“話題のキーワード”は真実を語る?(1/2 ページ)

いざなぎ超え呼ばれる好景気の中、各企業が取り組むWebマーケティング。その中で注目されている1つが、ブログで語られるキーワードをリアルタイムに集計し、活用するという手法だ。

» 2006年12月01日 15時21分 公開
[森川拓男,ITmedia]

 “話題のキーワード”を知っているだろうか。

 さまざまな呼び方をすることがあるが、ここで言う“話題のキーワード”とは、現在、ブログで語られている文章をキーワード化して集計、そしてランキング化するというものである。キーワードの上位に入る話題が、より多くのブログで語られていると結びつけられるものだ。今回は、この“話題のキーワード”が実際のマーケティングに役立っているのか? そしてキーワードは市場動向の真実を語っているのかの点について論じてみようと思う。

 これまでも、上記のようなランキング判定は、週間や月間などといった単位でネットや雑誌などで発表されていた。しかし、すさまじい勢いで情報が行き交う現代、一般ユーザーならいざ知らず、常に一歩先を見なければならない企業がこの情報を頼りにしていては心許ない。

 そこで、ブログで語られているキーワードをリアルタイムに知る必要が出てきている。即時性がキーポイントとなり、どのようにすれば効率的に必要な情報を収集できるのか――企業のマーケティング担当者にとっては、頭を悩ませるところだ。

低コストでユーザーの“生の声”を

 11月22日に発表された月例経済報告で政府は、「景気は消費に弱さが見られるものの回復している」として、2002年2月から続いている景気拡大期(58カ月)が、高度経済成長期の「いざなぎ景気」(57カ月)を超えて戦後最長となったという見解を示した。

 しかし、多くの一般消費者にとって、この景気の実感はない。それはつまり、企業の自助努力によって実現した景気回復であって、一般消費者にはあまり還元されていないからだ。今回の景気のことを「リストラ景気」と呼ぶ人もいるくらいだ。

 各企業は、設備投資を増加している。しかし、個人消費や輸出は横ばいのため、このままでは純益が生まれない。実は、景気回復のいちばん大きな要因の一つが、人員整理であることも明白だ。月例経済報告では、「雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる」とされているが、これにもカラクリがあり、正社員の数が減り、パートなどの非正社員の数が増加している。つまり、給与体系からすれば、雇用数が増えても、支出が減る計算となる。また、まったく異なる分野へ再就職した場合、給与は年齢にかかわらず新卒と同じ位置からスタートすることもあるという。

 このように、企業は切り詰めるところを切り詰めながら、収益の改善を図った結果、いざなぎ景気超えとなったというわけだ。

 さて、話をWebマーケティングに戻そう。

 このような状態の中では、いくら重要なマーケティングといえども、いかにコストをかけずに行うか、ということが必要となってくる。

 そこで採用されてきているのが、ブログを利用したマーケティング手法だ。その方法にはいろいろなものがあるが、その中の1つとして「kizasi.jp」など、ブログで話題となっているキーワードをリアルタイムで集計したものを活用するものが挙げられる。

 例えばkizasi.jpならば、24時間以内に話題になったキーワードをランキングしているため、自社商品名などを検索すれば、ブログで話題になっているかどうかを確認できる。そして、イベントや企画を実行してから調べれば、その効果を図ることも可能だ。また、企業のマーケティング向けの詳細分析ツールも提供しており、それを活用すればもっと確実な結果を得ることができるだろう。

 これならば、予算を掛けずに一般消費者の生の声を収集することが可能となる。――ように思える。

 しかし、このキーワードによるWebマーケティングには欠落している点がある。

 情報分析には、情報の精度が重要だ。特に重要なのは、いつ、どこで、誰がその情報を流しているのか? という点だ。

 例えば30代女性をターゲットにしたサービスを始めようとした場合、事前にアンケートなどを採るとして、性別や年代などといった情報が不足しているデータでは役に立たないはずだ。企業がWebマーケティングの一環として「マクロミル」などインターネットを利用したアンケートサイトを利用するケースもあるが、その場合はアンケートとする際にきちんと必要対象のみに絞ることが重要なのだ。

 しかし、ブログではその肝心の指標がない。例えば、プロフィールで年齢を書いていても、それが正確とは限らない。

 そうとはいえ、アンケートサイトや企業が独自に行うアンケート結果からでは、あくまでもアンケートに回答した人からの意見しか収集できない。そこから漏れてしまう大多数のユーザーの声は集まらないのだ。

 そこで、ブログの特性を再認識することになる。

 ブログでは、各ブロガーたちが本音を出やすい。商品やサービスが優れたものであれば褒めたたえるし、少しでも嫌なところがあればけなすことだってある。通常のアンケートでは選択肢が用意されることが多いため、どうしてもその枠内、想定内の範囲の回答しか得られないことが多い。一方、ブログでは思いもよらない意見を聞けることだってあるのだ。これは貴重な“生の声”となる。

“やらせ”“スパム”をどう除外するか

 しかし、ブログがこれだけで万能とは言い切れない。

 まず認識すべくは、最近話題となっている「やらせ」の可能性がある点だ。

 「やらせ」というか、これもまたブログマーケティングの一環となっているわけだが、ブログのクチコミ効果を利用するために、ブロガーへプレス配信し、その内容をブロガーの言葉で書いてもらい報酬を出す、というサービスがある。ブロガーにとってみれば、商品やサービスについて、指定された期限内に指定された内容を自分の言葉でブログに書けば、数百円の報酬が得られる。企業側にとってみれば、数百円×規定人数の報酬+配信サービス利用料だけで、ブログのクチコミマーケティングを手軽に仕掛けることができるわけだ。

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