ベンチャーキャピタルがIT企業への投資に慎重になっている理由Trend Insight(1/2 ページ)

「オープンソース」という単語を使えばVCの注目を集められるなどとは考えないほうがよいし、オープンソースが技術系VCの必須条件とはならない。オープンソースはビジネスモデルであるからだ。

» 2005年04月25日 16時08分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 技術系のベンチャーや投資家の間では、「オープン」と「ソース」という単語を組み合わせれば、明日の成功企業を探している「エンジェル志願者」たちの注目を集められるということがよく知られている。しかしまた、現在のオープンソースに対する投資規模は、大きく成長してはいるが、かつてのドットコム・フィーバーのときには及ばない、という点でも意見が一致している。

 Draper Fisher Jurvetsonの共同経営者でSugarCRMの取締役であるジョシュ・ステイン氏によれば、現在のオープンソース投資熱はどちらかといえばインターネット・ブームに似ており、ベンチャー企業には、オープンソースを利用しているかどうかではなく、少なくともその取り扱い方について何らかの計画を持つことが求められている。

 ステイン氏はNewsForgeのインタビューに対してこう語った。「『オープンソース』という単語に大きな注目が集まっていることは間違いない。これは一時的なバブルではない。バブルとは、90年代後半のように、何十万もの企業に大した根拠もなく資本が投下されていた時期のことだ。現在では、資金を獲得できるオープンソースプロジェクトの数は限られている」

 ステイン氏は、現在のオープンソース熱は1990年代半ばの状況、つまり企業がインターネットを検討しなければならなかった時代の状況に似ていることを指摘した。さらに、オープンソースに注目が集まっていることにはそれなりの理由があると強調し、その実例として、数千件のダウンロード実績と数百人の有料ユーザーを持つオープンソースCRM管理パッケージSugarCRMを挙げた。

 ステイン氏はこう述べている。「(現在のオープンソースの流行は)1996年のインターネットの状況に似ている。(支援を求めている)企業は、必ずオープンソースかどうかを尋ねられるし、オープンソースでない場合は、将来的にどう対処するつもりかを尋ねられる。オープンソースを使わず、しかもそれが正しい選択である場合もあるだろうが、少なくともオープンソースについての戦略だけは持つ必要がある。さもなければ、1996年にインターネット戦略を持たなかった企業と同じ運命になるだろう。少なくとも、(オープンソースという)競争相手にどう対処するか、ということについて知る必要がある。これをしないのは、宿題をやっていないのも同然だ」

オープンソースでソフトウェアの魅力を回復

 ステイン氏は、最近のDow JonesのVentureSourceの索引にオープンソース企業が50社しか掲載されていないことを引き合いに出して、現在ではバブルと言えるほどのオープンソース投資は行われていないと述べた。しかし、ほぼ同じことをしている複数の企業に資金拠出がされている場合には、オープンソースへの期待が膨らんでいる徴候と言えるだろうと語った。ステイン氏はその例として、SpikeSourceSourceLabsOpenLogicの3社があまり違いのないよく似たビジネスモデルを使用していることを指摘し、バブルの状況に近づいているのかもしれないと述べた。 オープンソースにはドットコム時代のPets.com Sock Puppetのように期待と興奮をあおるような存在はないのかと尋ねたところ、ステイン氏は次のように答えた。

 「オープンソースを魔法の言葉のように使っているところも一部にはあるが、バブルの頃とは状況が違っている。現在のベンチャーキャピタル(VC)は、オープンソースが魔法の特効薬ではないということを知っている」

 ステイン氏は、オープンソースが技術系VCの必須条件になるとは考えていないと語った。オープンソースは、分野や業界というよりはビジネスモデルであるからだ。

 しかし、ステイン氏はオープンソースの将来的な展望については楽観視しており、オープンソースはエンタープライズソフトウェアの分野に投機的な面白さをもたらすものだと述べた。

 「今では数多くのオープンソースプロダクトがある。注意しなければならない要素もあるが、オープンソースは非常に強力な流れになっていると思われる。おそらくどのソフトウェアカテゴリでも、きっと誰かが(オープンソースソリューションに)取り組んでいるはずだ。驚かされるのは、このような組織がごく短期間のうちにどんどん活動を進めていくということだ。エンタープライズソフトウェアは魅力のない分野になっていたが、オープンソースの進出により、再び面白みが出てきた。エンタープライズソフトウェアがまた面白くなってきたと言える」

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