“予備校の雄”が挑戦したオープンプリンタシステムアイティセレクト特選事例:学校法人 駿河台学園(3/3 ページ)

» 2006年09月22日 09時00分 公開
[アイティセレクト]
前のページへ 1|2|3       

パートナーとの信頼関係が支え。大量印刷能力を証明する

 「パートナーである日立さんは、長年の付き合いの中で、当社のニーズも把握していてくれていましたし、それほど心配はしていませんでした。ただ、初回運用時は徹夜作業でテストを繰り返すことになりました」と説明してくれたのは、エスエイティーティーのIT推進事業部 学園システム 運用担当 課長の上坂健二氏である。

エスエイティーティー 上坂健二氏

 2003年4月から検討を開始して同年10月には稼働。導入作業はこの期間の中で約3カ月間だったという。

 絶対条件であった、「30万ページを丸3日で印刷する」という課題も見事にクリアした。これまでのチャネルプリンタでの能力と同等もしくはそれ以上の印刷能力が証明されたわけだ。

 

 今回の新プリンタは連続紙プリンタが2台、カット紙プリンタ3台という構成だ(従来は連続紙2台、カット紙1台)。連続紙で出力するよりもカット紙での需要が増えているという。連続紙で印刷した場合、個人にデータを送るにはいちいちカットしていたわけだが、カット紙であれば、そうした作業はなくなる。後処理工程の作業負荷が大幅に削減できるというわけだ。ただし、同校の出力作業は、単に連続して出せばいいというものではない。高校ごと、テーマごとに切れ目で分けて印刷する必要がある。A高校とB高校のデータが同じ紙の表と裏に印刷されてしまっては、たとえ数10万ページを印刷してしまったとしても、全てを廃棄しなくてはならない。大量に印刷するので、いちいち人間の目で、印刷の途中で確認することもできないのだ。

 「カット紙プリンタを利用することが増え、印刷する際、学校と学校の切れ目などには色のついた紙が間に入るようになったので、境目がはっきりと分かるようになりました。これまでは連続紙での印刷が基本であったため、こうした機能は使えなかったのです。それから、オペレーターの操作も簡便になって、その分人的コストも軽減された。マシンの台数が増え、バックアップ用に回せるので、トラブル対応にも強くなりましたね」(上坂課長)。

「大量印刷に適していて、しかもコストも安い紙を調達することも大切です。マシンに適した紙を探すのも苦労はありましたが、パートナーさんの協力もあって、現在は問題ありません」(橋本次長)

 2004年4月。それまで新しいシステムと同時並行で運用していたチャネルプリンタを撤去。その後現在まで、大きな問題は起きていない。

問題を早く発見し、解決を迅速に

 「小さな問題を挙げていけば、それこそ何十項目というレベルでありましたが、日立さんに頻繁に相談をもちかけました。こちらのオペレーションの問題か、それともシステム上の問題か分からないことも起こるんです。その都度つぶしていくしかなかったですね」(上坂課長)

「最終的には、このシステムを選択した私たちの問題ですから、トラブルが起きても何とかしていくしかない。プリンタをオープンにしたということは、フォントにしても新しい世界に入っていくことになるわけですから、不都合が起きればすぐに解決していくという姿勢で取り組みました」(橋本次長)

フォントの問題ということでは、「○」の記号の使い方で対応が必要になった。同校では試験結果について○を細字と太字で使い分けをしていた。

 試験の設問ごとに個人別の結果を出している。そして設問内でその人が平均点以上を獲得したものは太い、平均以下のものは細い○をつけている。設問を全体の受験者の平均点順に並べると、平均点は高いが細い○がついていれば「苦手な問題」、平均点は低いが太いがついていると「得意な問題」ということが分かるようになる。

 このデータの示し方は多くの受験生や関係者にとって慣れ親しんだものであった。メインフレームの文字では、太いと細い○の違いをゴシックと明朝で切り替えていたが、今回のシステムの場合、書体の切り替えでは細い○が太くならず、見分けが付きにくかった。

 

 成績表での内容や表現の仕方は、同校としても非常に神経を使うところである。しかし今回のシステムではデータをメインフレームのアーキテクチャで作成しているので、通常のオープンシステムで利用する制御方法をとることができない、という事情があった。そこで日立製作所と協力し、外字作成という方法で○の太い、細いという違いをこれまで通り成績表に表現することを可能にした。

 細かいトラブルをあげればこうした不都合がいくつも出てきて、その都度「アーキテクチャが違うから」「システムが新しくなったから」といった逃げ方をせずに、対応していったのである。

 さまざまな問題解決を進めながら、現在に至るわけだが、今後の展開についてはどういう展望があるのだろう。

 「やはりカラー化への対応でしょう。コストはかさみますが、別の部分で節約してでも対応していかなくては。進路指導のプレゼン資料がモノクロのままでいいのか、ということですね」と橋本次長は語る。技術的な対応は問題ないということなので、早いうちに実現は可能だろう。

 現在、18歳人口は減少しており、近い将来大学全入の時代に入るといわれているが、いわゆる上位校入学の競争は激化している。毎年1000名以上の東大、京大合格者を輩出する駿台予備学校にとって、進学校と上位校を目指す学生は重要な「顧客」だが、少子化の中で同校にとって地元に根ざした学習塾も強力なライバルとなる。よりきめ細かな役立つ情報提供が今後の実績に影響を及ぼすということで、今回のプリンタシステムのオープン対応は、ライバルに差をつける一つの要因となるに違いない。

前のページへ 1|2|3       

Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ