BEAのチュアングCEOが凱旋、未曾有の成長を遂げる中国で「SOA 360°」を売り込むBEA World 2006 Beijing Report(1/2 ページ)

冬の北京で「BEA World 2006 Beijing」が開幕した。チャイナワールドホテルのボールルームには早朝から1000人を超える顧客やパートナーらが詰め掛け、米国で成功を収めた英雄の凱旋を祝った。

» 2006年12月13日 17時16分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 幾度も中国のテクノロジーカンファレンスを取材してきたが、参加者らがこれほど尊敬の念を込めた眼差しでキーノートスピーカーを迎えたことはなかった。まさに「凱旋」という言葉がふさわしい。

 12月13日、一時的に寒さが緩んだ冬の北京で「BEA World 2006 Beijing」が開幕した。チャイナワールドホテルのボールルームには早朝から1000人を超えるBEA Systemsの顧客やパートナーらが詰め掛け、米国で成功を収めた英雄の凱旋を祝った。

両親が上海出身というBEAのアルフレッド・チュアングCEO

 「いま中国は、未曾有の成長の只中にあり、それは機会と課題を生み出している」と話すのは、BEA Systemsの共同創設者のひとり、アルフレッド・チュアングCEO。オープニングのキーノートに登場した彼は、SOA(サービス指向アーキテクチャー)によって真のビジネスバリューを享受している欧米企業の事例を紹介しながら、ビジネスの最適化や変革を可能にするSOAを「祖国」である中国の顧客らに売り込んだ。

 彼のルーツは、中国本土の上海にある。それだけに中国への投資も大胆だ。今年は、ニュージャージー州に長らく置かれてきたTuxedoの研究開発拠点が北京に移されたほか、通信業界向けのソリューションや製品を開発するTelecom Technical Centerも新たに開設された。

 同社社員5000人のうち既に10%を中国法人が占めるに至っているものの、キーノート後に行われた記者会見では、旺盛な需要に応えきれないため、優れた人材の獲得を目的とした小規模な買収をさらに継続していくことも明らかにされている。

 「買収の目的は“人”だ。次は技術。製品はそのあとだ」というのがチュアング氏の持論だが、ここ北京でもそれが紹介された。

巧みな買収戦略、次の成長エンジンはSOA

 BEAが産声を上げたのは1995年。ミドルウェアの会社を立ち上げるべく、NovellからOLTPモニタのTuxedoを買収したのが始まりだ。当時、Sun Microsystemsで働いていたチュアング氏も共同創設者として参画した。ちなみにBEAの「A」は、彼のファーストネーム、アルフレッドの頭文字だ。

 3年後の1998年にはWebLogicの買収によってアプリケーションサーバ分野に大きく舵を切り、見事にJ2EEサーバのパイオニアとして成功を収めた。買収によって礎をつくり、そしてまた買収によって獲得した人材や資産をうまく次の事業の柱としてきたチュアング氏の経営手腕を高く評価する声は多い。

 IBMやOracleの追い上げが厳しくなり、オープンソース陣営に対する評価も高まってくると見るや、BEAは2005年6月、新しいソフトウェアカテゴリー、「サービスインフラストラクチャー」をぶち上げ、そのためのSOAソフトウェアファミリーである「AquaLogic」を発表した。インフラストラクチャーと呼ぶには欠けているピースが多過ぎたが、その2カ月後である8月には、ポータルソフトウェアのリーディングベンダーであるPlumtree Softwareを買収、そして今年3月にはBPMベンダーとして知られるFuegoを矢継ぎ早に買収し、空白だった領域を積極的に埋めてきた。

 第3の柱ともいえるAquaLogicファミリーのビジネスは好調な滑り出しを見せており、製品出荷からわずか1年で同社の売り上げの20%を占めるまでに急成長している。

 「多くの企業がSOAアプローチによるシステム構築を検討している。なぜ、ホットなのか? SOAならば、ビジネスプロセスとファンクションが分離され、外部環境の変化に対してビジネスを素早く低コストで最適化し、変革していけるからだ」とチュアング氏。多くのカスタムソフトウェアやパッケージソフトウェアが、プロセスとファンクションが緊密に縛られてしまい、それぞれサイロ化してしまっているカオスを簡素化できるのがSOAだと彼は説明する。

 しかし、SOAのリーダーを自負するBEAにもライバルたちは追撃の手を緩めない。そこで同社が選択したのは、買収によって獲得したさまざまな資産をSOAアプローチによって再構築する道だった。

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