NECフィールディング 代表取締役 執行役員社長 片山徹氏――“強み”を失わずに収益性高める経営戦略(2/2 ページ)

» 2007年01月30日 09時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト]
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効率化は事業モデルの根本をよく見極めてから

アイティセレクト どうすれば増収増益に転じると。

片山 まずハードウェアの保守については、市場自体が縮小傾向にあるわけですから、さらに効率を上げて減少幅をできるだけ抑えるようにしなければなりません。実は、効率化の追求だけを考えるなら、全国のサービス拠点の統廃合に手をつければ手っ取り早いんです。しかし、全国のサービス拠点網は当社の最大の強みです。拠点を減らせば、お客様の利便性を損ね、これまで培ってきた事業モデルを根本から揺るがすことになるでしょう。まさしく“角を矯めて牛を殺す”ことになりかねないわけです。そうなると取り返しがつかなくなりますから、慎重な見極めが必要だと思っています。

 その一方で、今後伸ばしていかなければいけないのは、ハードウェアだけでなくソフトウェア、ネットワークを含めたシステムの保守および運用サービス、さらにはアウトソーシングといったITサービスの領域です。運用サービスは当社でも現状で200億円程度の売り上げ規模がありますが、今後はこの分野を年率20%以上伸ばしていきたいと思っています。

 この分野の国内市場の成長率は6〜7%程度だと認識しているので、それからすると非常に高い目標かもしれません。でも可能性は大いにあるとみています。

 それはなぜか。ITサービスを伸ばすことは、実は当社だけでなく、NECグループ全体の課題だと思うからです。NECグループとしてこの分野への取り組みは、競合他社グループより遅れていると、私はみています。だからこそ、もっと本格的に取り組めば、伸ばせる幅は大きいと。

アイティセレクト NECグループとしてどう取り組めばいいとお考えですか。

片山 当社の保守事業の売り上げのうち、およそ7割がNEC経由ですが、これについてはNEC本体にシステム販売をもっと拡大してもらうことが、当社の保守事業の売り上げ拡大にもつながります。これは従来の構図の延長線上ですが、例えばNEC本体の営業マンがシステム商談を行うときに、当社の営業マンも同行して保守に加えて運用サービスも提案し、一緒になってそのシステム商談をストックビジネスにすると。実は少し前からNECの営業部隊とはそうした連携を行っていますが、まだまだ競合他社のようにストック化しようという動きがダイナミックに表れていないのが現状です。NECグループとしてストックビジネスを強化するという観点から、このアプローチはもっと加速させていきたいと考えています。

 一方、今後当社が運用をはじめとしたITサービスを本格的に拡大していくためには、SEをもっと増強する必要があります。社内でもその人材育成には注力しますが、場合によっては時間を買うためにNECグループ内での連携強化、さらにはSE力のある会社を買収することも検討したいと思っています。

CS、シェア、スピードの3分野でナンバー1に

 NECグループとしてITサービスにどう取り組むか。その中でNECフィールディングはどれだけのことができるのか_片山氏は今この問題に一生懸命、思いをめぐらせていると言う。そしてこの問題解決に向けてはNECグループの中でも議論が行われつつあるようで、「皆さん、問題意識は強く持っておられる。これから結構ダイナミックに動き出しますよ」と片山氏は期待を膨らませている。

 そんな片山氏に、これからNECフィールディングをどんな会社にしていきたいかを語ってもらった。

アイティセレクト NECフィールディングをどんな会社にしていきたいですか。

片山 NECフィールディングという会社のあるべき姿という意味でいえば、まずはこれまで培ってきたCSナンバーワンという代名詞を、これからもしっかりと引き継いでいきたいですね。最近では競合他社もCSを相当重視するようになってきましたが、ナンバーワンの座は何があっても絶対に譲りません。

 実は、CSについては、パソコン事業を担当していたときに、NECフィールディングに学んで「パソコンCSナンバーワンになろう」と社内に発破をかけていました。そしてナンバーワンにかけてあと2つ、「シェア」と「スピード」を掲げ、3つのナンバーワンを達成することを社内的な目標にしました。とくにCSについてはいろいろと知恵を絞り、最近になってパソコン雑誌のCS調査で2年連続1位を獲得することができました。

 CSをはじめとしたこの3つのナンバーワンをめぐっては、もう1つエピソードがあります。NECの故金杉明信前社長から「NECフィールディングの社長をやってくれ」と指名を受けたとき、金杉さんから「君にはパソコン事業で掲げていた3つのナンバーワンを、NECフィールディングでもぜひ実践してほしい」と言われたんです。そう考えると、私はもともと当社と深い縁があったんだと思います。

 ですから、先ほどもお話しした通り、CSナンバーワンについてはこれまでと同様、どこにも譲らない。さらに私の使命として、今下期の増収、来期の増収増益を果たすためにも、何事にもスピード感をもってやることを第一に、経営の舵取りをしていきたいと思っています。

 実は社長歴が豊富で長い片山氏。そのためか、気さくな人柄ながら、何とも言えない包容力と威厳がある。そしてインタビュー全体を通して、「NECグループとしてITサービスにどう取り組むか」という視点がベースにあることを強く感じさせられた。逆風の中での社長就任だが、厳しい時代のパソコン事業を舵取りしてきた経営手腕をどう生かすか、注目したい。

プロフィール●かたやま・とおる

1945年3月生まれ、東京都出身。67年早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、日本電気(NEC)に入社。交換事業部長代理を経て、93年天津日電電子通信工業有限公司社長(出向)、98年米沢日本電気社長(出向)、2002年NECソリューションズ執行役員常務、NECカスタムテクニカ社長を兼務、03年NEC執行役員常務、NECパーソナルプロダクツ社長を兼務、05年執行役員専務、06年6月より現職。

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