このタイプのICタグリーダーを用いた児童の通学状況を把握するシステムは、2004年9月に岐阜県恵那市岩村町・岩邑小学校で全国初の実証実験が行われたのをはじめ、同年10月には和歌山県田辺市でも実験が行われ、東京都豊島区の立教学院立教小学校では2005年4月より既に正式稼働するなど、各地で導入に向けて研究・実験が行われている。
このようなシステムが注目されるようになった背景は、やはり2001年6月に大教大附属池田小学校で起こった無差別殺人事件などに代表される、児童を標的にした犯罪の増加が挙げられる。
幸いそれまで重大事件は発生していなかった岐南町だが、今後そのような事件が起こりうる可能性を憂慮した片桐博彰町長がICタグリーダーを用いた通学状況把握システムの実証実験などの話題を耳にし、2005年度初頭より町長の肝いりで構想がスタートしたのである。ここにも、優れた自治体運営にしばしば見られる強烈なリーダーシップが見て取れる(関連記事参照)。
時を同じくして、同じ岐阜県の各務原市に位置し、前述の岩邑小学校での実証実験なども手かげた「VRテクノセンター」から、通学安心システムの実証実験の協力依頼が舞い込んできた。もとより導入を検討していた岐南町はこれを受け入れ、岐南町立西小学校において、保護者の了承を経た児童101名を対象に実験が行われたのである。
この実証実験は2005年6月15日に児童にタグを配布し、2005年6月16日から2005年7月15日の約1カ月間(計測日22日)にかけて実施された。実験方法はほぼ実際の運用と同じ条件で以下の通り(VRテクノセンター公式サイト内の報告より抜粋)。
この実験の結果、VRセンターでは「登校時の通学路、および下校時の校門にて目標値である100%に近い取得率を記録したことは、運用面を考慮した結果十分実用化レベルに値する」と総括している。
実験後に保護者に対して行われたアンケートでは、回収率94.4%(全72世帯中68世帯)の中で、100%の保護者が「児童の安全対策のために、岐南町として通学安心システムのような取り組みを推進することに賛成ですか?」という質問に対して「はい」と回答した。
この結果を踏まえ、町側でも導入への機運が高まり、VRテクノセンターも含めたメーカー10社から改めてシステムに関する提案を受け、予算なども含めた検討の末にVRテクノセンターに正式に発注。2007年1月の導入に向けて、現在さまざまな調整が行われている。
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