LinspireがFreespireプロジェクトを始動(1/2 ページ)

Linspireが発表したLinspireの無料版「Freespire」はRed HatでいうFedora、NovellでいうopenSUSEのようなものと考えればいいのだろうか。同社の狙いについて考える。

» 2006年04月27日 09時30分 公開
[Joe-Barr、Joe-'Zonker'-Brockmeier,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 サンディエゴ発――本日(4/24)、Linux Desktop Summitの基調講演において米Linspireの社長兼CEO、ケビン・カーモニー氏は、FreespireというLinspireの無料版を計画していると発表した。Freespireは、コミュニティーの支援を広く受け入れるとともに、完全なオープンソースのバージョンと独占的ソフトウェアを含むバージョンを用意する、とカーモニー氏は話している。

 Linspire社によると、Freespireプロジェクトは、リーダーシップ委員会(Leadership Board)によって運営され、そのメンバーには、Free Standards GroupのCTOでDebianの創始者イアン・マードック氏、Win4LinのCEOを務めるジム・カーティン氏、アンドリュー・ベッツ氏、Debian開発者のマーティン・ミクルメイヤー氏、ほか数名がいるという。また、Linspireからはカーモニー氏だけが参加するそうだ。そのほか、プロジェクトには分野ごとに指針を与えるためにコミュニティー委員会(Community Board)と技術委員会(Technology Board)も併設される。またLinspireは、このプロジェクトについて議論する場をコミュニティーのメンバーに提供するためのFreespireフォーラムの開設も本日行っている。

 ただし、まだISOイメージを探しにFreespire.orgサイトへは行かないように。Linspireは8月までコードをリリースしない予定だ。コミュニティーの人々が、テクノロジーについて懸念し始める前に、このプロジェクトの討論や構想に加われるように意図的にリリースを遅らせているのだ、とカーモニー氏は説明する。

 ところで、Freespireという名前に覚えがあるとしたら、それは最初ベッツ氏が公に使っていたからだ。ベッツ氏はフリーで利用できる Linspireのソースコードを元にしたプロジェクトFreespireに取り組んでいたのだが、Linspireがベッツ氏にプロジェクトの改名を求めたのだった。結局、ベッツ氏は自らの開発が全面中止にならないうちにプロジェクト名を変更した。ベッツ氏にFreespireという名前を止めるように頼んだのは今回のプロジェクトに使おうとしていたからだった、とカーモニー氏はその理由を今になって明かした。

Freespireの中身

 カーモニー氏によると、FreespireはLinspireと非常によく似ているが、現在Linspireでは利用できないGNOMEのようなコンポーネントをコミュニティーの手で追加できる点が異なるという。

 また、このディストリビューションは、見た目と動作の点では従来のLinuxディストリビューションにも類似している。例えば、Linspireは、デフォルトでrootでしかシステムの設定が行えない、とよく批判されてきた。この点でFreespireは、Ubuntuに似ており、デフォルトで一般ユーザーとして設定を行う必要がある。

 またFreespireには、開発ツールがインストールされる予定で、Linspireとは違ってデフォルトで複数のワークスペースをユーザーに提供する。Linspireのユーザーテストでは複数のワークスペースに戸惑うユーザーが多くいたが、経験のあるLinuxユーザー向けにこの機能を公開することには意味がある、とカーモニー氏は述べている。

 Freespireディストリビューションをダウンロードする際、ユーザーは、UbuntuやFedoraといったディストリビューションには通常含まれていないオーディオやビデオのコーデックなど独占的ソフトウェアが含まれたものと、そうでないものを選べるようになる。それでも、DVDをLinuxで見るには、ユーザーは多少の出費(またはlibdvdcssのダウンロード)をする必要がある。DVDを再生できるソフトウェアはFreespireには付いてこないが、LinspireのClick and Run(CNR)サービスを利用すれば購入できる、とカーモニー氏は説明する。

 また同社はCNRをオープンソース化することを計画している。これにより、ほかのディストリビューションでもCNRを組み込んでLinspireストアで使ったり、独自のものを作成できるようになる。カーモニー氏の基調講演では、LinspireがCNRをオープンソース化するという発表に対して、Freespireそのものの発表のときよりも大きな拍手が起こった。CNRの顧客の目をLinspireストアに向けさせるためにLinspire がほかのプロジェクトや企業に収益の一部を提供する計画はないのか、とカーモニー氏に尋ねたが、ほかの企業と利益を分け合うことについてはまだ考えていない、との回答だった。

 しかし、CodeWeaversのCEO、ジェレミー・ホワイト氏は、ほかの企業がCNRを採用することはおそらくないだろう、と話している。「われわれの直感的な反応は否定的なものだ。この問題については、どのディストリビューションにも独自のソリューションがあり、それを変えれば差異化要素が失われるからだ。だが確かに、厳しい表情になっているより小さなディストリビューションは見受けられるし、もしかしたらそれが思わぬところで現れてくることになるかもしれない。

 「CNRはなかなかよくできている。オープンソース化によって、誰にも想像のつかなかった素晴らしい使いみちを誰かが見つけるかもしれない」

 Freespireは、Debian sidやUbuntuのコンポーネントをベースにしたものになる。また、LinspireとFreespireをLinux Standard Baseに準拠させる計画がある、とカーモニー氏は述べている。ただし、現在Linspireが加わっているDCC Allianceからはどちらも外れることになるという。

 なお、独占的コンポーネントを備えたディストリビューションを無料でダウンロードできるようにしたのは、Linspireが最初ではない。例えば、Novellでは、SUSE Linux 10をJava、RealPlayer、Adobe Acrobat Readerなどの独占的コンポーネントを備えたものも、そうでないものも、無料でユーザーがダウンロードできるようにしている。

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