不測の事態からビジネスの崩壊を防げ!(2/2 ページ)

» 2006年12月22日 08時00分 公開
[Linda Cerni,ITmedia]
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実行する

 Applied Research調査における回答者の33%は、災害復旧計画を策定していない理由として、リソースの不足を挙げていた。また、災害復旧計画の策定に関する課題として最もよく挙げられるものは、コストである。

 復旧への影響に対する相対的なコストとして見れば、実は災害復旧計画の策定コストはかなり小さい。従業員やベンダーの連絡先リスト、IT設備リスト、既存ネットワークの分布図、アプリケーションのマニュアルなど重要情報を整備するだけでも、正しい方向へ踏み出すための第一歩である。

 しかし、驚くほど多くの企業がこの程度のことさえもしていない。このほか、定例会議において、災害発生時に誰が指揮を執るのか、誰が何を担当するのかなど、30分かけて話し合うだけでも1つのステップとなる。IT管理者の裁量の範囲を、災害発生時には引き上げるように、経営陣の承認を求めることもそうだ。災害復旧計画の策定とは、次の一歩を踏み出すことなのだ。災害復旧計画が完璧になることはないが、利用できるリソースやコストがどの程度であれ、改善し続けていくことは可能なのである。

 ちなみに、災害復旧計画策定の動機としてApplied Research調査の回答者が多く挙げたものは、データの破壊(61%)、機器/アプリケーションの障害(59%)、サイトの停止(54%)、メンテナンスのためのダウンタイム(54%)の順だった(複数回答可)。

 環境と主な要因、起こりうる障害をIT部門が明確に理解できたら、あとは実際に行動するだけである。最初に、リスクに優先順位を付け、生じるギャップを埋める。ギャップは、ポリシーや技術、人員、能力、プロセス、利用者、あるいはこれらすべてを総合したものの中に存在する。そのようなギャップを埋めれば、ダウンタイムに対して強いインフラを構築できる。このステップを省略してしまうと、水漏れ個所を修理せずにボートから水をかき出すようなものだ。無用に長い時間を緊急事態からの回復に費やしてしまう恐れがある。

 予想外の事態から回復できるように、適切な技術とプロセス、手続きを用意することも重要なアクションだ。IT部門がどれほどの準備をしていても、不測の事態は必ず起きる。サーバルームのスプリンクラー配管が破裂したりしたら、IT部門にとって大変な1日となるだろう。十分なテストが行われ、確立した復旧計画が用意されていなければ、この1日は悪夢の1日にもなり得る。

コントロールを維持する

 コントロールとは、ITインフラが将来的に最高の復元力を持つように管理することを指す。サーバからデスクトップ、ノートPCに至るまで、インフラ内の運用状況を最高レベルに保つことであると言ってもいい。その第一歩は、新しいハードウェアやソフトウェアが環境に導入された瞬間に始まる。

 IT管理者は、このITインフラのコントロールを守り、クライアント機器が常に安全で利用可能な状態にあり、かつ、定められた自社基準を満たしているようにしなければならない。コントロールとは、IT部門がインフラを良好な状態に保てると(思うのではなく)理解していることである。また、維持するだけではなく、一歩先を行くということも意味する。


 単なるサーバの停止であれ破滅的な障害であれ、いつか起きる事件から自分たちを守りたいと誰でも考えるものだ。そのためには、適切な技術と人員、プロセス、手続きを準備することに加え、単なる災害復旧計画だけでない効果的な事業継続計画を用意しておく必要がある。

 その際、情報のセキュリティと可用性を常に確保できるようにするために、存在する垣根を越えることも必要になる。すべて適切に接続されていなければ、システム全体が正しく動作することはできない。ITセキュリティのチームと運用のチームの間には、目に見えない「無言の壁」が存在することが多いが、IT組織全体が十分な理解の下、行動を起こし、コントロールするには、この壁を取り除く必要がある。その中核となるのは、リスク管理である。

 実際のところ、IT部門は、企業の業務全体を見渡し、社内全体との連絡の質と頻度を高める必要がある。IT部門、管理部門、事業部門のシニアマネジャーによる委員会を設置することも、優先順位を付けるために非常に有効な方法である。

 投資に優先順位を付け、ニーズを関係者に周知徹底するには、災害復旧計画を策定する前に、事業に関して何点か検討するべき重要な項目がある。さらに、事業部門とIT部門の担当役員が忘れてはならないのは、災害復旧計画の策定も重要であるが、策定した災害復旧計画を定期的にテストし、計画文書に記載された通りに運用できるか確認することだ。十分なテストを行っておけば、予想外の事態が発生したときでも混乱に陥る心配がなくなる。

 100%の復旧を保証することは不可能であるが、適切な計画を策定し、ステップを踏んでいくことで、インフラ障害から迅速な回復を可能にすることはできる。災害復旧計画を企業全体の事業継続計画に組み込めば、企業は自社の活動を守ることができ、顧客やパートナー企業、投資家に対し、事業の継続性を保証することが可能になる。

リンダ セルニ(Linda Cerni)

シマンテックコーポレーション ビジネスコンティニュイティマネジメント ワールドワイドプラクティスディレクター



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