WindowsからLinuxへ――行きつ戻りつ

Linuxを扱える人間がいないからWindowsを使え――Linuxへの移行の正当性を説明するには、Linuxの熟練者が社内に1人だけでは少々厳しいのかもしれない。

» 2005年03月13日 02時17分 公開
[Tina-Gasperson,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 ランディ・ラスティンジャーは、National Background Data(NBD、米国フロリダ州オーカラ)でネットワーク運営部門のディレクターを務めている。NBDは2003年10月にLinuxの使用を中止したが、それはラスティンジャーがNBDにとって欠くべからざる存在であることに気づいたからにほかならない。

 事の次第はこうだ。NBDはマイクロソフト製品の使用に伴う典型的なセキュリティ問題に悩み、ソースコードに手を加えることのできない環境からの脱出を計画した。そこで、オープンソースの熟練者としてラスティンジャーを雇い入れた。NBDの望みは叶えられたが、そのときになってNBDは気づいたのだ。ラスティンジャーがいなくなれば、Linuxシステムを扱える者が誰もいないではないかと。

熟練者がいない――Windowsに戻せ

 そこで、「ちょっと待った。Windowsに戻してくれないか」、しばらくの間だけだが。と相成ったわけなのだ。以下は、その顛末である。

 企業は応募者を雇用または採用するに当たって身元を調査するものだが、NBDは、そうした身元調査を請け負っている企業に対して犯罪歴を提供している。NBDと提携する企業は、Web経由でNBDのデータベースにログオンすることができる。

 こうしたWebベースの集中型ソフトウェアは、顧客にとって費用対効果に優れている。顧客側にソフトウェアやデータをインストールする必要がなく、どこからでもアクセスでき、技術サポートが必要となるような事態もほとんど発生しない。しかし、Internet Explorerが圧倒的に使われている環境においては、Webベースのソフトウェアはセキュリティ上のありとあらゆるリスクを招来することになる。

 NimdaやCode Redは置くとしても、ウイルスは看過できない問題だ。しかし、ラスティンジャーがやってきたとき、NBDは、中国からのハッキングの後始末に追われていた。「再構築以外に方法はなかった」。ラスティンジャーは、まさに同社を救うべく登場したのだった。「NBDはLinuxについて何も知らなかったが、マイクロソフト問題からの脱出を望んでいた。それで、私を雇ったのさ」

 ラスティンジャーの前にも、以前マイクロソフトだけを扱っていたショップが果敢にもUnixで対処しようとしたことがあった。しかし、何ともはや。ラスティンジャー曰く、「デフォルトのインストールのまま、Webサイトを構築するとはね」

サーバを再構築し、守りを固めた

 ラスティンジャーはサーバを再構築し、ipchainsとiptablesで守りを固めた。そして、NBDは、「おお、やれやれ」とばかり、深々と安堵のため息をついた。が、ちょっと待て。もし明日ラスティンジャーがバスにひかれたらどうする? これ、こいつの扱いに困ることになるではないか。

 あくまでも忠実なラスティンジャーはサーバをマイクロソフトのものに戻し、できる限りのセキュリティ対策を施した。しかし、彼の任務は続行され、彼の言葉を借りれば「オープンソース派」を徐々に周囲に増やしていった。そして、昨年11月、ついにNBDはITスタッフが十分に力をつけ再移行が可能になったと判断したのだった。

 「わたしにとって最も難しかったのは、移行の正当化だった」とラスティンジャーは言う。しかし、彼のちょっとした予言が、その問題を封印してしまった。「マイクロソフト製品を攻撃するウィルスについて、起こると思われることを話したんだが、あろう事か、そのすべてが実際に起こってしまった」

 「どうしたらいいのかって尋ねられたんで、Linuxに移行しなさいと答えたね。そしたら、Linuxが使えるだろうかって聞くんだ。だから、言ってやったよ。オープンソースだから、ソースコードを加工できる。できるだけWindowsと同じようにするって」。もちろん、Windowsウイルスに感染するってことを除いてね。

 「Linuxの手練れ」(ラスティンジャーの表現)を2人加え、ラスティンジャーはついに、再度オープンソースに移行する許可を得た。もう、後戻りはない。

MonoとPostgresSQLを、しかるべき所に

 「データの正規化にはMonoを使い、データベースには、SQL ServerやOracleではなく、PostgreSQLを使うことになる。メールシステムはLinuxに移行済みだ」

 そして、ラスティンジャーは、カスタムipchains構成を止め、Astaro Security Linuxに切り替えた。ラスティンジャーは、Astaroが好みなのだ。

「どこがいいって、経理は値段が気に入るだろうし、私は機能が気に入っている。思うに、これは、初のオールインワン・ソリューションなのだよ」

 ラスティンジャーにとって、ロードバランサーをどうするかは大きな問題だった。Astaroにはラウンドロビンシステムが組み込まれており、個別のロードバランススイッチは不要だ。

 しかし、それだけではない。ラスティンジャーは、ものの5分ですべてを設定し稼働させてしまったのだ。そう、それは結構。だが、ラスティンジャーはLinuxの天才だ。他の者なら、どうだろうか。ラスティンジャーは言う。インタフェースは簡単だし、マニュアルは読みやすい、だから専門家でなくても扱える。「間抜けのために書かれたようなもんだ」。そうかい、ありがとよ。

 ラスティンジャーに言わせると、NBDには十分なキャッシュフローがなかったから、Astaroは、実際、大いに役立ったそうだ。「インストールして3カ月もしたら、利益が出るようになった。データセンターのがらくたを片づけたからね」

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