「普及型」登場で大きく前進 すそ野広がる災害対策「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(1/3 ページ)

コスト的にも十分に見合う「普及型」災害対策のモデルケースが登場した2006年。情報システムの災害対策は新たなユーザー層へと広がりつつある。

» 2006年12月27日 09時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 シーサーが出迎え、広がる景色は海――情報通信産業特別区として、IT企業の集積や技術者の高度化に取り組む沖縄県。浦添市に設置されたデータセンターから望める景色にも南国の雰囲気が漂う。

 2001年に、沖縄電力など地元企業が中心となって設立したファーストライディングテクノロジー(FRT)は、電力会社の持つ光ファイバ網をバックボーンに利用し、コンタクトセンターやデータセンター事業を手掛ける。沖縄電力の発電所敷地内にデータセンターを設置した同社のキャッチコピーは「データの楽園」だ。

 顧客は、IT関連企業を中心に東京に本社を持つ企業が大半という。特に最近の傾向として「災害対策を念頭に入れた案件が増えている」と話すのは、同社ソリューション営業部シニアマネジャーの渡嘉敷唯昭氏。東京から約1600キロと離れ、サイトの同時被災がしにくく、日本全国で最も地震係数が低い、といった沖縄の地域特性を全面に押し出し、「災害対策のためのバックアップサイトを沖縄に」とアピールする。

重要だが、見合わぬコスト

 災害対策に注目が集まったのは、2001年の9.11米国同時多発テロがきっかけとされる。これを機会に多くのITベンダーが災害対策の重要性を訴えてきた。実際、多くの金融・証券業界が入居していたワールドトレードセンターの周辺には、これら企業のデータセンターがあり、ビル崩壊の影響をもろに受けた。

2003年当時のグラウンドゼロ 2003年当時のグラウンドゼロ

 その一社となった米証券会社Lehman Brothersのブリジット・オコナーCTOは2003年当時のインタビューで、顔をこわばらせながら、被災したデータセンターの中から熱で焼けた機器を抱きかかえ、データを退避させたスタッフの様子を振り返った。

 同社はバックアップサイトをマンハッタンの隣、ニュージャージーに持っていたものの「テープへのバックアップ依存率が高く、復旧に時間が掛かってしまった」(同氏)。だが、復旧するデータの優先度を明確にすることで、約1週間後に再開された市場に戻ることができたという。

 日本国内でも阪神・淡路大震災を被害にして、情報システムの災害対策を強化する企業が増えている。だが、これまで災害対策と言えば、十分なコストを負担できる金融機関がハイエンドな災害対策を施すという傾向が強く、重要性が説かれるわりにすそ野は思うようには広がってこなかった。

 FRTが災害対策に期待するのは、その状況が変わろうとしているからだ。

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