「DellとAMDの物語」をAppleが変える?

AMDに気があるふりをしてIntelの反応を見る――それがいつものDellの駆け引きだが、今回は少々事情が違っているようだ。(IDG)

» 2005年11月22日 11時55分 公開
[IDG Japan]
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 米国では毎年この時期になると、空気が冷たくなり、ショッピングモールがにぎわってくる。そしてDellがPCやサーバにAMDのプロセッサを採用するかもしれないという噂が流れ出す――少なくとも、そういうふうに見える。

 だが今回、そうした報道が流れてきたのは、両社がターニングポイントにさしかかっているときのことだ。Dellのこの2四半期の業績は米コンシューマー事業の低迷に足を引っ張られて期待を下回っており、また同社はさえないサーバ事業の業績にますます向けられている疑問に対処しているところだ。Opteronプロセッサの立ち上げから2年半、AMDベースの製品はFortune 100社のサーバルームで利用されており、ここ数カ月、米小売店ではIntelベースの製品よりも売れている

 こうした状況の中、台北のEconomic News Dailyは11月21日、Dellが台湾のデスクトップ・ノートPC、サーバの製造パートナーに、AMDプロセッサを使ったDellシステムの大量注文に備えるよう指示したと報じた(関連記事参照)。DellがまたIntelから譲歩を引き出すためにAMDに関心があるふりをしている可能性は高いが、もしも報道が正確なら、DellがAMDに新たなレベルの関心を抱いていることの表れだとアナリストらは話している。

 アジア地域のDellの広報担当者はこの報道を「噂であり憶測だ」と一蹴した。米国の広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られていない。AMDの広報担当者はこの報道に関するコメントを拒否した。

 Dellのケビン・ロリンズCEO(最高経営責任者)は2004年11月に、同社はAMDプロセッサベースの製品をリリースする方向に傾いているとInfoWorldに語った。同氏は、AMDにはこの市場でアドバンテージがあり、Dellは今後いつかAMDプロセッサを採用するだろうと話した。

 だが同氏は2005年2月に、Intelがデュアルコアプロセッサのロードマップを発表したことで、DellのAMDへの関心はなくなったと語った。AMDを含め多くの観測筋は、IntelがDellとの独占契約を失う可能性にどう反応するかを見るため、DellはしばしばAMDを持ちだして探りを入れているのだと考えている。

 「これはIntelから譲歩を引き出すための、いつもの見事な作戦だ」とInsight 64の主席アナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は指摘する。「AMDを採用しないことで、Dellは何年も多額の利益を得てきた」

 だが、Dellの最近の業績を考えると、同社はHewlett-Packard(HP)などのOpteronサーバやAthlon 64デスクトップに売り上げを奪われているのかもしれない。何年もの間、Dellの幹部はAMDを持ちだすたびに、「Intelオンリー」のスタンスのために売り上げが落ちたら、事業が打撃を受けないように、方針を変えなくてはならないだろうと述べてきた。

 それに、Intelはこのような駆け引きにうんざりしているかもしれないとThe Microprocessor Reportの編集長ケビン・クレウェル氏は指摘する。Intelにとって厳しかったこの12カ月、DellはIntelに忠実だった。Dellはたいてい、見返りとしてIntelから新プロセッサの価格と流通について有利な配慮を受けている。同様にDellがPC市場シェアでトップを握っていることから、Intelは自社のテクノロジーを幅広いPCユーザーに提供できる。

 だが今回、Intelには新技術を供給できるホットな新しいパートナー、Apple Computerがいるとクレウェル氏は言う。Intelは今、2003年のPentium M立ち上げ以来、最も重要な製品の1つ――Pentium Mのデュアルコア版「Yonah」――を準備しているところだ。AppleファンサイトThink Secretは先週、Appleが1月初めに、Yonahの正式発表と同時期に同プロセッサ搭載のノートPCを発表すると報じた。

 Appleの市場シェアはDellには遠く及ばないが、Appleには、Intelが切望している「音楽会社や映画会社との結びつき」があるとクレウェル氏は指摘する。

 AMDとDellのトップは最近、両社が協力する可能性は低いと語った。AMDの社長兼CEO、ヘクター・ルイズ氏は先週、2006年は市場シェアが拡大するだろうが、既存のパートナーとともに目標を達成すると金融アナリストに述べた。「当社の計画では、Dellの経営陣の決定は考慮に入っていない。だが、もしもその機会があれば対処できる」とアナリスト向け説明会後の質疑応答で同氏は語った。

 Dellのマイケル・デル会長は先月Gartnerが開いたSymposium/ITXpoで、Intelは2006年に「性能の王者」の冠をAMDから取り返すだろうと語った(10月21日の記事参照)。「65ナノメートルプロセスでは、明らかにIntelの方が性能と電力管理においてリードしている。2006年の春と秋にAMDに非常に競争力があると思ったら、すぐにでもAMDの製品を採用するだろう」と同氏はこのとき話していた。

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