Gates後に課せられるMS役員への重圧――カリスマをどう埋めるか?(1/3 ページ)

Bill Gates氏はチーフソフトウェアアーキテクトの職をRay Ozzie氏に譲り、2008年6月までに非常勤の顧問役員となる意向を発表した。しかしこれまで同氏が担ってきた職務の中には、穴埋めの難しいものもある。

» 2006年06月27日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftの共同創立者Bill Gates氏は、チーフソフトウェアアーキテクトの職をRay Ozzie氏に譲り、今後2年をかけて日常の業務を徐々に移行していく体制に入った。今後はOzzie氏をはじめCraig Mundie氏やDavid Vaskevich氏などほかの技術系役員が、全社的に技術面での助言を行うことになるが、Gates氏が従来担ってきた数々の職務の中には、穴埋めの難しいものがある。特に、部門間の技術的な議論を最終的に調整する取りまとめ役や、Microsoftの全社的な技術開発の方向性を示す指揮官としての役目を同氏に代わり務めることは難しいだろう。2008年6月以降のGates氏のMicrosoftへの関与は、基本的に現職でもある同社会長としての役割のみとなる。

指揮官交代によるインパクト

 2006年6月にGates氏は自身の身の振り方を明らかにしたが、当面は現在よりも狭い範囲での職務に当たる考えがあることを示唆している。この発表は、Microsoftの経営の第一線からの撤退を着実に進めるGates氏の次なる一歩だったと言える。同氏は、2000年1月にMicrosoftにおける日常的な経営業務の大半をCEOのSteve Ballmer氏に委ねている。Ballmer氏がCEOに就任した当初は、意思決定において両氏の間で意見の相違があったと伝えられているが、ここ数年は組織改変や各部門の予算および人員数、買収、事業運営など大きな経営上の決定は、最終的にBallmer氏が下している。

 Gates氏のチーフソフトウェアアーキテクト職からの勇退は、主要製品のリリース時期と重ならないよう配慮されている。Microsoftの2つのフラグシップ製品VistaとOfficeの次期バージョンは、まもなく最終βに入ろうとしている。また、広告サポート型の新しいコンシューマー向けオンラインサービス事業の確立を目指すWindows Live戦略も進行している。Gates氏は、徐々に同氏が設立・運営する慈善団体のBill&Melinda Gates Foundationの活動により多くの時間を割いていく見込みだ。同団体は、途上国での疾病問題や貧困問題の緩和に意欲的に取り組むさまざまなプログラムを展開している。

 今回の異動で、影響を受ける同社役員は次のとおりである。

Ray Ozzie氏 同氏の入社はわずか1年前、Ozzie氏が設立したGroove NetworksをMicrosoftが買収したときのことである。同氏はチーフテクニカルオフィサー(最高技術責任者)からチーフソフトウェアアーキテクトへと昇格した。同氏は、Gates氏と共同でMicrosoftの全部門を対象に技術アーキテクチャおよび全般的な製品の管理に当たることになる。当面は、同氏の直属の上司はGates氏となるが、いずれはBallmer氏に直属する予定である。

David Vaskevich氏 戦略および技術開発の方向性を統括するチーフテクニカルオフィサーを引き続き務めるが、Gates氏ではなくOzzie氏の直属となる。

Craig Mundie氏 チーフテクニカルオフィサーから最高研究戦略責任者に昇格した。Gates氏と共同で同社の研究およびインキュベーション活動を統括するほか、(Microsoftの法務チームの統括者であるBrad Smith氏と共同で)知的所有権関連のポリシーも監督する。Ozzie氏と同様に、当面はGates氏に直属するが、いずれはBallmer氏の配下となる。

Rick Rashid氏 Microsoftの長期的な研究および新技術育成部門であるマイクロソフトリサーチ担当のシニアバイスプレジデントを務めている。Gates氏ではなくMundie氏の直属となる。

       1|2|3 次のページへ

Copyright(C) 2007, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. All right reserved. No part of this magazine may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means without prior written permission. ISSN 1077-4394. Redmond Communications Inc. is an independent publisher and is in no way affiliated with or endorsed by Microsoft Corporation. Directions on Microsoft reviews and analyzes industry news based on information obtained from sources generally available to the public and from industry contacts. While we consider these sources to be reliable, we cannot guarantee their accuracy. Readers assume full responsibility for any use made of the information contained herein. Throughout this magazine, trademark names are used. Rather than place a trademark symbol at every occurrence, we hereby state that we are using the names only in an editorial fashion with no intention of infringement of the trademark.

注目のテーマ