2人の「お婆さんハッカー」にインタビュー(前編)Focus on People(3/3 ページ)

» 2006年09月08日 09時00分 公開
[Joe-Barr,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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―― Amazing Graceことグレース・マレー・ホッパーさんとはどのようないきさつで出会ったのですか?

ITmedia編集部注:グレース・マレー・ホッパー氏はアメリカ海軍の軍人・計算機科学者。COBOLの開発でも知られる女性。

テリー 彼女に出会ったのは中学生のときよ。ずば抜けて利口な子どもとして彼女に紹介されたの。その、常々わたしは優れた才能があるとかなんとか言われていたので、彼女のもとへ連れて行かれて観衆の前で彼女と対面したというわけね。彼女はわたしをあちこちに案内してくれ、彼女が取り組みんでいたものを見せてくれたの。わたしは衝撃を受けたわ。本当に大きな衝撃を受けたけれど、素晴らしい経験だった。彼女はとても個性的な人だった。

 その後、わたしはサンディエゴにあるNavy Research Center のプログラムに応募し、そのときはMITとCalTechで早期教育を受けたわ。プログラムの一環として決められていたから。ホッパー女史のおかげでわたしはその方面に進み始めたのね。

―― セキュリティにかかわるようになったのはいつですか? ただなりゆきでそうなったのか、それとも当時からいわゆる「邪悪なハッカー」だったのですか?

テリー 長い間コンサルタントをしていたので、常にシステム内部に入り込んでいたけれど、ただそれは自分の仕事をやり遂げようとしたからよ。午前2時に仕事をしていてシステムへのアクセスが必要になったとすると、その時間では誰もアクセス許可をくれないので、許可をもらおうなどとは考えないでしょう。だから、直ちょっと「あら、このシステムに入らなくちゃ」という感覚でね。仕事が終わらずに悔しい思いをするのが嫌だったので、普通にアクセスできそうなら何でも試してみる。そのうちにうまくシステムに入れるのよ。

 セキュリティに興味を持つようになったのは、Seagateで働いていたときね。製造プロセスの変更に伴って会社の製造システムを世界規模でアップデートするという、基本的にはワームのようなシステムを開発していたの。セキュリティ上安全な形でこのアップデートを行うことに深くかかわっていたので、会社が使っているシステムのセキュリティが非常に脆いことに気づいたの。そこで、このシステムをもっと優れたものにしたいと考えたわけ。世界中で実行可能でそのすべての下位システムを更新できるシステムを作り上げるのはとても簡単だと分かったので、その検討を始めたわ。この件についてはベッキーも証言できるけれど、このシステムは、それまでになかったくらい大変な仕事だったのよ。

 このときは多くのことを学んだけれど、いったい何が真実なのかもまったく分からない状態だった。でも、そういった事情はシンプルな解決方法の発見とは関係がないと思うの。というのも、わたしには事前知識があまりなかったし、どんなものが必要で何ができないかも分かっていなかったのだから。ただわたしは曇りのない目で問題を見て「あら。これならどうすればいいか分かるわ。簡単ね」といっただけ。

 ところが、その後になって思った以上に事態が複雑なことが分かった。それでも、このまったく異なったアプローチは、会社がやろうとしていた方法よりも道理にかなっていたはずだわ。だって、彼らは依然として古代ローマの二輪馬車の幅で鉄道の線路を設置しようとしていたのだから。

 ときには、何かがもはや真実でなくなって「自分たちが使っていたのは過去の遺産だった」と気づくことによって、標準規格やあらゆるものが進化することがあるの。わたしは過去の遺産なんて嫌だけど、組織では遺産を使い続けていることもあるでしょう。わたしが言いたいのは、もし今始めたとしたら……ってことなの。

 もうこれくらいにしておくけれど、こうしてわたしはセキュリティにかかわるようになったのよ。そして資金を貯め、会社を興した。その後マービンさんをいざなうと、わたしが役立たずのまま終わらないように、会社で働いて業務内容を監査してくれる人々を見つけてくれたの。そのときに彼がコンサルタントとして紹介してくれたのがベッキーよ。

後編に続く

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