古い64ビットマシンをフリーソフトウェアで復活させようLeverage OSS(1/2 ページ)

初めての64ビットプロセッサ「MIPS R4000」がワークステーションに搭載されてから14年が経った。さまざまなアーキテクチャと64ビット設計の盛衰を振り返るとともに、64ビットアーキテクチャの去来を考える。

» 2005年05月03日 12時32分 公開
[Jem-Matzan,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 初めての64ビットプロセッサ「MIPS R4000」がワークステーションに搭載されてから既に14年が経っている。かつての64ビットワークステーションは何千ドル、何万ドルという値段だったが、AMDとIntelが高パフォーマンスで低コストな64ビットCPUを発表したことにより、ワークステーション設計に対する業界の姿勢が変化してきた。新しいアーキテクチャは古いハードウェアをすたれさせるものだが、フリーソフトウェアを使用すれば、こうした古いシステムの耐用年数を延ばすことができる。

 初めて登場した新世代の64ビットプロセッサは、Intelが2001年6月に発表したItaniumである(現在は生産停止)。その1年後にはItanium 2が発表された。Itanium 2では、初代のItaniumが抱えていた問題のほとんどが修正され、さまざまな改良が加えられていた。ItaniumとItanium 2はどちらもIntelのIA64命令セットアーキテクチャを使用していた。IA64はIA32(x86)ISAに基づいていなかったので、Intelはこの新しい命令セットを完全に支配下に置くことができた。AMDなどのライバルは、ライセンスを入手しなければIA64を使用できなかった。

 Itaniumのアイデアは素晴らしかったが、実装が貧弱だった。当時の同等クロック数のx86プロセッサは、Itaniumと同じかそれより優れたパフォーマンスを発揮していた。しかしItanium 2は、今でもSPECの最も効率の良いプロセッサ・ランキングのトップの座を占めている。

 AMDは2003年9月に独自のAMD64アーキテクチャを導入した。以降、AMDはデスクトップシステムにはAthlon 64、シングルCPU市場のハイエンドシステムにはAthlon 64 FX、ハイエンドのワークステーションおよびサーバにはOpteronという64ビットプロセッサを発表した。これらはいずれもそれほど大きなパフォーマンス低下を起こさずに、32ビットと64ビットのバイナリを同時に実行することができた。

 IntelはAMDの成功を受けて、すぐにAMD64互換のEM64Tアーキテクチャを発表した。これは現在、新しいPentium 4プロセッサと、パフォーマンスが重視されるシングルCPUシステム向けのPentium 4 Extreme Edition、さらにハイエンドのワークステーション/サーバ向けのXeonプロセッサとXeon MPプロセッサに組み込まれている。Itaniumはもともと第一世代のXeonに代わるものと想定されていたが、市場の反応の鈍さとItaniumのパフォーマンスの低さから、Xeonが生き延びることになった。XeonはIntelのワークステーション/サーバ向けプロセッサの主力製品であり、Itanium 2は主にハイエンドサーバに搭載されている。

 AMDとIntelの64ビットプロセッサは、どちらも手頃な価格で個人消費者に販売されている(ただしItanium 2は例外。Itanium 2はSGIやHewlett-PackardなどのOEMシステムに搭載することを前提として設計されているため)。誰でもAMD64またはEM64Tのプロセッサや対応マザーボード、その他のワークステーションコンポーネントを購入し、他の64ビットアーキテクチャよりも安いコストで独自のシステムを構築できる。この分野のその他のCPUは、完全に統合されたコンピュータシステムの一部としてのみ利用できる。

 IBMの64ビットPOWERアーキテクチャは、AppleのG5ワークステーションの中心部にあるPowerPCプロセッサの基盤としてよく知られている。IBMは独自のPOWER命令セットを実装し、自社のIntelliStation POWERシリーズというハイエンドワークステーションに組み込んでいる。POWERベースの各種プロセッサは、パソコン市場以外のさまざまな電子機器で広く利用されている。

 Sun MicrosystemsのSPARCアーキテクチャは32ビットから始まったため、SPARC32と呼ばれることもある。Sunは1995年にUltraSPARC 64ビットプロセッサを導入し、これは一般にSPARC64と呼ばれている。この設計は他のメーカ数社(富士通など)からライセンス供与を受けたものであるが、Sunは今でもUltraSPARCワークステーション市場で優位を占めている。

 SGIは1992年に、最初のワークステーション用64ビットプロセッサの開発元であるMIPSを買収した。ワークステーション用マイクロプロセッサとしてのMIPS CPUは主にSGIマシンに搭載して販売されているが、SGIはこの設計を他のさまざまなメーカにライセンス供与している。SGIはしばらく前から、自社のワークステーションをMIPSからItanium 2に切り替えたいと考えている。このIntel製の64ビットプロセッサはパフォーマンスに優れており、世界最大のチップメーカの後ろ盾があるからだ。

 その他の64ビットアーキテクチャは、市場の変化の犠牲となって既に死に絶えている。Digital Equipment Corp.のAlphaプロセッサは1992年のリリース時点で世界最速だったマイクロプロセッサであり、1990年代の間は、DECの頑健なワークステーションCPUとして生き延びていた。しかしその後、CompaqがDECを買収し、続いてHPがCompaqを買収した。とうとう昨秋、HPはAlphaプロセッサの生産ラインの停止を発表した。同社は、AlphaプロセッサがHP独自のPA-RISCチップに取って代わったのと同様に、AlphaベースのシステムからItanium 2システムに切り替えていく予定である。

 これらのアーキテクチャが現場でどのくらい受け入れられているか興味があるところだが、残念ながら、これらの64ビットアーキテクチャを現在使用しているワークステーションの比率を示す市場分析は見当たらなかった。

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