日本電気執行役員社長 矢野 薫氏――「ITとネットワークの融合に向けて、NECならではの新しい価値を生み出す」(2/2 ページ)

» 2006年08月04日 12時07分 公開
[松岡功,アイティセレクト編集部]
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NGN事業でITもさらに強化

 7月18日、NECは統合エンタープライズサーバーや次世代ブレードシステムの新製品発表とともに、ITプラットフォーム製品の開発指針およびロードマップを策定し、「リアルITプラットフォーム」と呼ぶITプラットフォームビジョンを打ち出した。発表会見の場に臨んだ矢野氏は、ITプラットフォーム事業にけるNECの優位性をアピールするとともに、「ITとネットワークの融合」に向けた同社の意気込みを示してみせた。と同時に、それは通信分野出身の矢野氏が、社長としてIT分野にも本腰を入れる姿を見せる意味もあったのだろう。

 しかし、業界の間では矢野氏の社長就任で、「NECはこれから通信事業に比重がかかるのでは」との見方もくすぶっている。先ほど「NGNは来るべきユビキタス社会のインフラになる。NECはユビキタス社会に求められるITも幅広くご提供していく」と語った矢野氏だが、あえてあらためてその点を確かめてみた。その上で、矢野氏が描くNECの将来像、および最後にマネジメントに対する考え方を語ってもらった。

アイティセレクト 矢野社長のご就任で、NECはこれから通信事業に比重がかかるのでは、との見方もありますが。

矢野 当然の答えですが、そんなことはまったくありません。NGNの上に広がっていくユビキタス社会に求められる技術やサービスは、その多くをITによって実現しなければなりません。私が言うNGN事業というのは、そうした重層化していく世界をすべて含んでいます。その点をぜひご理解いただきたいですね。

 また、私が社長に就任してから人事面でも通信分野の出身者が厚遇され、IT分野の出身者が冷遇されているかのような一部報道がありましたが、今年の新取締役の顔ぶれをはじめ、他の人事をよく見ていただければ、そんな偏向したようなことは一切ないのが分かっていただけると思います。

アイティセレクト これからNECをどんな会社にしていきたいですか。

矢野 その点については、『NECはC&Cを通して豊かな社会の実現に貢献します』という明確な企業理念があります。つまり、ITとネットワークを融合させることによってNECならではの新しい価値を生み出し、それによって人々の生活がもっともっとよくなって、その結果として豊かな社会が実現すると。そうした社会に貢献するのがNECのあるべき姿であり、夢です。まさしく私はNECをそういう会社にしていきたいと思っています。

アイティセレクト 最後に、マネジメントにおいて最も大事だと考えておられることをお聞かせください。

矢野 マネジメントについてそんな高邁なことは考えていませんが、最近、社員にもよく言っているのは「日々新たに」。私の好きな言葉です。昨日と違う明日をつくるために今日働いているんだと。これ、別の言葉でいうと「イノベーション」だと思うんですよ。イノベーションというのは何も技術だけではなくて、ビジネスプロセスもそうだし、他にもいろいろ適用できるんです。NECの企業スローガンは「エンパワーメント・バイ・イノベーションNEC」。つまり、昨日と違う明日をつくるのがNECだと。「日々新たに」……会社も個人もそうありたいというのが私の思いです。

 先にも紹介したが、もともと「いずれ社長になる人」と目されていた矢野氏だけあって、話しぶりや立ち振る舞いはすでに大物社長の風格を感じさせる。今回のインタビューや記者会見などで、筆者が強く感じた矢野氏の印象は、この人は本当に心の底からNECを愛しているということだ。最後のマネジメントに関するコメントでも、話しているうちにNECのスローガンに結びついた。単なる愛社精神だけでなく、NECの技術者としての誇りが、矢野氏の迫力の原点なのだろう。

プロフィール●やの・かおる

1944年2月生まれ、神奈川出身。66年東京大学工学部電子工学科卒業後、日本電気(NEC)に入社。通信機器の開発に約20年従事し、85年にNECアメリカに出向。94年伝送事業本部長、95年取締役支配人、98年NEC USA社長、2000年取締役常務・NECネットワークス カンパニー副社長、02年取締役専務・同社長、04年代表取締役副社長を経て、06年4月より現職。

このインタビューは現在発売中のアイティセレクト9月号に掲載されています。



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