コラム
» 2004年11月29日 13時53分 UPDATE

dev blog/CMS特別コラム:あなたのBlogは誰のもの

Blog書き込みを利用した出版、という従来では考えられなかった形態が注目されている。ここには今まで見落としがちだった著作二次利用という問題が絡んでいるのだ。

[森川拓男,ITmedia]

 ここ数年、不況といわれる商用出版業界に新たな動きがある。それは、インターネット上で書かれた文章をまとめて出版するというケースだ。特に最近、「2ちゃんねる」上で展開されたスレッドがそのまま出版化された『電車男』(新潮社)がベストセラーになっていることは周知だろう。それ以前にも、2ちゃんねるを始めとしたさまざまなインターネット媒体の書籍化が進んでいることも記憶に新しい。

 そして、その波はBlogサービスにも現れ始めた。

 もともと幾つかのBlogには、自費出版のような形で書籍化を行うといったサービスが存在していた。これはあくまでも自分が費用を払い、自分の元に送られてくるだけだった。しかし、多くの商用ベンダーが行っているBlogサービスが、独自の書籍ブランドを立ち上げるなど、一般書店に並ぶ形態での書籍化も見られる。一般のユーザーの書いたBlog書き込みというわけではないが、2ちゃんねる管理人ひろゆき氏の『元祖しゃちょう日記』(講談社)など、Blogをそのまま本にするという試みもある。

 その中で浮上してきたのが二次利用に関わる著作権問題だ。

著作者人格権を行使しない?

 Blogサービスに限らず、多くのユーザーは「利用規約に同意します」というボタンやリンクを、利用規約を読まずに押してしまうケースが多いだろう。本来、契約する時は確認しなくてはならない規約だが、ユーザーにとって大事なことは、そのBlogサービスの使い勝手が良いかどうかであり、まさかその規約内にユーザーが不利となることなど無いだろうと考えがちだ。そこまで考えていなくても、結果的に読まずに同意してしまえば同じだ。ここに待っていた大きな落とし穴が、著作権問題なのだ。

 著作権は通常、書いた本人にあるものだと広く認識されている。したがって、どのようなBlogサービスを利用しようが、自分が書いたものの著作権は護られている、と考えるのが当然だ。

 しかし、Blogサービスの中には、利用規約の中に「サービス会社に対してユーザーは、著作者人格権をいっさい行使してはならない」という文言を入れているものがある。しかも、この文言を入れているのはひとつのBlogサービスではなく、複数のBlogサービスだ。

 そうとはいっても、「著作者人格権」などという言葉は一般に馴染みがないので、いまいちピンとこないという人が多いかもしれない。

 簡単に言えば、著作者人格権とは、「公表権」と「氏名表示権」、「同一性保持権」の三つの権利からなっているものだ。これは、著作権法の第18条から第20条に定められており、第17条において「著作者」に認められた権利である。

 「公表権」は、著作物の公表の可否や方法について決めることができる権利。「氏名表示権」は、著作物の表示に際して氏名表示の可否、本名にするかペンネームにするかといったことを決めることができる権利。そして「同一性保持権」とは、著作物の改変や変更、削除などを認めないという権利だ。これら三つの権利は、著作者の人格的な問題にも絡むために「著作者人格権」と呼ばれている。そして最も重要な点は、譲渡できない権利であることだ。

 この権利を「サービスを提供している会社に対して使うんじゃないよ」と規約でうたっているBlogサービスがあることに驚かされるが、これが現実である。もちろん、それぞれにサービスにおいて、あくまでもBlogサービスのコンテンツ内において、新着情報やオススメBlogなどとして表示する際、いちいち著作者人格権を使われてはサービス自体がうまくいかない。そのために利用する範囲を限定設定しているところもあるだろう。しかし、範囲がいくらでも拡大解釈できるものが幾つも存在し、その中には出版をも視野に入れているのではないか、というものも少なからずあるのだ。

自らのBlog書き込みは誰のものか?

 サービス側からの見解として、ほとんどのBlog書き込みは、出版物になる可能性がないことから、このことで騒ぐのは無意味とする意見もある。しかし、これは大きな勘違いだ。

 Blogの記事が最終的に出版されようがしまいが、最初から著作者の著作者人格権の行使を封じてしまう規約があること自体が問題点だからだ。

 そもそも、サービスのために必要な範囲で利用したいというのならば、この言葉を使わずとも可能なはずだ。例えば新着情報などへの引用や、Blogの宣伝のために用いる程度ならば、誰も嫌とは言わないだろう。基本的にプライベートモードなどが設定できるサービスでない限り、Blogに書かれたものは、インターネットに接続された全世界に公開されているものだからだ。

 実際、このことをきちんと理解したサービスでは、著作権はユーザーにあると明記した上で、「サービスの宣伝や広告などの目的に限ってBlog上の情報を引用できる」と、その範囲を定めている。そこには、ユーザーは著作者人格権を行使しないなどという文言はいっさい含まれていない。この場合は、当然ながらユーザーの著作権がしっかり護られていることが明記されているので、安心して利用できるわけだ。

 それに対し、最も極端な例ではすべての著作権がサービス側に属すると、書いた人にはいっさい権利がないかのような意見もある。ここまでいかずとも、著作者人格権を行使しないこととされてしまえば、仮に人気Blogを書籍として出版する企画が立ち上がった場合、その作者に連絡することなく勝手に話を進めることも可能になってしまう。

 しかも、執筆者をBlogサービスの編集などとして隠し、通常は二次利用時に発生する報酬すら払わなくてもよいことになってしまう。これは単に金銭問題だけではなくて、書いた内容に関する問題だろう。もちろん、当然得られる印税などの報酬が搾取されるのは問題だが、何よりも自分が書いたものが覚えのないところで出版されるなどあってはならないだろう。やはり、少なくとも営利な出版をする場合、最低限了解を得ることが必要なはずだ。しかし、規約で「行使しないこと」とすることで、それらをすべて回避してしまおうというものだ。

 もちろん、あくまでもこれは極論であり、Blogサービスがそんなことを本気で考えているなどとは筆者は考えていない。しかし、ネットの文章の二次利用による出版などの企画が増えている昨今、この規約ひとつが危うい方向に進んでしまう可能性があると理解しておかなければならない。特にBlogサービスのユーザーは、勢いに乗っているサービス利用者であることから、認識しておかなければならないのだ。

 そして、Blogサービス側も今いちど規約を見直し、ユーザーの権利を無意味に剥奪する条項は考え直す必要があると切に願う。それが、今後のBlogサービスの発展に少なからず影響していくのではないだろうか。

 これを機会に、自分が利用しているBlogサービスの規約を見直してみよう。そして、あなたのBlogは一体誰のものになっているのか? 確認してみる必要があるかもしれない。

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