いくらなら使えるか、ICタグの値段〜コストの壁と現実的な価格を探る月刊コンピュートピア(1/2 ページ)

生活のすみずみまでRFIDが浸透する日はいつ来るのか。そのためには、ICタグの価格を下げる必要がある。ICタグの価格のコスト構造やコスト削減のの取り組み、さらに低コスト化の実現の可能性について検討してみたい。

» 2004年11月05日 17時30分 公開
[松錘,月刊コンピュートピア]

この記事は月刊コンピュートピアから許可を得て転載しています。 

 生活のすみずみまでRFIDが浸透する日はいつ来るのか。そのためには、ICタグの価格を下げる必要がある。消費者にICタグのコストを押し付けることは許されないからだ。ICタグの価格について、そのコスト構造やコスト削減のための取り組み、さらに低コスト化実現の可能性について検討してみたい。

 トレーサビリティーを発揮するRFIDは確かに面白い。衣服に埋め込んだICタグをスキャンすれば、その人がどのブランドのいくらの服を着ているか、すぐにわかる。もちろんICタグのデータから情報を読み解くには、実際にはデータベースへのアクセス権限がなければ無理なのだが、権限さえあれば下着の色やサイズまでわかってしまう。

ICタグは生活に浸透するか

 紙幣に組み込むと財布の中身も見透かされるというわけだ。国産ユビキタス技術の確立をめざすユビキタスIDセンターは、農協の協力を得て大根にICタグをつけ、店頭で生産者の顔をディスプレイ表示させる実証実験を行った。なぜ大根なのかを推察すると、身近な商品にICタグを付けると便利であることを消費者に印象づけたかったのだろう。身近なモノに付くICタグ。その現実的な値段を考えるとき、どこまで製造コストを抑えられるかがポイントとなる。

タグ単価50円では高すぎる

 RFIDの話題といえばWal-Martと米軍だ。2005年から納入業者は納入物にICタグを付けるよう命じている。コンテナやダンボール箱単位でICタグを付けるのなら話はわかるが、個々のモノとなると厄介な話となる。1ドルもしないチューインガムやキャンディーのような低価格の商品にICタグを付けると利益が吹き飛んでしまうからだ。

 ICタグの米国市場での相場を調べてみると、5年前はおおよそ次のような値段だった。安い方から、通信に電磁誘導方式を利用する「Inductionタグ」が3〜8ドル。共振を利用する「BackScatterタグ」が5〜40ドル。タグ自身が電波を発信する「Two-Wayタグ」は、なんと75〜190ドルもしたのだ。

 2000年に入るとICタグの小型化が進み、実装されたICチップのサイズが1ミリ角のICタグが登場した。価格は安いものでは、1ドルから2ドル程度にまで抑えることが可能になった。最近では、50セント程度に単価設定するメーカーもある。ただし、これは数十万個のオーダーを前提とした価格であることに注意が必要だ。算盤を弾くまでもないことだが、大根1本に50円のタグを付けるのは愚かだ。

その用途や、使い捨てかリユースするかで、許容できるタグの単価も異なる。RadioTags,TechnologySnagsandMarketLagsより

 しばしば「小額商品にICタグをつけるには、ICタグの単価を5セント程度に下げる必要がある」と言われる。今の10分の1だ。1ミリ角のチップはずいぶん小さいように感じるだろうが、ICタグのコストはシリコンのサイズに比例するため、サイズだけを考えれば10分の1に小型化しなければならない。

 1枚のウエハから10倍のICチップを取り出したいわけだ。たとえば単価5セントを実現するには、計算上のサイズは0.1ミリ角になる。これは、机の上に積もったホコリ程度の大きさ。そうした極微なICチップを製造するためには、高度な製造技術や特殊な製造ラインが必要とることも考えられ、製造コストはかさみそうだ。5セントのICタグを本当に実現できるのだろうか。

助成金で単価引き下げ?

 経済産業省は、2004年3月24日、より安価なICタグの開発をめざす「響プロジェクト」を開始すると発表した。このプロジェクトは、ICタグの開発力を持つ企業を公募し、研究費を助成するものだ。助成金額は2年で6億円程度。ICタグの価格を5円以下に引き下げ、RFIDの普及させることを狙って、国内トップレベルの研究者の参加を募る。いかにコストをかけずに極微のICタグとアンテナを実装するかがポイント。

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