コミュニティー発の低価格なWi-Fi接続サービスが開始

フォン・ジャパンは、Wi-Fiのアクセスポイントを会員同士で共有する低価格の無線LAN接続サービス「FON」を開始する。

» 2006年12月04日 21時08分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 フォン・ジャパンは12月4日、Wi-Fiのアクセスポイント(AP)を会員同士で共有する無線LAN接続サービス「FON」を、12月5日から開始すると発表した。

会員数の推移 サービス開始から1年あまりで16万8000会員を獲得した。

 FONは、世界的なWi-Fiの利用促進を目的に、家庭やオフィスにあるAPを公開、共有し合うオープンコミュニティーのプロジェクト。GoogleやSkype、Sequoia Capitalなどが出資するサービス運営会社「FON WIRELESS」が2005年11月にスペインで設立され、現在は144カ国で4万カ所のAPを展開し、17万人近いユーザー会員がいる。

マーティン・バルサフスキーCEO 専用ルータ「La Fonera」を手にするマーティン・バルサフスキーCEO

 コミュニティー設立者でFON WIRELESSのマーティン・バルサフスキーCEOは、「PDAや小型ゲーム機、マルチメディアプレーヤーといったWi-Fi対応機器が相次いで登場する一方、Wi-FiのAPは世界的に不足し、多くの商用サービスでは接続費用も高価だ。安価で利用しやすいWi-Fiインフラの普及を目指したい」と話す。

 FONの会員には、3種類のカテゴリーがある。フルサービスを利用できる「Linus」(ライナス)は、FON専用ルータ「La Fonera」(日本では税込1980円)を購入して自身のAPを公開する代わりに、ほかの会員のAPを無償で利用することができる。「Bills」(ビルズ)は、Linusと同様にLa Foneraを購入してAPを公開するが、AP利用者が支払う接続料の50%を手数料として受け取る仕組みとなる。ただし、ほかのAPを利用する場合は逆に接続料を支払う。「Aliens」(エイリアン)は、自身でAPを提供せず、接続料を支払うことでLinusやBillsが提供するAPを利用できる。

藤本潤一CEO フォン・ジャパンの藤本潤一CEO

 日本での会員サービスは、当面はLinusに限定する。ほかのサービスは普及状況に合わせて導入を検討する方針で、「Aliensであれば、24時間の利用で500円程度の接続料を想定する」(バルサフスキー氏)。

ロードマップ 日本でのロードマップ。2007年末に7万5000会員、2008年末に15万会員を目指す。

 フォン・ジャパンの藤本潤一CEOは、「住宅街を中心に既存の事業者が展開しにくい場所もカバーし、Wi-Fiのプラットフォームを構築したい」と話す。2007年末までに、東京を中心に7万5000会員の獲得を目指す。2007年度末の売上目標は9000万円で、内訳はLa Fonera販売収入を8000万円、Aliensからの接続料収入を1000万円としている。

 エキサイトや九十九電機とも提携し、エキサイトはインターネットカフェの「エキサイト・ブロードバンド・カフェ」にFONのAPを設置し、サイト上でもLa Foneraのプロモーションやオンライン販売を実施する。九十九電機では、La Foneraのオンライン販売に加え、12月10日からは全国で店頭販売も開始する。

 ISPによっては、契約者以外の人間が回線を無断利用する「ただ乗り」を懸念することが予想される。バルサフスキーCEOは、「各国で大手ISPと提携するなど有効的な関係にあり、これまでに心配されるような事態は起きていない。むしろISPにとっては、自社の接続サービスの価値を高め、(FONに魅力を感じた)新しいユーザーを獲得するチャンスになる」と説明する。藤本CEOも、「日本ではISPやCATV、流通事業者との提携を推進し、お互いにメリットあるビジネスにしたい」という。

 La Foneraの購入費1980円だけでAPが使い放題となる格安さから、自身のAPを公開せずに一方的に利用するだけの不心得な会員も予想される。これについては、「会員の良心に期待するが、Google Mapsで世界中のAPのオープン状況が2時間ごとに確認できるため、閉じているAPがあれば、ほかの会員がチェックして指摘する、コミュニティーの力を発揮したい」(バルサフスキーCEO)。1カ月以上もAPがクローズされた状態が続くようであれば、ID抹消などの措置を取るという。

 セキュリティ面の対策も図られている。La Foneraは、ファイアウォールとSSIDを2つまで登録できるため、プライベートなネットワークとFONとして公開するネットワークを分離できる。ファームウェアは、オープンソースソフトウェアとして公開されているため、FONのコミュニティーサイトで自由に閲覧、利用することができる。

 最後に、事業の見通しについて藤本CEOは、「当初はLinus会員へのLa Foneraの販売収入が中心となるが、最終的に会員の大半がAliensになるとみており、接続料収入や広告収入で採算性を確保できる」と述べた。

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