今月末から開催される「日本SGI ソリューション・キュービック・フォーラム 2005」。どうやらこのフォーラムでは来場者をあっと言わせる隠し玉が用意されているようだ。
日本SGIがNECグループとなってはや3年が過ぎた。しかしその間、NECは日本SGIの考える方向性を最大限に尊重し、日本SGIもまた、さまざまな企業、大学などと連携し、自らが考える方向性の実現を積極的に推し進めてきた。
そんな同社の「今」が詰まった「日本SGI ソリューション・キュービック・フォーラム 2005」が2月28日、3月1日の2日間開催される。どうやらこのフォーラムでは隠し玉も用意されているようだ。日本SGI代表取締役社長CEOの和泉法夫氏に話を聞いた。
ITmedia 今回、いちばん訴求したいポイントは?
和泉 「日本SGIは変わった」ということです。「変える」とか「変えたい」ではなく、「変わった」というメッセージを伝えたい。
ITmedia 日本SGIは、米国シリコングラフィックス社(米SGI)に振り回されないよう独自路線を模索してきましたが、その結果どう変わったのですか?
和泉 これまでにも言ってきたように、従来のレガシーな部分といえる箱(サーバ製品)にフォーカスしなくなったことですね。とはいえ、これらを完全に捨て去るのではなく、ベースの部分として存在させています。それは例えば米SGIが持つ先進的な技術や製品を使ったHPCの分野に関連するフォーラムに現れています。
ITmedia リサーチ&サイエンスのセッションですね。スパコンを実際に利用しているユーザーの声が聞けるようですが、その中には地球シミュレーターについて触れたセッションもありますね。他社のスパコンを紹介するとは意外です。
和泉 最初に言っておきたいのは、テクノロジーを語る、米SGIのベンダーセッションのようなものは、ユーザーの生の声をお伝えするリサーチ&サイエンスのセッションとは別に用意しています。研究者にとって大事なのは、どのスパコンを使うかではなく、それを使ってどういった結果が出せたかということです。CPUの数が2000や1万個搭載されている、といったことに興味を持つのはコンピューターテクノロジーに携わる人だけです。日本SGIは研究成果を支援するので、どのスパコンを使おうがそれはたいした問題ではないのです。
ITmedia では、具体的にどのような支援を?
和泉 一言で言えば使い勝手ですね。いかにユーザーがテクニックを労することなく簡単に使えるかを日本SGIは考え抜いてきたのです。また、成果物の可視化でも日本SGIは強みを持っています。
ITmedia 2004年12月のフォーラムに引き続き、ブロードバンド・ユビキタスの分野も多くのフォーラムが用意されていますね。
和泉 そうですね。この中では「U-Learning」(ユビキタス・ラーニング)のように、これまでのe-Learningを超える新しい学習のスタイルについても触れています。e-Learningのようにパソコンの前にいることを前提としたものから、「いつでもどこでも」学習できる環境ができあがりつつあります。ある大学では、すでにキャンバス内にユビキタス・ラーニング環境を構築しています。もはや、そういった環境に対応したコンテンツが出てきてもおかしくないころです。
また、メディア/ブロードバンドフォーラムのように、放送業界の方にお勧めしたいものも用意しました。昨今の映像制作・管理のワークフローは大きく変わりつつあります。今現場にいる方にそうした新しい潮流を知ってもらいたい。
ITmedia 世の流れを考えてもタイムリーな話題ですね(笑い)。
ITmedia このほかにもロボット、Linux、セキュリティといったテーマでフォーラムが用意されています。
和泉 ロボットの部分は皆さんにとって刺激的なものになるでしょう。愛知万博では二足歩行のロボットが紹介されました。しかし、二足歩行はすぐにビジネスになりません。今回のロボットフォーラムでは、「ロボットがビジネスになる」ということをお見せします。
ITmedia 当日発表されるのは、手だけしかついていないような工業用ロボット、というオチではないですよね?
和泉 残念ながら当日をお楽しみに、としか言えませんが、日本SGIとしてはロボットの最先端をお見せできると思いますよ。
多くの人はロボットが二足歩行したことで喜んでいるようですが、人間の子供を想像してください。立って歩いたときと、いろいろなことを覚えて話し出すときのどちらが感動的でしょう? ロボットも同じで、いつまでも二足歩行で喜んでいるのではなく、歩き、そしてコミュニケーションがとれることが親(日本SGI)としてはうれしいのです。
ITmedia ロボットフォーラムでは「ドラえもん建造計画」のようなものもあることから期待が膨らみます。当日は何かがお披露目されると考えてよいでしょうか。
和泉 モノ、そして構想を発表できると思います。お楽しみに。
ITmedia Linuxはどうですか。ほかのフォーラムと比べて、これは具体的なフォーラムのようにも思えますが。
和泉 いや、逆ですよ。ほかのフォーラムのテーマはビジネスとなっているのに対し、Linuxはまだ啓発のレベルですから。
ITmedia 啓発ばかりやっていてもビジネスにはならないのでは?
和泉 ロボットのときにも同じようなことを聞かれたことがありますが、最初からギラギラしてはだめなんですよ。こうした動きの中核付近で頑張っていれば、そこには必ず情報が集約する。情報を握っているということが重要で、直接的な利益のみを求める必要はないのです。
HPCの分野でもLinuxはもはやデファクトスタンダードですし、自治体などでも積極的なオープンソースの導入が図られています(関連記事参照)。ISVのソリューションがより整備されてくれば、ある意味ではもっとも保守的な民間企業の基幹系にもこの動きが浸透してくることでしょう。
ITmedia そうなると、UNIXはどうなっていくのでしょう。
和泉 より勢力を弱めるでしょうね。もともとUNIXにもオープンシステムの概念はあったはずですが、各社の囲い込みによりそうでなくなってしまった。反省しろ、と言いたい。米SGIも含めてね(笑い)。Linuxを第2のUNIXにしてはならないのです。
ITmedia ほかのベンダーと比べて、Linuxにおける日本SGIの強みとは?
和泉 Windowsをプラットフォームとするハードを扱っていないので、マイクロソフトに気兼ねすることなくビジネスを進めていけることですね。言葉を選ばず突き進んでいけますから。
ITmedia 歯に衣着せませんね(笑い)。では、セキュリティはどうでしょう? 日本SGIがセキュリティを手がける理由がよく分からないのですが。
和泉 わたしたちは、自社の顧客のセキュリティをどのようにして守るかを考えています。いわば、評価を代行し、よいものを勧めているのです。セキュリティに関しては、自社のソリューション、1つのベンダーだけではなく、複数のベンダーと協業し、それらをまとめてアプライアンスとして提供することでワークフローも含めたトータルセキュリティを実現することが重要だと考えています。とかく今のセキュリティというのは、細かい部分を見てばかりでもぐらたたきのようになってしまい、全体に目が向かなくなってしまっていますからね。
ITmedia 同様の方針をほかのベンダーが取りはじめたらどうするのですか?
和泉 うまくいかないんじゃないでしょうか。大抵の場合、どこの営業マンも自社の製品ありきで、その次にユーザーがくるものです。自社製品を売らないといけませんからね。日本SGIもまったくそうではないとは言いませんが、いちばんそうなりにくい企業ではあるでしょうね。ハードウェアフリーの強みです。
ITmedia 最後に、今回のフォーラムでのターゲットユーザーはどのあたりですか?
和泉 広範な範囲を扱うものですので一概には言えませんが、いわゆるCIOと呼ばれる人たちもERPやDBばかりではなく、こうした部分にも目を向けなければならない時期になってきたと思いますよ。
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