Googleは前途洋々たる勝ち馬

オープン・ソフトウェアを推進しているGoogleは、IT業界の様相を変える動きを見せている。Googleの財政基盤の概要について、Microsoftとの比較の中で理解しよう。

» 2005年11月04日 03時02分 公開
[Lauren-Rudd,IT Manager's Journal]

 オープンソース・コミュニティーにはさまざまな価値があるものの、現在のソフトウェア業界はMicrosoftが牛耳っており、その状況から完全に解き放たれることは、当分は見込み薄である。だが、Googleのおかげで、その日が来るのが早まる可能性はある。オープン・ソフトウェアを推進しているGoogleは、Microsoftに対する包囲網を形成しつつある。そして、その包囲網をさらに狭めながら、IT業界の様相を変える動きを見せている。

 Googleは、企業規模はMicrosoftよりはるかに小さいものの、IT業界に対するインパクトには目を見張るものがある。同社の業績は、Microsoftが成長の初期段階だったころを凌駕している。しかも、Googleが次々と繰り出す動きの影響力は非常に大きく、Googleがいつの日かMicrosoftに取って代わる存在になるかもしれないという説の信憑性はかなり高まっている。したがって、Googleの財政基盤の概要について、Microsoftとの比較の中で理解しておくことは、すべてのITマネージャーにとって有益であろう。

 Googleの最新の収益報告書は、9月30日で終了した第3会計四半期のものである。それによると、同社の純利益は3億8100万ドルで、1株あたり1.32ドルだった(希薄化後発行済株式数は2億9000万株)。売上高は15億7800万ドルで、前年同期の8億600万ドルに比べて96%増である。これは、広告主の数やパートナー・ネットワークが世界規模で拡大したことや、製品の改良によるものだ。

 営業利益は5億2900万ドルで、売上高の33.5%にあたる。フリーキャッシュフローは3億5400万ドルだった。フリーキャッシュフローとは、事業活動によって生じたキャッシュから設備投資を差し引いたものであり、企業の拡大のために使える自由な資金を表すことから、資金の流動性を測る重要な指標である。また、Googleの手持ち資金は76億ドル強で、そのうち43億ドルは、最近の株式発行によって得たものである。

 一方のMicrosoftは、9月26日に終了した2006会計年度の第1四半期の利益は31億4000万ドル(1株あたり29セント)で、前年同期の25億3000万ドル(1株あたり23セント)よりも上昇している。売上高は、前年同期は91億9000万ドルだったのに対し、今回は97億4000万ドルだった。この四半期末での営業利益は40億4600万ドルで、売上高の42%にあたる。フリーキャッシュフローは約13億9000万ドルだった。また、この四半期末のキャッシュポジションは400億ドル強だった。Microsoftの従業員数は6万1000人である。一方のGoogleは5000人だ。

 Microsoftは、2006会計年度全体の利益は1株あたり1.26〜1.30ドルと見込んでいる。これには、RealNetworksとの和解に関連する2セントの特別費用も含まれている。年間の売上高は、当初の予測どおり、437〜445億ドルと見込んでいる。

 Googleの2005会計年度の第3四半期の売上高は、Microsoftの2006会計年度の第1四半期の売上高のわずか16%にすぎないとはいえ、Googleは公開企業になってからまだ日が浅いということを考慮すると、この成長は注目に値する。だからこそ、Microsoft会長のビル・ゲイツ氏は、Googleが熾烈なライバルになったと認めている。

 MarketWatchによると、ゲイツ氏は、イスラエルの新聞Yediot Ahronot紙に対し、「われわれはGoogleを恐れてはいないが、われわれの間には激しい競争がある」と語ったという。

 ゲイツ氏は、Googleを恐れていないという大胆な発言とは裏腹に、少なからず心配を抱いているのは間違いない。Googleは、Microsoftにとって、これまでのうちで最も恐るべき競争相手となった。株式の時価総額(株価に発行済株式数を掛けた値)は、Microsoftの2660億ドルに対し、Googleは990億ドルである。だが、Nielsen//NetRatingsのデータによると、Googleは、米国内のインターネット検索のシェアの約半分を占めており、MicrosoftとYahooのいずれもはるかに凌駕している。

 Googleの今後の財政力の強さを予測する最適な方法の1つが、同社の内在的価値の見積もりである。内在的価値とは、将来の予測利益の現在価値から長期借入金を減算した値を、1株あたりで求めただけのものである。直近12カ月の利益である13億ドルを初期値として使用して、33%という成長率(ウォール・ストリートの5年の平均成長率)で成長するものとし、さらに割引率が11%(S&P 500の平均のリターン)とすると、同社の今後10年間の利益の正味現在価値は400億ドルである。

 10年目を超えて、利益の成長率が6%に下がり、割引率が12%に上がったとした場合、正味現在価値は1400億ドルである。2つの値を足して、発行済み株式数の2億7900万株で割ると、1株あたりの内在的価値は643.83ドルと求まる。一方、現在の株価は353.07ドルだ。ここからわかるのは、Googleの株式にはかなりの潜在的価値が潜んでいるということだ。なお、Googleには、減算すべき長期借入金はない。

 株価収益率を使って検証してみよう。Googleの2006会計年度の利益は1株あたり8.30ドルとわたしは予測している。これに現在の株価収益率の77.94を掛けると、求まる株価は646.90ドルである。この結果は、先ほど求めた内在的価値とうまく合致する。はたしてこれは、Googleの株価は今後12〜18カ月で646ドルの範囲になるということだろうか。わたしの予測した利益が正しく、またGoogleの現在の株価収益率のレベルが変わらなければ、答えはイエスとなるはずだ。ともあれ、どのような測定にせよ、株価収益率が約78というのは高い値だ。

 では、以上のことから、何が言えるのだろうか。現在のウォール・ストリートでそのようなレベルの株価収益率になるのは、筋書きどおりに確実な成功を収める能力がある会社だということに対する揺るぎない信頼がある証だ。さらに、Googleの株式の時価総額の規模が倍増するにしたがって、Microsoftに暗影が投げかけられていく。一方、インターネット自体は、新たな機会が次々と生まれる新興市場である。したがって、この先も、Googleという勝ち馬に乗ることで、少なからぬ財が得られる。

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