野村総合研究所が2010年までの情報セキュリティ市場の予測を公表した。
野村総合研究所(NRI)は12月7日、2010年までの情報セキュリティ市場の予測を公表した。
4月に全面施行となった個人情報保護法への対応を背景に、セキュリティ市場は2004年から2005年にかけて急成長した。しかしこれはあくまで「特需という一過性のもの」(NRIの情報・通信コンサルティング二部、上級コンサルタントの山本以誠氏)。ここに来て少しずつブレーキがかかり、需要に鈍化傾向が見られるという。
今後は、日本版SOX法や内部統制への対応、海外拠点へのセキュリティ展開などをドライバーとしつつ、堅調な成長が続くとしている。特に、日本版SOX法への対応という観点からは、アクセスログ管理やメール管理といった情報保護対策に加え、大量の情報を保存し、管理するe-文書管理ソリューションが大きな役割を果たすことになりそうだという。
セキュリティ関連市場の予測は以下のとおり。
分野 | 2005年度 | 2006年度 | 2010年度 |
---|---|---|---|
企業向けウイルス対策ソフト | 300 | 325 | 446 |
コンシューマー向けウイルス対策ソフト | 299 | 351 | 562 |
情報漏えい対策ツール | 320 | 360 | 472 |
バイオメトリクス認証ツール | 128 | 158 | 242 |
セキュリティサービス | 1100 | 1140 | 1370 |
ただ、市場に幾つか懸念材料も見られると山本氏。供給側では、セキュリティ製品/技術のコモディティ化が進むとともに価格競争が激化。また需要側でも、セキュリティに対する投資マインドの冷え込みが見られるという。
例えばNRIセキュアテクノロジーズが実施した調査によると、「必要であれば積極的にセキュリティ対策に投資する」とした企業が35.1%であったのに対し、「できるだけコストを抑えたいので必要最小限の投資にとどめる」と回答した企業は54.6%に上った。セキュリティへの投資が必ずしも企業価値の向上や利益に結びついていないというのが企業の実感であり、これが投資意欲の減退、削減圧力につながる可能性があるという。
経済産業省ではこうした状況を背景に、セキュリティ対策を企業価値につなげることを目的に「情報セキュリティガバナンス」の確立に向けた取り組みを行っている。その中には、IR活動の1つとして「情報セキュリティ報告書」を公開するといった方策が含まれているが、「テーマが情報セキュリティであるだけに、どこまで細かく開示できるか、投資家にどこまで理解してもらえるかなどを考えていくとなかなか難しい。浸透するまでには時間がかかるのではないか」(山本氏)
むしろ、政府の調達要件に情報セキュリティを含めたり、違反する企業にはペナルティを設けるなど、より強力に引っ張っていく方法が必要ではないかとしている。
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