“予備校の雄”が挑戦したオープンプリンタシステムアイティセレクト特選事例:学校法人 駿河台学園(2/3 ページ)

» 2006年09月22日 09時00分 公開
[アイティセレクト]

無視できないオープン化への流れ

 しかしこの案では、膨大なコストがかかることが判明した。このコストを負担することが将来どのような影響が起きるか。エスエイティーティー側には将来に向けてのある構想があった。システムのオープン化という流れである。

 「多様なベンダーのソフト、ハードを組み合わせて、環境の変化に対応する最適なシステムを構築していく、という流れにはいずれ乗っていく必要があることは当時から痛感していました。莫大なコストをかけて、これまで通りのチャネルプリンタの後継機を導入すれば、オープン化の流れに乗るタイミングがかなり遅れる可能性がある」(橋本次長)

 そこでエスエイティーティーは、最もエンドユーザーに近いプリンタをオープン対応機に変えることで、将来の広範なオープンシステムへの布石とすることを決断した。

 同社はメインフレームシステムはそのままにして、新しいオープンプリンタとの間に「帳合サーバー」と「プリント管理サーバー」を設置することにした。これは、以前から同社のプリンタシステムの構築を手がけてきた日立製作所がパートナーとなって動いた。(概要図参照)

概要図

 チャネルプリンタであれば、直接メインフレームと接続できていたわけだが、オープンプリンタに切り替えるとなると間にデータを変換する仕組みが必要となる。オープン系製品の移行のときにこの接続がいつも問題となるわけだが、同校でのケースは非常にスムーズに行われた。

データを加工して「帳合情報」を作成する

 

 ここで「帳合」機能について記しておこう。

 たとえば、一般会場で模擬試験を行い、学生が5万人受験したとする。5万人の受験生は、学校ごとにまとまった受験番号で試験を受ける場合もあるが、ほとんどは個別ばらばらに試験を受ける。ただ試験結果のデータは、個別の学生に送るものもあるが、高校ごとに送るケースがある。5万人の受験生のデータを所属高校ごとに分け、志望大学別のデータや、科目別の偏差値順のデータなどにさらに分類してプリントする。さらに別の切り口のデータが要望されれば対応していく。こうして項目別にデータを分類していくことを「帳合」と呼んでいる。

 こうして帳合した大量のデータをできるだけ早く、プリントして正確に顧客に届けるわけだから、プリンタそのものに要求されるレベルも非常に高いということが分かる。

 従来はメインフレームシステムの中に帳合機能があり、そこで整理されたデータが、プリンタへと流れていた。

 今回からは、メインフレームからのデータを帳合サーバーが帳合情報に従って処理をし、そこで生成された印刷ジョブをプリント管理サーバーに転送する。それを受けたプリント管理サーバーがメインフレームのデータ形式をオープンのプリンタ言語に変換し、出力されていく。

 データを作り出す「源流」であるメインフレームと成果物を出すプリンタの間に、新しいデータ処理の「関所」が作られたわけで、それでも、チャネルプリンタを導入するよりもコストは安いというのも驚きだが、それだけ「関所」が多いと、データが正確に変換され、うまく印刷できるかどうかも心配だったのではないだろうか。

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