より高みに とうとう姿を見せたターボリナックスの新OS

ターボリナックスは、同社のデスクトップ向けLinuxディストリビューションの新版となる「FUJI」のスニークプレビューを関係者向けに開催した。

» 2005年09月21日 17時53分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ターボリナックスは9月21日、同社のデスクトップ向けLinuxディストリビューションの新版となる「FUJI」(コードネーム)のスニークプレビューを関係者向けに開催した。同社の代表取締役社長、矢野広一氏は株式公開を果たしたことについて触れ「これまでは最短距離でビジネスをできなかったもどかしさがある。今回の上場がよりよい製品を作っていくスタートになる」と述べた。

「10Dがエポックメイキングなものだったとするなら、FUJIは扉の向こう側に連れて行ってくれるものと後に言われるようなものにしたい」と矢野氏

 来月正式に発表予定のFUJIは、2003年10月に発表した「Turbolinux 10 Desktop」以来のメジャーバージョンアップとなる製品。これまで同社のデスクトップ向けLinuxディストリビューションのコードネームは「Monza」「SilverStone」「Suzuka」とFIサーキットの名前が冠されていたが、今回のFUJIというFIサーキットは存在しない。このネーミングの理由をターボリナックスでプロダクト・マーケティングを手がける久保和広氏は次のように説明する。

「より高みを目指すという意味で富士山を意識したところもある。F1つながりで言えばFUJIから富士スピードウェイが連想されるが、F1サーキットから富士スピードウェイのようにやや大衆化した場所にLinuxが進出してきたととらえることもできるかもしれない。次期バージョンでは甲州街道など公道がコードネームになるのかも」(久保氏)

Windowsアプリケーションの動作も

 今回の製品で注目されるのは、同日に発表された「David」の搭載。DavidはLinux上でWindowsアプリケーションを動作させるソフトウェアで、フィリピンのSpecOps Labsが開発している。ターボリナックスはSpecOpsと国内における独占販売契約を締結、FUJIに搭載する。

 このDavid、Windowsエミュレータの「WINE」をベースとして開発されているもので、動作させるWindowsアプリケーション共通モジュールと、アプリケーションごとに異なるプラグイン型モジュール、専用のファイルマネージャなどで構成される。WINEベースだけに基本的にはそこで動作するソフトウェアもそれほど変わらないと思われるが、デモでは、Microsoft Office 2000のWORD、EXCELをLinux上で動作させたほか、WindowsアプリケーションのインストールCDからアプリケーションをインストールしようとする様子が示された(ホームディレクトリに.wineディレクトリが存在し、その下に「Program Files」や「WINDOWS」といったフォルダが確認できた)。

EXCELを起動しているところ
Microsoft Office 2000のインストールCDをCDドライブに入れると、オートランでインストーラが立ち上がった

 ターボリナックスではDavidによって既存のWindows資産も有効活用できるとし、いずれはスタースイートなどMicrosoft Officeのオルタナティブに乗り換える移行期間のつなぎにこうした機能が必要であると話している。

プラグインで必要な商用アプリケーションを

 また今回、新しいビジネスモデルとして機能拡張をプラグインで提供する形態について触れた。これは10Dのときにも派生物として「Turbolinux 10 F...」や「ターボリナックス ホーム」、さらには「Turbolinux Personal」、「Turbolinux Multimedia」などが出てきたように、用途別にアプリケーションを別途提供するというもの。10Dのときは別製品としてパッケージ販売されていたが、今回から用途別の商用アプリケーションを簡単に購入、追加できる方法を用意するというものだ。例えば今回、PowerDVD for Linuxなどはこの形態で別途提供される見込みで、そのほかに先日のソースネクストの発表会でも名前が挙がっていたマクロ移管ツールなども提供予定だという。なお、日本語入力環境のATOKやオフィススイートの「スタースイート 8」などはこの形態ではなく、標準パッケージに含まれるようだ。日本語環境については「間違いなく一歩進んだものとなる」(久保氏)としているだけに、何らかのサプライズも用意されている可能性もある。

 目立たぬところではパフォーマンスも着実に向上しているようだ。特に起動時間の短縮には力を入れているようで、ターボリナックス代表取締役技術統括兼CTOの谷口剛氏によると「10Dの半分程度(50秒程度)」にまで短縮されたようだ。そのほか、セキュリティ面でもファイル/フォルダの暗号化が行われる。これはKDEでも提供されているが、「KDEのものは幾分不安なところがあったため、独自で開発した」(久保氏)という。

 そのほか、設定周りをKDEのコントロールセンターに統合したほか、これまで「Turboアップデート」と呼んでいた機能を拡張した「Turboプラス」も用意される。Turboプラスでは、パッチの適用やアプリケーションの追加・削除のほか、Adobe Acrobat Readerなど商用のソフトウェアの更新も管理可能だという。また、上記のプラグインについてもこちらで入手できるようになるようだ。

 同製品はTurbolinux 10 Desktopと同様、サポート件数などの異なる2種類のパッケージが用意される予定。インストールCDは2枚で、デスクトップ環境はKDE。価格は未定だが、「10Dより少し高くなる」(久保氏)としている。また、正式な製品名も未定。来月正式な製品発表を行い、11月中旬にリリースされる予定だ。

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