インド人に勝てるSEになる顧客満足度ナンバーワンSEの条件〜新人編(1/4 ページ)

企業の情報システム開発においてインドや中国のオフショアリング企業の存在感が増している。特にインドは、エンジニアの人件費が低いだけでなく、非常に高い技術力を持っている。日本の技術者はどのように対抗していくべきか。

» 2006年05月12日 08時00分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

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 オフショアリングというと、一般的にはITコスト削減のために中国やインドにシステム開発を委託することを指す。日本企業は現状、プログラム開発を中心に地理的に近い中国へ委託することが多い。最近では、企業がコスト削減ではなく、品質を上げるためにオフショアリングを採用するケースも増えているそうだ。

 さらに、この分野において、タタコンサルタンシーサービスやインフォシスをはじめとしたインド企業が急速に存在感を増しつつある。インドには優秀な技術者が多いため、このままオフショアリングが進めば、日本人とインド人のエンジニアが同じ土俵で比較されることも多くなるだろう。新人のエンジニアは、この試練にどのように打ち勝っていけばいいのだろうか。

高い技術力を誇るインドのオフショア企業

 サーフィンにおける「オフショアの風」は、陸から沖合に向かって吹く風のことを指す。この風が吹くと、海面が整い、波乗りに適した波がやって来るという。つまり、サーファーにとっては「いい風が吹いて来た」ということになる。「沖合」を意味するオフショアから吹く風が、IT業界に届くとどうなるのか。ユーザー企業にとっては良い風でも、国内の開発エンジニアにとっては厄介な風になる。特に、これからIT業界で活躍していこうという新人のエンジニアにとっては、強力なライバルの出現を予感させる不気味な風かもしれない。

 4月17日に開催された調査会社ITR主催のエグゼクティブ・フォーラムの中で、アナリストの広川智理氏が「日本と欧米におけるオフショアリング戦略の違い」について講演を行った。

 この中で同氏は「日本企業はオフショアリングに対する危機意識が、まだまだ足りない」と再三にわたり指摘していた。オフショアリングといえば、日本ではコスト削減のための外注施策というイメージが強いが、先行する欧米ではもはや下請け先ではなく、自社の情報システム部と対等に仕事を分担するパートナーへと進化しているという。特に、インド企業の躍進が目立っている。

 欧米企業はなぜインドに注目するのか。理由は幾つかあるが、何よりも技術力の高さが筆頭に挙げられる。インドには多くの優秀なエンジニアが毎年誕生しており、学習意欲も高い。中国と異なるのが、就業後も活用される教育システムの存在だ。現状ではNECなどの国内大手企業が、わざわざインドまで赴き、その高度な教育システムを利用してエンジニアの育成を実施しているほどだ。

 さらに、CMM(Capability Maturity Model)やISO9000、シックスシグマなど、欧米で評価されているプロジェクト管理基準を取り入れた教育を行っていることも強みになっている。結果的に、インドのオフショア企業は、高い技術力とともに信頼性を併せ持ったサービスの提供を実現している。そのため、ほぼプログラム開発にとどまっている中国への委託の現状とは異なり、インドのオフショア企業には、業務アプリケーションの開発から保守、運用、さらには、ERPパッケージの導入とグローバル展開、組み込みソフトウェアの開発、テストに至るまで、すべての開発行程について委託が進んでいる。

 先の広川氏の講演の中で、インドでオフショアリングを進める企業が「コストを下げるためにインドに来て、品質を維持するためにインドに残る」と述べた言葉が紹介された。これは、インドへの強い信頼感を表しており、サービスを提供するインド企業がITパートナーとして確固たる地位を確立していることを意味している。また、一部の先進的な国内ハイテク企業や製造業などは、すでにインドへのオフショアリングを開始している。特に、仕様を固めやすい組み込みソフトウェアなどにおいて、インドに委託する動きが加速しているという。

 だが、幸か不幸か、日本語という言語の壁や文化的な差異などもあり、現状ではインド企業側は日本市場をそれほど重視していない。そのため、日本のエンジニアにとってインドのエンジニアはまだ大きな脅威にはなっていない。だが、それも時間の問題といえるかもしれない。

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