談合が糾弾され、公共事業費が削減され、企業は新しい事業の柱を見出すことが求められる。それがCSR問題に対する根本治療の一つでもあるが、企業にとっては難問である。
「新たな経営の柱を見いだすのが本来の姿のはずだが、現実には、限られた公共事業のパイを分け合っているだけだ」(北城経済同友会代表幹事、読売新聞 05・6・16)。
この新事業の柱を見出すための手段として、ITが有効である。グループウェア、BI(ビジネス・インテリジェンス)などの活用である。尤もその効果は使い方次第で決まるが、まずそれらの機能から考えよう。
グループウェアは、アンケート機能を使うと、アンケート結果についてテーマ・内容、あるいは重要度による絞り込み検索ができる。これらの機能を使えば、新製品開発・製品改良などについてのアイデアを募ったり、自分のアイデアを検証したりできる。
BIは、幅広いユーザーがソリューションのためにデータ分析できる環境を提供してくれる。
「仮説検証型」のデータ分析を経て、膨大なデータの中から新しい法則や規則性を発見して、新たなビジネスチャンスに結びつけるデータマイニングで、「発見型」の分析ができる。
例えば、市場調査分析・試作品販売評価・新製品市場評価などの機能を使って、ある年収層の購買動向、ある製品の顧客嗜好などを分析し、製品開発や改良の参考にできる。ところが、新事業や新製品など経営の新しい柱を見つけるには、グループウェアやBIは使いものにならないと言う話を耳にするのも少なくない。それも事実である。
一例として、グループウェアを導入していた某社は、C製品が将来デジタル化され、インターネット対応に迫られるという情報が顧客や営業から入っていたのに、デジタル化はともかく、インターネット対応は一部の意見で、試作に要する費用が工面できないなどとして無視し、せっかくのアクセスランキングやアンケート機能などを使わなかった。結果インターネット対応に遅れをとり、C製品のシェアを大幅に落とした。失敗の原因は二つある。
一つは製品開発に携わる事業企画部門や開発設計部門の人間が、顧客・営業・他部門からのアイデアや意見を軽視する意識が潜在的にあったことである。「そんな素人アイデアは役に立たない」などと、日頃から外部意見に拒絶反応を持っていた。二つには最初から使う気がないこともあり、システム機能を完全に理解していないため使い切れなかった。
従って新しい事業の柱にITを利用するには、他の意見に素直に耳を傾ける謙虚な姿勢と、せっかく導入したITなのだから機能を充分理解してフルに活用することが必要である。
このようにITは、CSRに本音で取り組む企業にとって充分な力になり得るのである。
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