Linuxホーム・オフィスの賢い運用法――その3――(3/3 ページ)

» 2005年08月24日 14時37分 公開
[Corinne-McKay-and-Daniel-J.-Urist,japan.linux.com]
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バックアップ・ソフトウェアの選定

 システムの完全なコピーを作る場合は、Mondo Rescueなどのプログラムが優れている。dump、tar、cpioなど、以前からあるユーティリティも使えるが、使い勝手は落ちる。いずれのプログラムも、バックアップ媒体を選ばない。

 一方、ユーザー・データの無人バックアップについては、簡単でよい方法はあまり多くない。筆者らのホーム・オフィスでは、Sitbackというアプリケーションを使用している。これもバックアップ媒体を選ばない。Sitbackの優れた点としては、業務時間外のバックアップが簡単にスケジュールできることと、バックアップの成否を確実に通知することが挙げられる。また、tar形式でアーカイブを作成するので、Sitbackがなくてもアーカイブを読み取ることができる。これは、プロプライエタリのバックアップ・ソフトウェアでよく問題になる点である。筆者らは、午前3時に実行するようSitbackをスケジュールし、1枚のCD-RWに収まるようにデータ量を抑えている。毎晩完全バックアップし、増分バックアップは行っていない。ラベルに曜日を記入した7枚のCD-RWが用意してあり、毎朝ディスクを入れ替える。しかし、Sitbackは直接暗号化を扱うことができないので、機密データを扱う業務には向かない。

 ユーザー・データのバックアップには、DAR(Disk Archive)とスケジュール用プログラムSaraBとGUIフロント・エンドKDarの3つ組を使う方法もある。1枚の光メディアには収まりきらず完全バックアップと増分バックアップを組み合わせる場合や、暗号化してバックアップする必要がある場合にはよいだろう。スケジューラSaraBは機能が高く、さまざまなバックアップ・スケジュールと自動障害通知機能をサポートしている。KDarの復元機能は使いやすく、データの復元操作を行うべき同僚が技術に疎い場合は特に重宝する。しかし、無人バックアップのスケジュールはできない。また、DAR スイートではテープの使用は想定されていない。さらに、毎日同じ方法で取られたバックアップからディスク1枚分のデータだけを抜き出したい場合は、Sitbackよりも手間がかかる。

 MySQLやPostgreSQLなどのRDBMSのデータを保存する場合は、バックアップ方法に関わらず、特別な手順を守る必要がある(普通は、データベースをダンプするか、サーバーをシャットダウンする)。

 オフサイトのバックアップも検討しておいたほうがよい。丹念にラベルを貼って整理されたバックアップ・ディスクも、家主から締め出されたり、洪水で家に入れなくなったら、さして役には立たないからだ。「オフサイト」には、いろいろな形態がある。コロケーション・サービスにマシンを預けHDDをバックアップする、最も重要なデータをインターネット・ストレージ・サービスにオンラインで保管する、バックアップ・ディスクを自宅以外のどこかに保存する、などがある。秘匿の必要のないデータであれば、ディスクを友人宅に置くという単純な方法もいいだろう。クライアントの機密データの場合は貸金庫がよい。長期間の保管が必要な場合は、媒体のメーカーが設定している推奨保管条件に合わせるか、さもなければデータ・ストレージ・サービスを利用する。バックアップ媒体の中には、特定の条件で保管しなければならないものがあるからだ。オフサイト・バックアップに機密情報が含まれている場合は暗号化すべきである。

 バックアップの体制が整ったら、必ずテストしてみること。バックアップのテストほど退屈なものはない。しかし、1か月かけて作成した成果を失い、そのプロジェクトの納期は1時間後、おまけにラベルを丁寧に貼って準備したバックアップ・ディスクがすべて空っぽだったとしたら――そんな悪夢が現実になることほど怖いものもないのだ。以下、バックアップをテストする際の留意点をいくつか挙げておこう。

 まずはじめに、テスト・スケジュールを決める。たとえば、毎月最初の営業日にバックアップをテストする。バックアップの数が多い場合は、無作為にバックアップを選び、読み込んでデータが正しいことを確認する。実践的予防薬の処方も挙げておこう。媒体にエラーが見つかった場合は、その媒体を直ちに破棄すること。決して、エラー・メッセージをバックアップ・プログラムの誤動作のせいにしてはならない。エラーはすべて原因を究明し改修すること。バックアップのテストは優先事項である。今日が納期の仕事を間に合わせるのも緊急だが、おそらくは、バックアップ媒体上の1か月分のデータは、業務にとってさらに重要性が高い。

 バックアップ体制が整備されていれば、HDDから何かをこするような不吉な音が聞こえてきても、以前よりも容易く仕事に集中できるだろう。あらかじめ少し手をかけておくだけで、膨大な時間と経費を費やさずに済むだけでなく、本当の災害が発生しても事業自体は救われるだろう。

まとめ

 Linuxホーム・オフィスの運営で最も重要なことは、コンピュータ設備に対してプロとして臨むことである。コンピュータを業務上の生産設備と考えるのだ。決して、すべてお任せの家庭用娯楽システムを業務に流用しているなどと考えてはならない。自分の仕事にプロとして臨むように、ホーム・オフィスに対してもプロとして臨めば、システムはこれからも順調に稼働し、長期にわたって役立ってくれるだろう。

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