ここで、55歳〜59歳以下(45〜49年生まれ)の500人を対象に、同社が企画した「定年退職後の就業意識に関するアンケート」(infoQ調べ)を見ると、定年後も73%の人が仕事をしたいと回答しているが、その内訳は、生活資金を確保したいからがトップで、次に社会との接点を維持したいから、自分の知識やノウハウを生かしたいからと続く。退職後に希望する分野を聞くと、これまでの経験や知識、ノウハウが生かせる分野とともに、特にこだわりはないと考える人も意外に多い。
また、20〜49歳以下の現役世代500人に聞いた「自分の職場にいる今後5年以内に定年を迎える方に対する見方についてアンケート」では、オフィスにいる団塊の世代が定年退職することによって業務に支障が出るかの問いに対して、6割以上が何らか不安に感じている(図1)。
定年予備軍の知識やノウハウを伝承することの必要性はあるかとの問いには、9割近くがあると答え、さらに、その知識の伝承への取り組みについては、5割近くの職場で不十分と回答。その定年予備軍を再雇用や定年延長、個人契約などをする必要性を、7割以上が感じているという結果になった。
これについて大森氏は、「開発のスピードアップを求めるあまり、技術を伝承するチャンスが失われていることを示しています。ノウハウの伝承がないまま、失われてしまうという危機感を多くの人が持っているようです」と分析する。
企業側も、団塊の世代を再活用したいと考得るところも多い。そこには、長期不況による人員整理によって、技能やノウハウの伝承者であるベテランが減っていったことや、継承する側の若手雇用を抑制してきたことへの反動がある。また、古いノウハウに興味を示さない若年層が増加している現象や、ノウハウそのものの必要性を軽視もしくは先送してきた反省もある。
「2007年以降に、卓越技術者や全体領域を俯瞰できる社員が退職を始めると、開発や設計を担う技術者と、施工やオペレーション、メンテナンスを行う技能者との間で、お互いの仕事を理解して指揮、段取りができる人を失い、コミュニケーションが取れない事態も発生しかねません」と大森氏は懸念を示す。
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