指紋認証などのセキュリティ機能を搭載し、外勤端末を展開住友信託銀行の事例に学ぶ(1/2 ページ)

住友信託銀行は、3月中に国内の営業点に向け外勤活動用のPDA端末を配布する。指紋認証、データの暗号化、データの自動消滅機能という高度なセキュリティ機能を搭載した外勤用情報端末だ。

» 2005年03月15日 08時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]
会社データ
名称住友信託銀行株式会社
代表者取締役社長 高橋温
事業内容銀行業務による資金事業を基盤に、信託業務の中核となる「的確な運用と万全の管理」に強みを持つ「資産運用」「情報プロセッシング」金融機関という経営モデルを掲げる。「リテール事業部門」「ホールセール事業部門」「マーケット資金事業部門」「受託事業部門」「不動産事業部門」の5事業部門で、独自戦略を積極展開している
資本金2870億円
URLhttp://www.sumitomotrust.co.jp/

 外出先でのノートPCの紛失・盗難により、顧客情報を流出したというケースは今も後を絶たない。企業にとって、これほど対策が難しい漏えいルートはないかもしれない。頭の痛い難題だが、これを上手に管理しようと積極的に取り組む企業もある。

 住友信託銀行は、3月中に国内の営業店に向け外勤活動用のPDA端末を配布する。個人情報保護のため、ログイン用の指紋認証、データの暗号化、データの自動消滅機能という3段階の高度なセキュリティ機能を搭載した外勤携帯情報端末だ。

住友信託銀行 住友信託銀行

 個人顧客の「資産運用メインバンク」を目指してコンサルティング営業などを強化してきた住友信託銀行のリテール事業部門では、直接顧客の自宅を訪ねる外勤活動にも力を入れている。店舗に来店することなく、自宅で店舗と同じサービスを受けられれば、顧客の利便性は増すことになるからだ。来店出来ない顧客などに対して行われている外勤担当者によるサービスだが、これまでも高いサービス品質で好評を得てきた。

 同社の外勤担当者は紙ベースの顧客情報を携帯して活動にあたっていた。だが、携帯していた紙のツールだけでの展開には限界が見えて始めていた。訪問先で顧客の属性やニーズにあった営業活動を展開するには、携帯できる紙の資料だけでは情報不足だった。サービス品質をいっそう高めるには、訪問先で属性検索を迅速に行い、新たに適切な商品を提案できる必要に迫られていたのだ。それを行うには、PCやPDAといった情報端末の機能性を訪問先でも生かす必要があった。

情報の有効活用とセキュリティのバランス

 外勤活動用の携帯端末の導入に向けた取り組みは、2004年9月にスタート。端末の開発までに丸5カ月間を費やした。「もともと外勤活動を効率化したいという考えが元でした。当社のCRMシステム『i-Ships』と連動させて、満期金額別、商品別、エリア別といった切口からお客様をセグメンテーションし、その情報によって外勤活動を効率化したかったのです」と、同プロジェクトを営業サイドで指揮したリテール企画推進部主任調査役の岩田光宏氏はその発端を説明する。

米川氏、山本氏、岩田氏 左から業務管理部の米川氏、リテール企画推進部の山本氏、岩田氏

 しかし、翌年(2005年)4月に迫った個人情報保護法の全面施行に合わせ、持ち運ぶ顧客情報を漏えいしないためのセキュリティ機能を搭載しなければならない。利便性ばかりを追求した設計にしてしまえば、新たに導入する外勤端末が資産情報を含む大量の顧客情報を流出させてしまう元凶になりかねない。

 「外で仕事をするのだから個人情報が流出してしまうリスクは必ずついて回る。しかし、1件でも個人情報の流出を起こしてしまえば、信用を失ってしまう。それでは意味がありません」と、リテール企画推進部調査役の山本睦生氏。既に世間では相次ぐ大規模個人情報漏えい事件が騒がれており、「絶対に個人情報を漏えいさせない」セキュリティ機能を搭載すべく、リテール企画推進部と情報システム部門となる業務管理部は、顧客情報の有効活用とセキュリティという相異なる要求を満たすべく、侃々諤々議論を重ね、開発を進めてきた。

 開発に取り掛かる半年ほど前、住友信託銀行でも職員が顧客情報の一部を紛失する事件があった。紙で顧客情報を持ち歩いている時でも、同社では同様のリスクが付きまとっていることは想定しており、リスクを実務運用面でカバーするための対策を施していた。

 「紙ベースであってもその情報が誰のものなのか判別できないように、手作業で暗号化して記憶するようにしていました。実際に、営業マンも自分でどのお客様のものか分からなくなってしまうこともあるくらいでした。しかし、外勤端末を導入することで、個人情報保護対策を技術面からしっかり行ってしまおうと考えました」(リテール企画推進部主任調査役の岩田氏)

 苦々しい経験を繰り返さないためにも、新たな外勤端末の導入を機に、紛失しても絶対に漏えいしないセキュリティ機能を検討した。

出した答え

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