育と同義になっている場合もあると話す。

 こうした現状を変えていくためには、ソースコードを読んで、プログラムの働きを理解していくことなどが第一歩として求められるとし、能力的に優れた人を集めて囲碁や将棋でいう奨励会のIT版を作りたいと述べた。

 この動きは先の予算編成を見ても具体化の方向で進んでいる。早期高度IT人材育成支援事業がそれにあたり、「ITクラフトマンシップ・プロジェクト」として進めていく考えが示された。

「OSSの世界でもイチローや中田が出てきてほしい。活躍のフィールドは世界」(久米氏)

 最後に久米氏は、「あと3年くらいして振り返ると、あのころが本当に大きなターニングポイントだった、ということになる気がする」とし、基盤整備でのコモディティ化が進むことで、IT産業は「モノ売り」から「サービス産業」「ソリューション産業」への脱皮が求められると話す。そして、「周りがやっているから」「顧客から求められているから」といった受身の考えではなく、OSSのダイナミズムを活用し、個人、コミュニティ、場合によっては競合他社との協調・相互関係の下でイノベーションを促進していくものが有利だと結んだ。

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