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» 2004年11月09日 17時01分 UPDATE

月刊コンピュートピア大量のICタグをいかに生産・破棄するのか (1/2)

身の回りのあらゆるものにICタグが添付され、ユビキタス環境を実現する――。近い将来到来すると予測されているICタグの姿だ。多種多様な面で企業の競争力向上に寄与すると見られている。反面、このような将来像の実現には無数のICタグをいかに効率的に生産・廃棄するのかという問題が立ちはだかるのも事実だ。

[岡崎勝巳,月刊コンピュートピア]

この記事は月刊コンピュートピアから許可を得て転載しています。

 身の回りのあらゆるものにICタグが添付され、ユビキタス環境を実現する――。近い将来到来すると予測されているICタグの姿だ。その結果、新たなビジネスモデルが確立されると共に、企業の業務プロセスや組織の再編成・再構築が進むなど、多種多様な面で企業の競争力向上に寄与すると見られている。反面、このような将来像の実現には無数のICタグをいかに効率的に生産・廃棄するのかという問題が立ちはだかるのも事実だ。


 総務省は2002年時点でICタグの市場規模が158億円と見込んでいる。さらに2007年以降、急速に利用が進むことで、2010年の経済波及効果が最大31兆円まで達すると試算している。これだけ膨大な量のICタグを生産するためには、現在の製造技術の抜本的な改革が求められるはずだ。メーカー各社もそのための取り組みを現在、着々と進めている。

picture1.jpg 総務省が予測する経済波及効果。出展:総務省ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会 第6回会合配布資料

 たとえばICチップを基盤に取り付けるにあたって、従来はチップをひとつずつ電気的に基盤に実装する「フリップチップ」と呼ばれる方式が採用されていた。しかし、この方式ではチップが小型化すればするほど物理的に大量生産が困難になる。そこで注目を集めている技術のひとつが米エイリアン・テクノロジーが開発した「FSA(流体内自己アセンブリ)」と呼ばれる方式だ。

 FSAは電気的に接続するのではなく、基盤にチップをはめ込むと考えればわかりやすい。ICチップの取り付け位置にあらかじめ窪みを設けた基盤とICチップを液体の中に入れ、基盤を揺らすことで窪みにチップを取り付けていくのである。従来の手法では1秒間に1〜2個程度が限界だが、この方式を使えば実装数が数十にまで増えるという。大量に製造できるようになれば量産効果も表れ、ICタグの価格低下にもつながる。

 加えて、FSAではICタグの小型化への対応も容易になると見込まれている。2006年にはFSAによりひとつあたり5セントのICタグが実現できるとの報道もある。大量生産を可能とする製造技術の確立は、あらゆる面で大きな課題になると言えるだろう。

廃棄物から個人情報が流出?

 ICタグは種類によっては再利用されるものもあるが、最終的には廃棄されることになる。しかし残念なことに、日本ではICタグの廃棄にフォーカスをあて、その問題点について十分に議論できていないようだ。

 たとえば、郵政省の「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利用に関する調査研究会」では、国内外のICタグの利用事例を取り上げ、問題点などを検証しているが、そこでもICタグの廃棄に関する課題はほとんど取り上げられていない。しかし、ICタグの廃棄は、場合によっては個人情報の保護にかかわる極めて大きな問題を孕んでいる。

 ICタグにさまざまな情報を記憶しておけることは改めて言うまでもないだろう。そして、たとえば洋服を購入した消費者が、その洋服に添付されていたICタグを捨てた場合、ICタグから消費者の性別やおおよその身長、体重といった情報が、本人の知らぬ間に第三者に読み取られる可能性は否定できない。ICタグは政府の「e-Japan戦略II」が目的とする「元気、安心、感動、便利」な社会を実現する上で、極めて大きな役割を果たすと見られているが、個人情報を保護するためのICタグ自身の機能面、さらに法制面の整備が必須となるはずだ。

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