モバイル環境の変化がもたらす快適でセキュアな次世代の移動オフィス次世代のITオフィス環境を考える(1/2 ページ)

ITを利用すれば、最小限の装備で外出先を仕事場に変えてしまうことができる。これを移動オフィスと呼ぶことにして、その構築に必要な知識や技術を考えてみよう。

» 2005年10月27日 08時00分 公開
[下村恭(ハンズシステム),ITmedia]

 ここ数年の間に、携帯性に優れたB5ノートパソコンに無線LAN機能が内蔵され、さらに安価に提供されるようになってきた。このことが、多くのビジネスマンの仕事のスタイルを変え始めている。例えば営業職では、外出先で顧客の要望する情報を即座に調べ、注文をその場で処理して在庫を押さえる、ということをごく普通に行うようになってきている。

 従来から保険の外交職などでは専用の携帯端末を利用し、顧客の目の前で保険支払いのシミュレーションを行うといった利用を進めてきたケースもあった。契約した内容や業務日報などを端末に入力し、電話線を使ってセンターに接続することで、出社することなく業務を遂行できるような仕組みも作られてきた。宅配業などでは、バーコードを読み込んで処理する携帯型の端末を利用し、小型のプリンタから伝票やシールを印刷するというシーンも、いまや当たり前に見られるようになっている。

 ただ、こうした従来の携帯型業務端末はその業務に特化した「専用品」が多く、一般に販売されているノートパソコンと違って比較的高価で入手困難なものがほとんどだ。部署単位やプロジェクト単位、ましてSOHOなどではなかなか利用できないものであった。

一般的な機器で可能になった移動オフィス

 だが前述したように、近年のノートパソコンの小型高性能化や、第3世代携帯電話の普及、公衆無線LANの普及などで、状況が大きく変わってきている。

 その第一の理由が、ノートパソコンの高性能化である。低消費電力化が進み、バッテリーの性能も向上したことで、高性能のパソコンを長時間にわたって電源のないシーンで利用できるようになっている。このおかげで、朝出かけてから夕方帰るまで、電源なしでパソコンを利用できる環境が出来上がった。

 外出先で仕事をする=移動オフィスを実現しようとすると、どうしても必要になるのがネットワークへの接続手段だ。

 これも近年ではPHSや携帯電話の通信スピードが高速化され、128kbpsや386kbpsといった、メールやWebページへのアクセスには十分な速度での接続も可能となった。また、まだまだ拠点数は少ないとはいえ、公衆無線LAN(いわゆるHotSpot)が利用できる場面も増えている。

 このように、PHSや携帯電話とノートパソコンを一緒に持ち歩くことで、日本全国(場合によっては世界で)場所を気にすることなく、ネットワークアクセスが可能となる。つまり、移動オフィスの最低限の要件ともいえるパソコンと通信手段を、一般的な商品だけで実現することが可能となっている。もちろん、無線LANが利用できれば、ブロードバンド接続可能な移動オフィスがすぐに手に入る。

 しかし、これだけでは移動オフィスが実現できたとはいえない。なぜだろうか。

移動オフィスに欠かせない重要なキーワード

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