企業がドキュメント管理に取り組み始めた最も大きな契機が、コンプライアンス対策である。前述したように、e-文書法では表のようなさまざまな法令に定められたドキュメントの電子保存が可能になっている。e-文書法以外でも、例えば1997年に改正された民事訴訟法では、文書提出命令に違反した場合に制裁があることが明記され、ドキュメント管理が行われているかどうかによって判決が左右されることになった。
また、コンプライアンス対策という点では、米国市場上場企業、およびその連結子会社は米国証券取引委員会(SEC)規則「17A-4」において、メールの3年間の保存、商取引情報の6年間保存、情報が求められた場合の提出義務が定められている。こうしたメールの保存については、これから法整備が行われる日本版SOX法、および関連のルールで定められる可能性がある。
このほか法令以外でも、企業価値を高める各種国際標準、管理基準でドキュメント管理を求める規定がある。例えば、品質管理基準「ISO90001」では、品質マネジメントシステムのドキュメント化が明記されており、監査項目となっている。文書管理/記録管理のための国際標準「ISO15489」では、記録管理のための方針、手順を確立することが求められている。さらに、環境マネジメントシステム「ISO14001」、医療機器に関する品質マネジメントシステム「ISO13485」などでも、ドキュメントの管理が項目に含まれている。
法令名 | 保存期間 | 該当文書 |
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商法 | 永久 | 定款、株主名簿、端株原簿、社債原簿、登録簿など |
10年 | 帳簿、重要書類、資料 | |
取締役会議や株主総会議、監査役会議での事録 | ||
5年 | 貸借対照表、損益計算書、営業報告書、利益処分案、付属明細書、監査報告書など | |
法人税法 | 7年 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳など |
棚卸表、貸借対照表、損益計算書、決算に関する書類など | ||
注文書、契約書、送り状、領収書、見積書など | ||
労働基準法 | 3年 | 雇入や解雇、災害補償、賃金、その他労働関係に関する重要書類 |
労働安全衛生規則 | 3年 | 設備や機会等の定期自主検査の記録 |
安全委員会議や衛生委員会議、安全衛生委員会議の議事録 | ||
特定化学物質等障害予防規則 | 5年または30年 | 特定化学物質等健康診断個人票 |
健康保険法 | 2年 | 健康保険に関する書類 |
雇用保険法施行規則 | 2年 | 雇用保険に関する書類 |
4年 | 被保険者に関する書類 | |
証券取引法 | 5年 | 有価証券届出書や有価証券報告書、添付書類、これらの訂正届出書などの写し |
効力を失うまで | 発行登録書や発行登録追補書類、添付書類、これらの訂正発行登録書などの写し | |
医療法 | 5年 | 診療録 |
薬剤師法 | 3年 | 調剤録 |
歯科医師法 | 5年 | 診療録 |
厚生年金保険法施行規則 | 2年 | 厚生年金保険に関する書類 |
表 e-文書法で定められた文書の保管期限
今回は、企業内のドキュメントをめぐる法律と、企業のドキュメント管理に関する意識をまとめてみた。次回からは、この現状を踏まえ、ドキュメント管理のニーズと、ソリューションを見ていこう。
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