氾濫する“効果の出ないシステム”の原因と対策を考える3あなたの会社は大丈夫か?企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」第3回(1/2 ページ)

前回、IT導入を成功させるためには、トップの積極的関与が不可欠であると論じた。本稿トップの関与を導きだす方法論について、また、システムが効果的にビジネス活用できない場合のトップの関与の仕方について考えていく。

» 2006年06月21日 07時00分 公開
[増岡直二郎アイティセレクト]

前回までの2回にわたり、IT導入の失敗要因と成功条件が一方の裏返しでほぼ完全に一致すること、そのことは成功条件の実現がいかに困難であるかを示していること、そしてベンダー側の対応とユーザー側の対応について考えた。

 ユーザーの対応としては、成功条件の必要性に「気づき」、その実現に取り組む「姿勢」が大切であること、そして成功条件すべてを突き詰めていくと「トップの適切な関与」に収斂することを見た。

 しからば、「トップの適切な関与」を得るにはどうするか。さらに、いざ導入してしまったITが効果を発揮していないときにトップの関与はどうあるべきなのか、トップの関与をスムーズに促していくにはどうするかを、今回は考えていこう。

最も関心のあるテーマでトップを説得しよう

 形の見える製造や物流の設備投資には細かなところまで関心を示すが、形のとらえどころのないIT投資には距離を置くトップ、かと思うとたまたまパソコン好きなためアウトプットの詳細設計にまで立ち入って指示を出すトップなど、IT導入の現場でうまく機能してくれる経営者はなかなか少ない。

 セキュリティ上の問題でインターネット導入に絶対反対のトップを、主要顧客に頼んで動かした経験が筆者にはある。また、こちらの言い分にどうしても耳を貸さないトップ対策として、たまたま依頼したコンサルタントに資料やデータ提供を積極的に協力しながら、提案書にこちらの主張を反映してもらってトップの関心を高める策をとった経験もある。

 このようにIT投資全般について否定的なトップに対しては顧客、コンサルタント、お役所などの外部、または側近を利用しての説得の方法がある。しかしこの方法でいつもうまくいくとは限らない。実際は、言うは易し行うは難しで、トップを動かすことはなかなか簡単なことではない。

 いよいよどんな手を打っても動じないトップには、相手の土俵に乗ることを考えるとよい。ITに無関心のトップでも、例えば資産回転率向上、原価低減、受注拡大、あるいは製造現場の自動化など何らかの経営課題を持っていて、それを日常繰り返し部下に指示をしているはずだ。やれERPだ、SCMだ、あるいは顧客の創造だなどというITの直接的テーマは避けて、トップの最も関心のあるテーマを切り口に入りこみ、IT導入に結びつけるとよい。

 しかし問題は、トップに一時的に関心を持ってもらうことではない。トップのITに関する認識を根本的に改めさせ、継続して関心を持ってもらわなければならない。そのためには、何らかの手段を講じてトップの関心を得ることに成功したら、直ちに勉強会をもってトップ始め経営陣の洗脳をしなければならない。IT成功のすべての条件が「トップの適切な関与」に収斂することを考えたとき、システム部門はじめ関係者はトップ説得のために企業人生命をかけるくらいの覚悟で臨むべきだ。

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