Oracleの新しい価格モデルにユーザーは冷淡

Oracleが先月発表したマルチプロセッサ向けの価格モデルは、異なるベンダーのプロセッサに対して個別の価格スキームを適用していることで、ユーザーにはあまり評価されていないようだ。(IDG)

» 2005年12月27日 12時08分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Oracleは先月、マルチプロセッサ向けの価格モデルを改訂したが(関連記事参照)、ユーザーはこの動きをあまり評価していないようだ。

 Oracleでグローバル価格/ライセンス戦略を担当するジャクリーン・ウッズ副社長は12月下旬の電話会見で、「この新モデルでは、異なるベンダーのプロセッサに対して個別の価格スキームを適用する」と説明した。

 7月に発表されたOracleの従来のマルチコア向け価格モデルは、すべてのハードウェアシステムに対して同じスキームが適用され、各プロセッサコアがシングルプロセッサライセンスの0.75に相当するとしてカウントされた。Oracleのデータベースソフトウェアのエンタープライズバージョンのシングルプロセッサライセンスは4万ドル。

 ウッズ氏によると、新しいスキームは価格の「均等性を高める」ものであり、広範なハードウェアに柔軟に対応するというOracleの戦略に基づくものだとしている。新しい価格モデルは、Oracleのデータベースとミドルウェアのほか、同社のビジネスアプリケーションの一部に適用されるという。

 新スキームでは、Sun Microsystemsの新しいマルチコア型「UltraSPARC T1」プロセッサ(コードネームはNiagara)に対しては0.25という係数が適用される。すなわち、8コア型プロセッサではちょうど2ライセンス分の価格で済むことになる。

 Oracleによると、IntelまたはAdvanced Micro Devices(AMD)のプロセッサを搭載したサーバ上で動作するソフトウェアの価格は、サーバ内のプロセッサコアの数に0.5を掛けることで決定されるという。それ以外のマルチコアチップ(SunのUltraSPARC IV+やIBMのPowerなど)は、従来の0.75という係数が適用される。

 フロリダ州オーランド市の副CIO(最高情報責任者)を務めるジョン・マテルスキー氏は、新モデルは複雑であり、多くのユーザーの間で混乱を招くだろうと指摘する。ただし、同氏のIT部門がすぐに影響を受けることはないという。

 オーランド市では、IBMのiSeriesプラットフォーム上でERPソフトウェアの「PeopleSoft EnterpriseOne」を運用している。

 メリーランド州ハントバレーに本社を置くワイヤレス製品ディストリビューターのTessco Technologiesで技術マネジャーを務めるハル・カフ氏は、少し不安を感じているという。Oracleの主張とは裏腹に、新モデルはどのハードウェアを使うべきかをユーザーに指図しているように思えるからだという。

 カフ氏は、Linuxで動作する各種のマルチコアシステムの配備に先立ち、これらのシステム上で10gデータベースをテストするのを許可するようOracleに求めるつもりだとしている。Tesscoは現在、Oracleの9iおよび10gデータベースをHewlett-PackardのProLiantおよびAlphaServerシステム上で運用している。

 オハイオ州クリーブランドを本拠とする照明器具メーカー、Kichler Lightingは、PeopleSoft Enterpriseのユーザーである。同社のジョン・シンドラーCIOによると、今回の動きは同社がソフトウェア価格のさらなる値下げと柔軟性の改善を目指していることを示すものだという。「ハードウェアの低価格化が続く一方で、ソフトウェアベンダー各社はこれまで、価格を大幅に見直すことがなかった」と同氏は指摘する。

 「ハードウェアの価格とOracleのソフトウェアの価格のギャップは開く一方だ」とシンドラー氏は話す。さらに同氏によると、Oracleをはじめとするベンダー各社がマルチコアシステムに適用しているソフトウェアライセンスモデルでは、ライセンス価格がサーバの価格の4倍にもなる可能性があるという。

 バージニア州レストンにあるコンサルティング会社、MAS Strategiesのアナリスト、マイク・シフ氏によると、新しい価格モデルはユーザーの選択肢を広げるものではあるが、ユーザーを特定のハードウェアシステム誘導する可能性があるという。

 「Oracleはいずれ、各プロセッサに適用する係数を修正するのではないかと思う。リレーショナルデータベース分野の王者というOracleの地位を考えれば、ベンダー各社は自社のチップの係数をできるだけ低くしてもらうよう同社に働きかけるかもしれない」(シフ氏)

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ