Turbolinuxの最新版はリナックス普及委員会とともに……(1/2 ページ)

ターボリナックスは、「ATOK for Linux」と「筆ぐるめ for Turbolinux」を標準搭載したLinuxディストリビューション「ターボリナックス ホーム」を発表した。リナックス普及委員会なる不思議な組織を束ねる会長も登場し、異様な盛り上がりを見せた。

» 2004年10月21日 17時09分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ターボリナックスは10月20日、アイコンをワンクリックするだけという直感的な操作で使用できるLinuxディストリビューション「ターボリナックス ホーム」(開発コードネーム:Heian)を11月12日から販売することを発表した。その記者説明会が21日、都内で行われた。

 冒頭挨拶に立った、ターボリナックス代表取締役社長の矢野広一氏は、Linuxの現状を2つの山に例える。

「Linux市場には、サーバ向けとクライアント向けという大きな山が2つ存在している。私たちの行為はその山の頂に向けて岩を押していくようなものだが、私たちが手を離したときに岩が自らの重みで山を転がっていく場所には至っていないのが現状。とはいえ、サーバ向けの領域では、一緒になって押してくれるベンダーも多いが、クライアント向けには押し手がそれほどいない。山の高さもあいまって、大変な作業」(矢野氏)

 続いて製品紹介を行ったターボリナックス、クライアントグループ/プロダクト・マネージャの久保和広氏は、コンシューマ市場のパソコン利用用途が「インターネット」「メール」そして「ハガキ/年賀状作成」が大半を占めるとし、そこに、「Linuxクライアントだからできることは何か」を考えた製品が、今回の「ターボリナックス ホーム」であると話す。

 特に、「ハガキ/年賀状作成」の部分は、年賀状作成ソフトの売り上げがセキュリティソフトに次ぐ売り上げであること、年賀状を出すユーザーの9割がPCを利用、そしてデジカメの普及率が50%を超えていることを理由に、その部分にフォーカスした「ターボリナックス ホーム」はユーザーに訴求するものであると話す。ターゲット層としては、既存のPCユーザーだけでなく、携帯電話の利用がPCの利用を上回るようなジュニア世代、そして、ますます増加するシニア世代を見据えている。

ターボリナックス ホームの特長

 今回発表された製品の特徴は、デスクトップ環境にシンプルな構成の「TurboHome」を採用していることだろう。メイン画面には、「インターネット」、「デジカメ・はがき作成」「便利なソフト」の3カテゴリにそれぞれ3つずつのアイコンが用意されている。

メイン画面 ターボリナックス ホームのメイン画面(クリックで拡大します)

「インターネット」カテゴリには、「Webブラウザ」(Mozilla)、「メール」(Mozilla)、「チャット」(kopete)のアイコンが、「デジカメ・はがき作成」カテゴリには「写真を取り込む」、「写真の編集」(Gimp 1.2.5)、「ハガキ・年賀状を作る」(筆ぐるめ)のアイコンが、そして「便利なソフト」カテゴリには、「文書を書く」(KEdit)、「動画を見る」(Turboメディアプレイヤー)、「その他のソフトを使う」(直接指定)アイコンが用意される。

 このほか画面に表示されているのは、カレンダーや電源ボタン、アクティブバナーと呼ばれるWebブラウザのウインドウ、セキュリティ関連などのアップデートパッケージを知らせる「Turboアラート」ボタン、あとはヘルプや諸設定を行うボタンだ。このうちアクティブバナーについては、「広告モデルも考えたものとなっている」(久保氏)と話す。具体的な活用方法については明言を避けたが、Blogなどとの連携も匂わせた。

 今回の製品はUIだけを見れば、PC-98シリーズのWindowsプリインストールマシンに搭載されていた98ランチやLindows CD Smileで提供されているものに通じるものがあるが、久保氏によると、Turbolinux 10 Desktopで採用されている「eDesk」を拡張したものだという。ちなみにTurboHomeもデスクトップ環境のひとつであるため、KDEやGNOMEを選択すれば10Dライクな画面となる。

 製品の主要な構成コンポーネントは、Linuxカーネル 2.6.0/glibc 2.3.2/XFree86 4.3.0/rpm 4.2/gcc 3.3.1/KDE 3.1.5と、同社の10Dをベースとしたものとなっている。しかし、久保氏は「メインストリームラインとは別。あくまで新ブランドとしてサブラインでの展開をしていく」と述べている。

注目すべき2つのソフトウェア

 製品には、リコーTrueTypeフォント5書体やTurboメディアプレーヤー、Opera 日本語版(試用版)などが搭載されているが、今回注目すべきは、「筆ぐるめ for Turbolinux」と「ATOK for Linux」だろう。

 「筆ぐるめ for Turbolinux」は、国内のインストールベースのシェアで首位を走る富士ソフトABCのハガキ作成ソフトで、国内のLinuxディストリビューションとしては初の搭載となる。さらに、Linux上でのハガキフチなし印刷も実現している。同ソフトの搭載は矢野氏が以前自身のBlogで語っていたように、コンシューマー市場においては重要なファクターとなり得る。

「筆ぐるめ for Turbolinux」の画面(クリックで拡大します)

 そして、「ATOK for Linux」は、12月よりジャストシステムより単体でのライセンス販売が開始されるが(関連記事参照)、いち早くそれを収録した形となる。ターボリナックスの独自拡張により、[半角/全角]キーで日本語入力のオン/オフを切り替えることができる。

「私は名古屋出身で、『何言っとんの』とよく言うが、これまでだと『何一tの』と変換されていた。これが一発で変換できるようになったのはうれしい」(久保氏)

 そのほかにも、「そんなことやっちゃったのといわれるようなことをやった」と久保氏が話すとおり、今回の製品は既存のLinuxユーザーからすると驚くべき変化が多い。前述のデスクトップ環境もしかりだが、そのほかにも、パスワード認証なしでのログインや、管理者権限でなくても各種システムの設定が行えたりする。

 価格は1万5800円。パッケージ構成は、インストールCD3枚のほか、すでにWindowsがインストールされたPCを持つユーザー向けに、パーティショニングソフト「Acronis PartitionExpert 2003」のCD-ROM1枚が同梱される。また、10D/10F...登録ユーザーは、「AcronisPartitionExpert 2003」を除いたパッケージを5900円で購入可能。

 サポートについては、60日間件数無制限で、Turbolinux OSのインストールサポートおよび筆ぐるめ for TurbolinuxのサポートをWebまたはメール経由で受け付ける。10D/10F...ユーザー優待価格版については、この部分が30日間3インシデントとなる。

 なお、導入を検討するにあたっては、HDDにインストールする前に、KNOPPIXやLindows CDのようなCDブート型のタイプで事前に検証したいという要望も多くあるはずだ。この点については、久保氏も「具体的なリリースタイミングは未定」としながらも、CDブート型のTurbolinuxを検討していることを明らかにした。


 そして、久保氏の説明が終わるころ、会場が「さわ…ざわ…」となりはじめた。ついにあの方の登場である。

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