LenovoとHP――単純な比較はできない

OPINION:Lenovoでは買収に伴う大きな混乱もなく、その航海は順調なように見える。一方、HPではフィオリーナ氏の壮大な失敗の後を引き継いだマーク・ハード新CEOが、成功への針路図を作成しようとしている。

» 2005年08月22日 14時33分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 最近のLenovoをめぐる良いニュース、そしてHewlett-Packardに(HP)関する悪いニュースを受け、社会主義国家中国の企業によるIBMのPC事業部の買収とHPによるCompaqの買収を比較し始めた人もいる。

 カーリー(フィオリーナ氏)が報いを受けたのを見るのは愉快だったかもしれないが、そういった単純な比較は慎むべきである。それは、Lenovoとは違って数多くの困難に直面しているHPの新しいトップ、マーク・ハード氏にとってもフェアなことではない。

 IBMのPC事業の利益率のレベルは、同社がウォール街に示したいと考えているイメージにそぐわなくなったとはいえ、Lenovoは好調な事業を買収したのだ。Lenovoは以前からIBM向けの製品を生産しており、また両社の間には重複する製品が少ないため、IBMのスタッフはそのままLenovoに移籍することができた。加えて、Lenovoは本社もニューヨークに移転した。

 LenovoがIBMのPC事業を買収した理由は健全なものだった。ほぼ一夜にして世界第3位のPCメーカーに変身するというものだ。こういった事業拡大を独力で達成するのは不可能だとLenovoは考えたのかもしれない。Lenovoは、世界で最も認知度が高く、最も信頼されているPCブランドも手に入れた。

 一方、CompaqとHPの場合は、合併前から両社とも混乱状態にあり、合併によって混乱がさらに拡大する結果になった。数万人規模のレイオフも伴った。HPは基本的にCompaqの名前を買ったが、合併前のCompaqの従業員数を上回る人員を削減したのだ。

 HPは以前から優れたブランドを持っていたが、第2のブランドを手に入れた結果、2つのブランド戦略に伴う問題も抱えることになった。HPは、自社の製品ラインと競合する製品を手に入れたのだ。フィオリーナ氏はどういうつもりでこのような愚策を考え出したのか、筆者にはまだ分からない。

 ある意味では、LenovoがCompaqを買収しなかったのは残念だったと言える。だが、脱線するのはよそう。

 HPがCompaqを買収した理由は、市場シェアを拡大するためだった。しかし苦境に陥った企業が同様の立場にある企業を買収した場合、必ずと言っていいほど失敗に終わるのが常だ。

 フィオリーナの後任として選ばれたのは、知名度の低いNCRのマーク・ハードCEOだった。同氏は就任してまだ日が浅く、多数の困難を抱えているため、まだHPを大きく立て直すまでには至っていない。筆者はハード氏と面識はないが、この間の報道や、NCRの社風およびハード氏の指揮下での同社の素晴らしい業績などから判断すると、HPの取締役会は適切な人選をしたと思う。

 カーリーはHPの社風改革に熱心だったが、ハード氏は競争力を高めること、そして企業市場での地盤を強化することを主眼に置いているようだ。この目標を達成するには時間がかかるだろう。

 比較という点で言えば、筆者はHPの最近の業績が芳しくないことに驚いていないが、Lenovoが成功したと断定するのも時期尚早だ。IBMのPC事業では、今後数年間の製品計画が既に準備されており、また元IBMのスタッフも名刺が変わっただけなので、同事業が今後も順調に進んだとしても不思議ではない。今のところ、Lenovoの傘下に入ったことでIBMのPC事業に(少なくとも社外的に)どんな影響が出るのか予測するのは難しい。

 現時点の状況だけで判断する限り、Lenovoによる買収は大成功だったと言える。しかし、それは時というテストに耐えられるだろうか。北京政府も一枚かんでいるLenovoが賢明な針路を選択すれば、この買収はIT企業の大規模合併の数少ない成功例となるだろう。しかし経営の舵取りを誤れば、IT企業の大規模合併の典型例になるだろう――HPとCompaqの合併がそうだったように。

 Lenovoはきっとうまくやるだろうが、合併後の経営判断の成果が市場に現れるのには、たぶん何年もかかるだろう。

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