LinuxとRACで急成長に対応したデアゴスティーニ

ミラクル・リナックスはオープンソースソフトウェアとの組み合わせを重視するなど今後の戦略を紹介した。また、ディアゴスティーニの事例を紹介している。

» 2005年07月22日 04時51分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 ミラクル・リナックスは7月21日、記者向けのブリーフィングを行い、オープンソースソフトウェアとの組み合わせを重視するなど、今後の戦略を紹介した。また、ユーザー事例を交えて、ミッションクリティカルな環境へのLinux導入が進んでいることをアピールしている。

 事例として紹介されたのは、分冊百科市場で33カ国、世界市場で50%を超えるシェアを持つDeagostiniの日本法人、デアゴスティーニ・ジャパン。同社のビジネスの特徴は、「創刊号を購入してもらうことにすべてを賭ける」点にあるという。1冊目以降は定期購読となり、読者がすべてをそろえようとすれば、結果として大きな収益を見込むことができる。

 2005年創刊の「和風ドールハウス」は創刊号が11万部。「そーなんだ」は同65万部と非常に人気も高い。そのほか、「週刊 ガンダム・ファクトファイル」など、現在70タイトルがラインアップされている。

 急速に売り上げが伸びる中で、顧客へのサービスを維持、向上させるためには、自社の「定期購読管理システム」の拡張性と信頼性を強化する必要があった。そこで、データベースにOracle RAC(Real Application Clusters)を採用し、スケールアウト型の柔軟性のあるシステムの導入を検討した。この時点でOracle DBと32ビットのWindowsという環境であったため、当初は、Windows Server 2003とRACの組み合わせでのシステム拡張を考えたという。

 だが、導入を担当したシステムインテグレータは、「RACの性能や特徴を生かすためにはUNIX系のOSの方が適している」とアドバイスした。結果として、Linuxベースの64ビット環境でのシステム構築を決めた。「64ビットOSの性能を生かせる身近な分野がデータベース周りであること」も再確認することになる。

 また、RACを上手に使うという意味でも、Linuxの方がWindowsよりも効率がいい面がある。RACの特徴は、キャッシュ・フュージョンと呼ばれる技術により、複数台のサーバのディスク領域を1つの大きな仮想ディスクとして認識できる点にある。つまり、ディスクが個別のサーバマシンと直接ヒモづかない状態を作れるため、1台のサーバが落ちたとしても稼動が止まることはない。ノードの追加も、システムを止めることなく行うことができる。

 この特徴を生かすと、コストの低いサーバを複数台並べ、ハイエンドマシン並みの性能を実現することも可能になる。多数のサーバを並べる場合、Windowsでは1台ごとにライセンスがかかってしまうが、Linuxならばかからない。そのコスト効果が、Linuxを利用するメリットの1つだ。

 ディアゴスティーニでのコスト効果について、もし仮に、Windowsベースで構築した場合はOSの価格は70万円×2台で140万円だったが、実際には、MIRACLE LINUXを採用して、6万円×2台の12万円で済んだ。これだけでも、128万円という大きな価格差が出た。また、Windowsではライセンス費用がクライアントごとにかかるが、MIRACLE LINUXではそれがかからないこともコスト面でのメリットとして紹介されている。

ミラクル・リナックスの今後の戦略

 この日は、ミラクル・リナックスの佐藤武社長が、「Linuxとオープンソースソフトウェアの組み合わせでビジネスを拡大していく」と今後の戦略について話した。SambaやOpenLDAP、Apache、JBOSS、SE Linuxなど、オープンソースを利用しようとするユーザーに対して、積極的に製品を提供していくという。

 一方で、従来どおり、「Linuxをミッションクリティカルの分野で」という取り組みにも引き続き注力する。そのために、サポート体制のさらなる強化を図る考えだ。また、製品戦略では、Linuxのカーネル2.6に対応したAsianux 2.0が当初よりも1カ月遅れて8月26日に完成予定となり、ミラクルとしては、「MIRACLE LINUX V4.0」を11月上旬に出荷することが明らかにされている。

「少数精鋭のスモールグレートカンパニーを目指す」と話す佐藤社長。

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