そうした観点から、エンタープライズサーチに求められる主要な機能としては、以下の4つが挙げられる。
- 検索データの一元化 エンタープライズサーチは、企業内のサーバやストレージに蓄積されているさまざまなデータを検索する必要がある。そこで、そうしたデータに対して一元化されたインデックスを作成し、ユーザーが求める情報を統一された検索方法によって探し出せるようにしなければならない。
- 検索結果の精度 エンタープライズサーチにとっては、より的確なデータを探し出すこともさることながら、必要な情報を漏らさず検索することも非常に重要である。例えば営業活動で特定の顧客のデータを探す場合、その顧客に関するすべてのデータを把握する必要があるが、万一データの検索漏れがあってそれが大事な内容だったならば、致命的な失態をも招きかねない。
- 検索レスポンス 前述した通り、エンタープライズサーチでは企業内の情報を検索し有効活用することで、業務の効率化や生産性向上に役立てることができる。ただし、そのためには検索そのものの迅速なレスポンスが非常に重要な要素となる。
- アクセス権の設定 企業内には特定のメールや機密文書、財務関連の書類など、アクセスを制限すべきデータが存在する。そうしたデータに対してアクセス権を持たないユーザーには、検索しても見ることができないようにすることはもちろん、場合によってはそうしたアクセスが制限されているデータの存在すら知らせないようにすることもあり得る。したがって、アクセスの拒否や検索結果の表示の制限が必要となってくる。こうしたアクセス権の設定は、セキュリティの観点からもエンタープライズサーチにおける必須の機能となってきている。
以上が、エンタープライズサーチに求められる主要な機能だが、このほかにも、エンタープライズサーチには漠然と何か知りたいことがあってデータを探すという使い方だけでなく、明確に欲しいデータがあってその在りかを探す(または存在しないことを確認する)という用途が想定されるため、ベンダー各社もインターネット用の検索エンジンとは異なる工夫を凝らしている。
その工夫とは、例えば、検索キーワードのリコメンド機能、ユーザーの所属や役職、過去の検索履歴などを評価して検索結果の表示や絞り込みを行えるパーソナライズ機能、デスクトップサーチと連動して個人のPCの内部も検索対象にできる機能などで、各社製品の差別化ポイントの1つになっているようだ。
業界関係者の間では、「今後、エンタープライズサーチは業務の中で欠かせないミッションクリティカルな機能になる」との声が日増しに高まりつつある。検索エンジンがインターネットの世界に大変革をもたらしたように、エンタープライズサーチが企業の変革に大きな影響を及ぼす可能性は高い。
次回は、ベンダー各社の製品のポイントとともに、エンタープライズサーチの今後について考察する。
本記事は、『月刊アイティセレクト』2007年2月号「エンタープライズサーチの最新動向」を再構成したものです。
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