製造業者がタイムツーマーケットを短縮させるための方法として、北澤氏は部品表(BOM)の再構築を挙げる。BOMは製品を組み立てて製造する際に、どのような部品や材料を用いるかを書いた品目リストだ。従来BOMは、ベテランの頭の中や手帳だけに存在していたり、あるいは、製造現場の機械の横にこっそり張り出されていたりすることも少なくなかった。
だが、製造業者は生産プロセスにおいて、部品や材料の発注、製造コストの算出、部品の供給や製造に掛かるリードタイムに至るまで、会社の資源の使い方のほとんどをBOMから計算しているといってもいい。企業にとってBOMは何よりも重要なデータなのである。
ITmedia まず、製造業者が製品ライフサイクルを管理する上での取り組みについて、どのように考えているかについて教えてください。
北澤 ここ2、3年でPLMという言葉が出てきた印象があります。しかし、製品を構成する部品データを統合的に扱うための取り組みは、昔から製造業がやってきたことです。しかし、PLMといっても自動車部品や家電、ハイテク、設備型の産業など、各業界によって違っているので必ずしも一緒に考えることはできません。
ITmedia PLMの取り組みには、社内においてばらつきのある部品情報を統一することで、製造、販売といった製品ライフサイクルを通して業務を効率化させることを狙った、いわゆる「BOM(部品構成表)の再構築」が典型例と言われています。実際には最近の製造業者はどのようなニーズを持っていますか。
北澤 確かに、全体の中ではBOMを見直し、「統合BOM」として再構築するケースが多いです。これは例えば、営業、資材、設計の部門が扱うそれぞれの製品情報(BOM)を統合したBOMを新たに構築し、さらには、基幹システムとも連携させることで品質管理の確保にも生かしていこうという動きを指します。統合BOMはいろいろな部門にまたがって共有されるマスター情報であるため、各部門が行いたい業務を統合BOMに盛り込んでいく必要があります。
さらに、全社として最適な統合BOMの持ち方を模索する必要があるため、統合BOMの構築は自ずと全社プロジェクトになります。もし、営業、資材、設計などの部門がそれぞれ別々のBOMを作り上げ、それぞれがメンテナンスしている状態になった場合、データとしての品質は維持できないでしょう。
また、(製品の企画から市場投入までの期間を短くする)タイムツーマーケットの短縮化という意味では、3D CADツールを活用する例も多く見られます。特に自動車部品メーカーでは、親会社である自動車メーカーがCADによる設計の短縮化とコストダウンへの取り組みを強化していることもあり、そのスピードについて行かなくては話にならないという事情もあるわけです。
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