ITILはバイブルのようにして学ぶものじゃないInterview(2/2 ページ)

» 2005年05月16日 20時18分 公開
[聞き手:堀哲也,ITmedia]
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ニウスタッド 基本的には、コミュニケーションの問題にあります。企業は実現したいことがあり、それをITに適用するため、一種の変換を図らなければなりません。それはある種、翻訳作業のようなものといえるかもしれません。ところが、企業はなかなかこれが上手くできませんでした。

 どの企業も、その企業なりに「プロセスはこうあるべきだ」という解釈をもっているものですが、それをITへ変換することができずに失敗してきた経験を多々持っています。そこで、企業はIT化しやすくするコンセプトはないか、いろいろ探していたのです。そこにITILが登場してきて、ITの効率化に大きな可能性を示してくれている。これをやっていけば、物事が上手く流れる、と企業は見出してきたのです。ITILが成功したという背景には、これまで多くのプロジェクトで失敗してきた経験があるのです。

ITmedia 具体的に、どのようなコンセプトが書かれているのでしょう?

ニウスタッド ITILは考え方と思ってください。ITILにはこういうことが書かれているべきだ、こう記載すべきだ――などの議論もありますが、まずは、本を読めば分かっていただけると思います。

 ただ、読むにしてもバイブルのように読んではいけません。実際に現場で上手く動くように考えて読む必要があります。それぞれの組織によってやり方は変わってくるわけですから、書籍の中に登場する例を自分の会社に当てはめると、どのような意味を持っているのか、一歩進んで捉えようとする思考が大切です。それを考える上で、コンサルティングや教育プログラムを提供するコースプロバイダに相談するといった方法もあります。

ITmedia これからITIL導入に取り組もうとする企業にアドバイスはありますか?

ニウスタッド ITILを導入するといっても、全部をいっぺんに適用するというものではありません。どこから始めるか考えなければなりません。ヘルプデスクから始めることもあれば、相関関係のないプログラムがバラバラに散らばっているから、そこを整理するためにITILを利用するといったやり方もあります。

 まずは導入例を勉強するところから始めるとよいと思います。大企業ばかりでなく中小企業の事例もあります。コンサルティング会社の中にはエデュケーションを提供しているところもありますので、それを利用するのも1つの手です。

ITmedia ITILを導入して、失敗した例はないのでしょか?

ニウスタッド ありません(笑)。ただ、1ついえるのは、オランダのようにITILにある程度歴史がある国では、うがった見方をする人たちも出てきました。そのような人たちは、「コストは削減したけどすべての問題から開放されないじゃないか」と言います。それはその通りです。ITILはすべての問題を解決するためにあるわけではないのですから。

 こういった現象が起こるのは、準備が足りないからです。ITILを導入する前には、現場レベルまでしっかり教育をしなければなりません。ITの責任者は、現場の教育をする前に、導入に熱心になってしまう場合があります。それでは、現場は何をしたらいいか分りません。ITIL導入に失敗するところは、このようなケースが多いと思います。

ITmedia まだITILに日の浅い日本は、教育フェーズにあるということになりますね。

ニウスタッド 日本でも数年前に日立、NEC、NTT、ソニーなどといった大企業が興味を示していただき、教育を受講していただきました。また、ITIL資格の受験者は大きな勢いで増えています。EXIN社の数字になりますが、2003年と2004年の比較で受験者はほぼ倍になっています。もともとは欧州で始まったものですから、当社のビジネスも当初は欧州が100%でした。しかし、現在では北米が3分の1になり、アジアのビジネスも16%まで拡大してきました。今後、アジアは30、40%にまで伸びていくものと思っています。

 幸いにも日本では、「Introduction for ITIL(ITIL入門)」が翻訳されています。それからファンデーションの教育コースを取っていただければ、なぜITILか、どうやってITILを導入していくかの基本的なことが分かります。まずはこれを受講していただいて納得した上で、実際の導入に向かうことができます。

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