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» 2005年03月01日 17時37分 UPDATE

Interview:中国がDebianに寄せる期待

VA Linux Systems Japanと新華Linuxは戦略提携を発表した。両社がDebianを推す理由は何か。中国におけるLinux市場の今も含め、VAリナックスの佐渡氏に聞いた。

[西尾泰三,ITmedia]

 既報のとおり、VA Linux Systems Japanと新華Linuxは、「Debian Project」に対する貢献の強化と、Debian GNU/Linuxをベースとしたシステムの採用を推進することを目的とする戦略提携を発表した。両社がDebianを推す理由は何か。VA Linux Systems Japanのマーケティング部長で、OSDNユニットのユニット長も務める佐渡秀治氏に話を聞いた。

ITmedia 今回VAリナックスが戦略提携を発表した新華Linux(Sun Wah Linux)というのはどんな企業なのでしょう。

佐渡 新華Linuxは、中国の南京、香港などを拠点としており、江蘇省政府との結び付きが特に強く、中央政府とのパイプもある企業だと思います。特筆すべきは、中国では国内で閉じてしまう企業が多いなか、中国国内ではおそらく唯一グローバルなオープンソース開発や標準化に関わることを指向していることでしょう。同社のロジャー・ソー氏はボードメンバーとしてFree Standards Group(FSG)に参加していますし、中国企業として唯一LSB認証も取得しています。また、Debianをコアとしてグローバル開発に打って出て、技術力で勝負しようとしています。

 その技術力の根幹となる人材は、江蘇省政府の支援と南京大学との技術交流により確保されているように思います。

 また、新華Linuxは新華科技(Sun Wah Hi-Tech Group)という企業グループに属していて、さらにこの新華科技は、新華集団(Sun Wah Group)という企業グループに属しているのですが、これは香港を中心とした大きなコングロマリットです。

ITmedia 現在、中国のLinux市場はどのような状態なのでしょう。Red Flag Softwareなどが有名ですが。

佐渡 海外、特に米国や日本から見るとRed Flag Softwareが政府の後押しを受けた最大勢力と見られがちですが、実際には群雄割拠とでもいうべき状況で、新華Linuxもその中の有力企業です。

 中国政府はLinux推進を掲げていますが、市場としてはまだまだ未成熟です。つまり、Linuxだけを見れば群雄割拠ですし、そもそも全体市場も未成熟なので、これからいくらでも伸ばせる素地があるということですね。

ITmedia 新華LinuxはなぜDebianを推そうと思ったのでしょう。

佐渡 新華LinuxのWebサイトなどで確認していただくのがよいと思いますが、Debianについては、ほかのディストリビューションと違ってクローズドな開発ではない点を新華Linuxは評価しているように思います。また、中国政府はナショナルセキュリティや自前の技術を持った企業の育成といった部分に興味があってLinuxを推進しているように見受けられますが、そのどちらの面の評価においてもDebianはよいポジションにいるといえます。これはDebianが自由なOSだからでしょう。

 今回のリリースのエンドースを見ても、どれだけDebianが注目されているか分かるかと思います。中国では政府組織の力が強く、かつ各省政府が一国に値する程の力を持っていたりしますが、江蘇省(人口8000万人)は上海に隣接し、中国でも有数の工業、経済が発達した地域です。その江蘇省の情報産業庁のナンバー2から今回の我々の発表に対して賛同を頂けるというのは大きな意味があると思います。

ITmedia 企業での利用において、ほかの商用Linuxディストリビューションに比べた場合のDebianの意義はどのあたりにあるのでしょう。

佐渡 ほかのLinuxディストリビューションと異なり、その気になれば開発にも参加できますし、サービスを提供する側からすれば、ディストリビューターの縛りなしで用途に合わせた一種のディストリビューションを作れる自由があるわけで、組み込み系などには向いているでしょう。実際、組み込み系ではDebianは非常によく使われています。

 また、本来はシステム・インテグレーション的なビジネスには、システムに合わせられるという意味で、Debianのように柔軟なOSのほうが向いているはずです。もちろんこれはシステムに合わせた改良を行える技術力を持っているという前提での話ですが、VAリナックスならこの技術力を持っているわけですので、Debianの柔軟さといった特徴を長所に変えることができます。あとは、HPは確かHPCとtelecomの分野ではDebianを推しているようですが、これも先に述べたような理由から来ているといえます(関連リンク参照)

ITmedia 新華LinuxはデスクトップLinuxに興味があるのでは?

佐渡 日本はともかく、中国ではデスクトップ市場の可能性はあるかもしれませんね。実際、新華Linuxが国際化に力を入れているのは、デスクトップ製品を見据えてのことでしょう。Windowsに支配されてしまった日本のデスクトップ市場と、まだまだすべてがこれからの中国市場ではビジネスのアプローチは異なって当たり前だと思います。ただ、彼らはデスクトップだけではなく、組み込みにも力を入れていますし、エンタープライズサーバーの領域にも強い関心を持っています。ですので、高信頼性、安定性が求められるミッションクリティカルなシステムの領域でのVAリナックスの技術力には、強い興味を持っているようです。

ITmedia 両社の提携はどうビジネスに絡んでくることになるのでしょう。

佐渡 そもそも今回の提携は、両社でDebian Projectへのコミットを強め、グローバルなオープンソース開発コミュニティの中に入って開発し、人材も育成していくということです。真のオープンソース開発者/技術者を増やすことで、両社のオープンソースビジネスにとってプラスになります。

 VA LinuxはLinuxカーネルやサーバーアプリケーションなどの開発力、サービスの信頼性、安定性を強化する技術力に強みがあります。一方、新華LinuxはFSGでの活動でも分かるように標準化活動、加えて国際化技術に優れている。それでいて、両社ともDebianに精通し、グローバルなオープンソース開発への指向が強いということなので、このマッチングは相性がよいといえます。

 また、Debianのプレゼンスを日中両国で上げる活動を行うことで、日中だけでなく世界レベルで市場全体のバランスを変えることも念頭に置いてます。現状のDebianはそのポテンシャルに比較して、ビジネスボリュームが小さいと思いますので、成長の余地は大いにあると思います。

 両社が具体的にどのような行動をするかは追々見えてくるかと思いますが、最後に一つだけ言っておきたいのは、VA Linuxと新華Linuxは両社共に今までに存在した幾つかのアライアンスのようなclosedな枠組みではなく、グローバルなオープンソース開発コミュニティの中で行動することを目指しているということです。われわれはその中で世界をリードしたいのです。


 中国・北京では2月28日から3月1日にかけて、新華LinuxのスポンサーでAsia Debian Mini-Conf 2005が開催されている。

 上記Webサイトを見ると分かるが、同イベントはThe 5th Asia Open Source Software Symposium」(通称Asia-OSS)の5回目のシンポジウムと併催となっている。そしてこの5th Asia-OSSのスポンサーも新華Linuxだ。

 興味深いのは、Asia-OSSのアジェンダを見ると、政府機関の参加者の挨拶の後、新華Linuxのロジャー・ソウ氏が「Asia Debian Mini Conference Report」を行い、その後に全体のキーノートスピーチとして現在のDebian Projectでリーダーを務めるマーティン・ミクルメイヤー(Martin Michlmayr)氏が講演していることだ。このあたりを見てもDebianに対する中国の期待の高さがうかがえるようだ。

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