モバイル環境の変化がもたらす快適でセキュアな次世代の移動オフィス次世代のITオフィス環境を考える(2/2 ページ)

» 2005年10月27日 08時00分 公開
[下村恭(ハンズシステム),ITmedia]
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移動オフィスに欠かせない重要なキーワード

 ノートパソコンと通信手段というハードウェア(製品)は、移動オフィスを構築する上で必要不可欠といえるが、それだけでは十分ではない。一方で、ソフトウェア的な部分でも必要不可欠なものがある。

 その最重要キーワードは「セキュリティ」だ。最も基本的な部分は、持ち歩くノートパソコンのセキュリティだろう。重要な情報が詰まったノートパソコンを紛失したり盗まれたりする可能性があるからだ。

 従ってこれからのノートパソコンには、セキュリティ機能の充実が求められる。具体的に言えば、指紋認証に代表されるような生体認証機能は必須だろう。ここ数カ月以内に発売されている新機種のほとんどは指紋認証を備えているので、こうした機種を選択することが今すぐに実行できるセキュリティ対策といえる。

 とはいえ、指紋認証機能が付いているノートパソコンだから安心というわけではない。ログオン時の認証を指紋認証に変えただけでは、パスワードの盗難を防ぐだけで、大して意味がないことを認識しておくべきだ。これだけでは極端な話、ハードディスクを取り外してほかのパソコンに接続すれば、ノートパソコンにログオンしなくても、ハードディスク内の情報にアクセスすることが可能になってしまう。ログオンできなければ中身が安全とは考えない方がよい。

 そこで重要になるのが「暗号化」だ。指紋認証が一般的でなかったころの暗号化では、暗号化と復号化(暗号を解除すること)の際にパスワードを必要とした。このパスワードがよく忘れられたり盗まれたりと、セキュリティの弱点となりやすかった。だが、指紋認証を利用することでパスワードを使わない暗号化が可能となり、より安全性が高められたわけだ。

 個人情報保護法を持ち出すまでもなく、持ち歩くノートパソコン内の情報には、ログオン認証や暗号化で、しっかりセキュリティ対策を施す必要がある。

通信上のセキュリティ対策も必要

 移動オフィスに通信手段が必要な主な理由は、社内にある情報にアクセスしたり、社内へ情報を伝達する必要があるからだ。そこで考慮しなければならないのが、通信の安全性である。移動オフィスから社内にアクセスする場合、一般的にはインターネットを通じて接続することになるだろう。その際に流れる情報を保護するために、通信上の暗号化も必須となる。

 通信の内容を保護するための方法はさまざまあるが、いまや特殊な技術や製品は必要ない。PPTP(Point to Point Tunneling Protocol)やIPSec(Internet Protocol Security)といった、インターネットで一般的に利用されているVPN(Virtual Private Network)技術の利用はその一例だ。また、社内ポータルへのアクセスをHTTPS(Hyper Text Transfer Protocol over SSL)経由で暗号化したり、さらにアプリケーションやデータの種類によってはHTTPS経由のWebサービスを利用するなど、既存の一般的な技術をうまく利用することで、移動オフィスから社内へのアクセスをより安全性の高いものにできる。

 市販のブロードバンドルータでもVPNサーバの機能を持つものもあり、Windows OSに標準で搭載されているVPNクライアント機能と組み合わせれば、市販の製品だけでVPNを構築することも不可能ではない。これからは、ますますこのような使い方が普及していくに違いない。

 これからの移動オフィス環境は、安全性の高い通信手段や、パソコン内の情報をしっかり保護できる仕組みが整ったおかげで、安心して仕事に集中できるものになっていくだろう。加えて、公衆無線LANに代表されるような、無線でのブロードバンド接続が普及するにつれて、VoIPといった音声通信も統合されていくに違いない。外出先の公衆無線LANに接続しているときでも、内線電話を受けることができ、TV電話機能を使って会議を行うなど、社内にいるときとまったく同じように仕事をすることも不可能ではなくなる。

 顧客先での仕事に関しては、自社と顧客先の双方の合意に基づいて仕事の方法を変えていく必要もあるだろう。まだまだ一般的な複写伝票はその一例だ。移動オフィスとして持ち運ぶ機材に複写伝票に対応したプリンタは難しい。PDF化したファイルをメールで送るといった電子的な手段に変えるなど、ペーパーレスへの努力や工夫も大事だ。

 次世代の移動オフィスを支える技術は整ってきている。今すぐにでも、セキュリティ面にも配慮がなされた安心して使える移動オフィスの構築は可能だ。

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