“いいとこどり”の次世代ネットワークNGNとは?NGNは企業のIT化に何をもたらすのか(前編)

情報通信事業を手がける大手ベンダーがこぞってNGN(次世代ネットワーク)への“参戦”を表明した。まさに期待が大きく膨らみつつあるNGNだが、果たして従来のネットワークと何が違うのか。

» 2006年11月28日 09時00分 公開
[松岡 功,アイティセレクト]

 このところ国内外の通信事業者が相次いで計画を打ち出しているNGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)。とくに国内ではNTTが2007年後半の商用サービス開始を目指して、今年12月から実証実験をスタート。これに伴い、他の通信事業者や機器メーカーなどへの詳細な接続条件を開示したことから、情報通信事業を手がける大手ベンダーもこぞって“参戦”を表明した。

 まさに期待が大きく膨らみつつあるNGNだが、果たして従来のネットワークと何が変わるのか。さらに企業のIT化に何をもたらすのか。関連各社が最近行った説明会などから、その核心に迫った。

大手ベンダーがこぞって参戦

 「来るべきNGN時代は大きなビジネスチャンス。NECはグループをあげて幅広い事業領域をカバーしていく」。9月27日と10月2日の2回にわたって「NGN関連ビジネスへの取り組み」と題した記者説明会を行ったNECの国嶋矩彦 執行役員常務は、その冒頭でこう強調した。NGNへの取り組み強化により、「通信事業者向けの売り上げ規模を現在の7200億円から3―4年後には1兆円台に乗せたい」と鼻息も荒い。

 NGNを次の事業の柱に育てようという姿勢は、同業他社も共通する。日立製作所も9月21日に記者説明会を開き、NGNをもとにグループ全体の通信関連事業を05年度実績の3400億円から10年度には5000億円台に引き上げる方針を表明。沖電気工業も同14日、技術者400人をNGN事業にシフトすると発表した。

 こうした大手ベンダーがここにきてこぞってNGNへの取り組み強化を打ち出したのは、07年後半のNGN商用サービス開始を目指すNTTが7月21日、今年12月からその実証実験を行うのに先立って、他の通信事業者や機器メーカーなどへの詳細な接続条件を開示したことがきっかけだ。

 NTTが開示したのは、接続機器の仕様や通信手法の詳細。NGNに対しては国内外の主要通信事業者が04年頃から取り組みを始めており、国際電気通信連合電機通信標準化部門(ITU-T)が標準規格を検討中だが、とりわけ国内ではNTTの動きが軸となるだけに、今回の実証実験は関連各社にとっても大事なステップとなる。

“いいとこどり”のNGN

 まさに期待が大きく膨らみつつあるNGNだが、果たして従来のネットワークと何が変わるのか。今一度、そのポイントを押さえておこう。

 NGNは電話交換機に代わるネットワークインフラで、インターネットと同じIP(インターネットプロトコル)技術を使い、音声通信だけでなくデータ通信や映像配信まで同じネットワークで管理しながら提供する仕組みだ。NGNの稼働後も回線交換方式の従来型電話網は残るが、一般的なルーターなどで構築するネットワークへと置き換えが進めば高価な交換機は不要になる。NTTは10年度の時点で、固定通信事業のコストを8000億円減らせると見込む。

 またNECの国嶋氏によると、「これまでのネットワークは電話網なら電話、携帯ならば携帯といったように、ネットワークごとに垂直統合型のサービスが展開されてきた。これに対しNGNではインフラとサービスを切り離すことで、ネットワークに依存しない新たなサービスやアプリケーションが構築できるようになる」とし、「NGNはいわば、固定電話・専用線、携帯電話、インターネットの三つの領域のそれぞれ“いいとこどり”をしたネットワーク」だという。

NGNへの期待(NECの資料より)

(「月刊アイティセレクト」12月号のトレンドフォーカス「NGNは企業のIT化に何をもたらすのか」より)

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