コンタクトセンターのIP化で拡大する株式市場に対応するイー・トレード証券(1/2 ページ)

2005年は個人投資家を巻き込んだ空前の株式ブームが起きた。そのブームの受け皿としてビジネスを急拡大しているのがネット証券企業だ。最大手であるイー・トレード証券にコンタクトセンターへの取り組みを聞いた。

» 2006年02月28日 08時47分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

オンラインムック「コンタクトセンターが企業の顔になる」

 長期低迷した株価がようやく上昇に転じ、2005年は個人投資家を巻き込んだ空前の株式ブームが起きた。そして、個人投資家が主役に躍り出た株式市場を支えたのが、いわゆるインターネット証券会社だ。中でも口座数、売買代金などで首位を走るイー・トレード証券は、増え続ける会員数に対応するために、コンタクトセンターのIP化をはじめ、情報システムを継続的に強化している。

 イー・トレード証券で総務人事部次長を務める出井直樹氏、広報・IR室の鈴木建氏、また、同社のコンタクトセンターシステムを構築、運用しているソフトバンク・テクノロジーで、ソリューション事業部マーケティング担当マネジャーを務める中田尚志氏に話を聞いた。

総務人事部次長の出井直樹氏

ITmedia イー・トレード証券の現在のビジネスの状況について教えてください。

鈴木 (前回の取材を行った)2005年7月の際は、口座数は71万1000でした。それが、2006年の1月25日には100万口座を突破しました。4月のペイオフ解禁などの外部要因ももちろんですが、個人が資産を運用することに関心を持ち始めていることを裏付けています。特に、1月の伸びは大きく、ここ最近になってさらに、個人が株式市場に流れ込んでいることがはっきり分かる結果になっています。

ITmedia 昨年の暮れから今年にかけて、みずほ証券の誤発注事件やライブドア事件により、市場が混乱しました。

鈴木 確かに、上昇基調が続いている中で起きたライブドア事件は個人投資家に大きな影響を与えました。自己責任をベースにした資産運用であることを個人が改めて認識することになったと言えます。ただし、ライブドア事件については、あくまでも1社の出来事であり、長期的な影響については特に心配していません。

ITmedia イー・トレード証券にとってのコンタクトセンターの重要性と、実際の取り組みについて教えてください。

出井 われわれがビジネスをしていく上で、お客様と対話できる場はコンタクトセンターしかありません。ネット上での問い合わせも可能ですが、お客様の多くは電話で問題を解決したいと考えています。今後も、新しい商品やサービスを提供する予定があり、リリースするたびに、お客様からの問い合わせが集まることになります。その意味でも、コンタクトセンターはなくてはならない存在です。現状では、どちらかと言えば、問い合わせ窓口としての役割が大きいものの、実際にお客様からご要望をいただいた場合は、関連部署に伝えてその後のサービス戦略に役立てています。

出井 1999年4月26日に立ち上げたコンタクトセンターへの取り組みでは、2004年8月に六本木のコンタクトセンターをIP化し、その後、熊谷のセンターを2005年の7月にIP化しました。IP化したことによって、オペレーターのスキルに応じたコールの振り分けが容易になりました。ただし、顧客数の増加もあり、IP化の効果自体はまだそれほど大きくありません。現状は、口座数増加に伴うお客様へのサービスレベル向上に向け、コンタクトセンターの拡張を実施しておりますが、将来的にはIP化の効果が十分出てくると考えています。

 そのほかに、自動応答システムのキャパシティの増強なども行っています。

ITmedia イー・トレード証券のコンタクトセンターならではの苦労はありますか?

出井 新しいサービスが次々と出てきますので、その情報をセンターのエージェントの間で共有することにはかなり苦労しています。また、法律面も同様です。エージェントはなるべくお客様の質問に答えなくてはいけませんが、場合によっては答えてはいけない事柄もあります。それらを周知徹底していくことはそれなりに手間が掛かる作業です。

ITmedia 競争が激しいネット証券市場でどのように差別化していますか?

鈴木 われわれは、ネット証券市場において、預かり資産、口座数、売買代金という3つの指標でトップです。また、他社のサービスと比較して1つ異なる点は、イー・トレード証券は株だけでなく、投資信託や債権を含めてサービスを充実させており、オンラインの総合証券を目指しています。その点では、他社と比較して戦略が異なっています。

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