SOA成功へのステップ動き出したSOAのいま(3/5 ページ)

» 2006年09月11日 08時00分 公開
[生熊清司,ITmedia]

SOAの必要性

 良くも悪くも、なぜSOAはこれほど論議の対象となっているのであろうか。その背景には企業情報システムを取り巻く環境の変化がある。これまでの日本企業には経営に迅速性や柔軟性は求められてこなかったが、今や景気変動や競争の激化、さらには社会的な責任の増大により、部門の統廃合、グループ再編、M&A、法規制への対応などさまざまな環境変化にさらされている。

 企業のIT利用度が高まる中、情報システムにもより変化に迅速にかつ安いコストで対応することが求められている。情報システムにも、プレハブ建築やユニット家具のようにモジュール化と再利用性の向上による工期の短縮、高い柔軟性および拡張性が求められている。こうしたニーズに応えることができる可能性が期待されているシステム構築手法がSOAである。

 では、なぜこれまでのやり方ではだめなのであろうか。

従来のシステム構築との違い

 これまでの情報システムは、新たな経営ニーズが具体化する度にシステムを構築し、変化が求められる場合には部分的な追加修正で対応してきた。また部門ごと、機能ごとにアプリケーションを開発する部分最適化アプローチを採用してきた。

 従来は、急速で広範囲なビジネスプロセスの変化や企業統合、事業分割などはあまり想定されていなかったため、このようなシステム構築のアプローチでも、ある程度追従することができた。しかし、昨今のようなダイナミックで多様なニーズに対して求められる時間とコストで対応することは困難となっている。

 当初、ERP(統合業務パッケージ)の登場はこの問題を解決すると期待された。しかし、ERPベンダーが提唱したパッケージ導入による全体最適化、つまりパッケージによる企業の基幹業務サポートは、企業個々が持つ競争力の源泉となっている独自性を受け付けず、今ではERPでの全体最適化は夢であったと考えられている。

 こうした問題を解決するに当たって、最も有力なシステム構築手法としてSOAが浮上してきたといえる。個々のシステムやアプリケーションに含まれている、共用できる業務処理をサービスとして部品化し、再利用していくのである。

 SOAと聞いて、未知の世界への探求をイメージする必要はない。情報システムの世界では、以前から「構造化プログラミング」や「オブジェクト指向」のようにモジュール化と再利用化を進めてきているからである。技術の革新によってモジュールの単位が「ルーチン」から「オブジェクト」さらに「サービス」へと、より実際のビジネス機能に即した単位に変化してきたととらえることができる。

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